Introduction of Castelnuovo-Tedesco


人生の佳境を過ぎても 亡命の記憶など捨て去ることなどできない。



CT-Elisabetta Majeron.

            若き初演者 Elisabetta Majeron

Castelnuovo-Tedesco(1895-1968)は、前回紹介の「亡命のバラード」(1956年)を作曲してから

10年後の1966年なって同様な作品を残していた。作品207番が付与された「モーゼス・イブン・

エズラの詩集(The Divan of Moses-Ibn-Ezra)」である。

2重の意味でセファルディとしてこの世に生きざるをえなかったテデスコが己のアイデンティティを

確認する作業の時間はもうあまり残されてはいない。

この作曲には、生まれ故郷イタリアへの郷愁、さらにもう一つはカステルヌオーヴォ=テデスコ一

族が抱えていた先祖の歴史があった。

中世スペインの1492年には、国家や社会にとって大転換点を象徴する事件があった。それまで

社会の基底に生じていた変化を反映し、しかもそのさらなる変化を促す事件である。

「アメリカ発見」、「カスティーリャ語文法」の刊行、グラナダ陥落、カトリック両王によるユダヤ人追

放令である。ユダヤ教徒であるカステルヌオーヴォ=テデスコ一族はこの年に、スペインを追われ

てイタリアのフィレンツェに移住したのである。そこでテデスコ一族は銀行家として成功を遂げるこ

とになった。

そのような事情からテデスコは、ユダヤ教典礼歌の素養やスペイン語・イデッシュ語・ヘブライ語

などの語学には堪能であるのは当然であった。コプラス(スペイン古謡)の作品も書かれることと

なったのは、歴史の必然であろう。



この時期は「プラテーロと私」や「ゴヤ版画に基づく24のカプリーチョ」さらには「平均律ギター曲

集<ギター2重奏>」などギター関連の作品を精力的に取り組んでいた。主要な作品は、すべて

書き終えた時期でもあった。

モーゼス・イブン・エズラの詩集」には、被献呈者が明記されていない。後世に自分が何かを

残すべきものはないかと考え(?)、1492年のテデスコ一族の歴史を辿り、ユダヤ系スペイン人

のモーゼス・イブン・エズラに関心が向くのは当然であろう。恐らく自分自身とテデスコ一族への

レクイエムという意味ではないだろうか。


     <作 品>
   モーゼス・イブン・エズラの詩集
   THE DIVAN OF MOSES-IBN-EZRA (1055-1135)
   A Cycle of Songs for Voice and Guitar, Op. 207
     歌とギターのための歌曲集(出版:1973年、ベルベン)
        
*ドイツ語版の楽譜も1990年にベルベンから出版されている。

   第一部 放浪の歌
1. 青年時代が暗い影として過ぎ去ってしまったとき
2 .こずえに巣を作るハト
3. 苦悶に悩まされ


   第二部 友愛の歌
4. 悲しみは、私の心を傷めます
5. 運命は、生活を破壊しました
6.  お~小川よ


   第三部 ワインの、そして人類の子孫(キリスト)の喜びの

7. 滋味なワインの味をあじわってください、私の友よ!

8. 空は活気がなくて、悲しいです

9. 庭は、多彩なコートのように色づきます


   第四部 この世とその波乱
10. この世の男性と子供たち
11. この世は女性らしい
12. 愚かな私が信頼するのは神だけ


   第五部 この世界の儚さ
13. 墓は何処にありますか?
14. 人民に汝(神)のすべての日を覚えさせ給え

15. 私はこの大地を見上げる 
16. さあさあ、死の法廷に
17. 彼らの平和
18. 私は古代の墓を見ます


   Epilogue
19. あなた
はわたしの墓を見守ってくださいますか?

                                        

LP時代のELISABETTA MAJERON

               LP版の初全曲版
           

          この記事の下調べで 微笑ましい新発見 
上記LPジャケットの演奏者であるELISABETTA MAJERON(SOP)と GIULIANO BALESTRA(G)の

LPを入手したのは、いつごろであったのだろうか。あまり記憶にない。現在、LPプレイヤーが使用

できない状態にあるので数回程度は聴いたのであろう。

今回詳細に調べてこの音源がプレスされたのは、「A面:79年2月26日、B面:79.3.6」と盤面に刻

まれていた。

このご両人がこの作品を初演したのはジャケット解説によると、この作品が完成してから10年後

の76年10月7日と記入されている。

Westbyのテデスコ本作品カタログには、この初演は1978年10月7日と書かれているが、レコード

解説の76年が正しいのだろう。

インターネットの時代には、そこそこに記録してあれば、過去の事象からリアルタイムまで瞬時に

情報を得ることができる便利な環境となった。


そこでNet検索で見つけたのが、下記の微笑ましいスナップ写真であった。この初演者である

二人が1969年にDuoを組んで35年前後の長い~歳月が経過した現在でも初演者が仲むづま

しく演奏する姿であった!


duo Elisabetta Majeron

      どんな演奏であったのだろうか? (コンサート:2004年10月9日)


                   ***~***^***^***~

モーゼス・イブン・エズラ(Moisés ibn Ezrá)は、1055年頃から 1135年頃?にスペインで活躍した

ユダヤ教徒の詩人で有産階級の出身者。
245編からなる青春時代の詩は、恋愛・友情・ワイン・自然など様々なテーマを取り上げ、軽妙・

奔放に歌った優れたものとの評価がある。他国軍の侵略によってグラナダを追われ、カスティー

リャ地方に移り、その後は極貧の生活を強いられたといわれている。

一連の宗教詩の中には、悔憤を扱った作品や故郷グラナダを思う痛切な詩が残されていると

いう。


Soprano Antje Bitterlich
                  


                             
   
       









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CD初の全曲版:CDショップで良く見かける。     抜粋版:テデスコ以外に珍しい作品あり
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