荒木行彦「五感プロデュース研究所」主席研究員 池田香織
ライター/verb

とにかく人から嫌われたくない。嫌いな人間からも嫌われたくない。嫌われたくないから自分を出せない…。近年、そんな「嫌われ恐怖症」の人が密かに増えているようです。前回は、彼らが抱える「嫌われ恐怖症あるある」をリサーチ。でも、そもそもどうして嫌われ恐怖症の人はそのような思考に陥ってしまったのでしょうか?

「嫌われ恐怖症は、対人関係に深い関わりがあります。例えば、過去に異性に告白したら馬鹿にされた、酷いことを言われた…など一種のトラウマが原因となっていることが非常に多いです。これらのトラウマ体験は、脳の『扁桃体』という、人の感情を司っている部分が記憶しているんです」

とは、「五感プロデュース研究所」所長で、恋愛脳科学者の荒木行彦さん。荒木さんいわく、嫌われ恐怖症の人は過去の自信喪失がきっかけで、また同じことを言われたらどうしよう…という思考に陥ってしまいがちなのだとか。

「私は嫌われている、嫌がられているといったマイナス思考が生み出す感情は、脳の『大脳新皮質』の脳神経細胞を構成する、円錐形のコラムという細胞に記憶されます。このコラムは本棚のようなものなので、その記憶の量は膨大です。さらに、人の脳は楽しいことや快感よりも、つらいことや不快なことを強く記憶する傾向があるため、嫌なことを言われたショックや嫌われたらどうしようという感情ほど、頭の中に長期記憶として残ってしまうのです」(荒木さん)

なるほど。楽しい記憶よりも、つらく不快な記憶ほど脳に長く記憶される仕組みになっているんですね。さらに、そのネガティブな記憶は体にも異常を表すこともあるそう。
「嫌なことや不快感を催すと、脳内ではノルアドレナリンが分泌されます。これは興奮したときに分泌されるアドレナリンと似た物質で『脳内麻薬』としても知られており、過剰に分泌されると心拍数が上がったり、動悸や震えが止まらなくなるなど様々な現象が起こるのです。その結果、過剰に人前で怯えたり、被害妄想に陥ったりしてしまうのです」(同)

たしかに、先のアンケートでも「小学校でいじめられたのをきっかけに、人の目を見て話せなくなった」、「親が厳しかったので、常にマジメないい子を演じていたら、大人になっても素を出せなくなった」など、過去の経験が嫌われ恐怖症に繋がっていると自覚している人も少なくありませんでした。

そして「嫌われたくないが故に、嫌われないような行動をとる」→「そのことが原因で、余計に嫌われる」→「ますます嫌われないように注意深くなる」…という負のスパイラルにハマってしまい、悩んでいる人も多々。これらの思考回路は、恋愛面にも影響を及ぼすと荒木さんは指摘します。

「よく、恋人からメールが届かないからどうしているのか心配だ、嫌われたのだ、と感じてしまう人がいます。でも実際は、仕事が忙しくてメールができないだけかもしれません。しかし、嫌われるのを恐れて男女間のコミュニケーションが希薄になると、余計な心配ばかりが増え、嫌われるのが恐いと考えれば考えるほど苦しくなります。ついには脳がハラハラ、ドキドキして疲れきってしまい、『こんなに苦しいならいっそ終わりにしたい』と、せっかくの恋を失うことにもなりかねません。

また、男性に多いプライドの高い人ほど、女性にフラれることを怖がり、臆病になります。そして、嫌われるくらいだったら最初から恋などしなくていい、という『絶食系男子』などと称される人が増えてきたのです」(同)

この嫌われ恐怖症を改善するためには、過去のトラウマや失敗の経験を忘れるくらい、新たな経験をしたり、恋愛に夢中になることが大切だそう!

「失敗は怖いことではなく、よりあなたを魅力的に、精神的にも強くさせ、『嫌われることへの免疫力』がつくということなのです。嫌われることを怖がっていては、自ら人を愛することも難しくなります。特に若い人には、怖がらずに多くの人とコミュニケーションをとり、前向きな思考を身につけてほしいですね」(同)

でも、根づいてしまったネガティブ思考をポジティブに変換するのは、そう簡単なことではないような…。

「そのためのコツとして、私は『いい加減』を推進しています。いい加減とは、無責任や出鱈目ということではなく、丁度よい加減という意味。恋愛でも人生でもストレスはつきものですので、恐怖心ともうまく付き合いながら、『少しくらい嫌われたって大丈夫』と自分の脳を解放してあげてください」(同)

最初は勇気がいるかもしれませんが、少しずつコミュニケーションの方法を変えてみると、自分の気持ちも軽くなっていくかも。嫌われ恐怖症克服に向けて、一歩踏み出してみませんか!?
(池田香織/verb)
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荒木行彦 「五感プロデュース研究所」主席研究員「五感プロデュース研究所」にて、人間の五感、感覚心理、脳科学にまつわる研究を行う。また、「恋愛を科学する」をテーマに女性 の“女脳”の研究や五感力トレーニングなどの推進も行っている。女性誌や週刊誌、TV番組など各メディアでも活躍中。
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