239.会うという覚悟 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

239.会うという覚悟

あとどれくらい待てばいいんだろう。
次に彼から連絡がある時、彼には何て言われるんだろう。
なるべく返事をすると言ってくれた彼に、私は連絡を取ることはなかった。
思う存分考えればいいさ…そんな気分だった。
待ち続ける私に、皆は言った。
「最低な男だという事に早く気づけ」
そんな声に私は彼を信じてると言い返し続けた。
「手放さない為に信じさせるのが男だ」
私が信じているのは彼が私を好きだという事ではないと言い返し続けた。
「裏切られて傷つくのはあなた」
彼が私を選ばなかったら裏切りなの?
呆れられたかもしれない。


意外にも早く、彼からの連絡は1週間と待たずに届いた。
<金曜からの3連休の内の一日実家に戻ります。逢えるか?>
彼らしい勝手なメールに私はたてつく。
<嫌。傷つけられたくないから行かない。私はゆうじが元気な時だけの暇つぶしじゃないです>
<そう思うんだ…。残念だよ。もう一度だけ聞きます。逢ってくれますか?>
想定内だった。
私が信じている彼が在るのならば、こうなることは解っていた。
恋愛関係だけならば、彼からこんな言葉はなかった筈だと思っている。
だけど、私が彼に伝えたい思いは、恋する私なのだということ。
伝わらずにそう言われているのか、伝わっていてそう言われているのか、確かめたかった。
<何で会おうと思ったの?何で嫌だって言うか解る?何でずっと会いたくて待ってたのに、こんな風に言うんだと思う?気持ち伝えずに会わないって言った私の気持ちが解る?私には無視し続けてたゆうじが何で会おうと思ったのか解らない。今まで無視されてた人に会おうって言われて会いにいけるわけないじゃん。呼び出されてホイホイ付いて行って、セックスして捨てられたことある?それでも、また次に会える日を待ったことってある?断ったら捨てられるかもしれないって恐怖を知ってますか?だったら今私は終わりにする。ちゃんと恋愛がしたいから断るんだよ。あなたがそういう人だって言ってるわけじゃない。会って傷つくものがあるのなら、私は行かない>
<せのりごめんな。反省してます>
<ここまで意固地になる必要もないのかもしれない。でも、答えて!一言で片付けないで。あなたの言葉を察してあげられる心の余裕はないの。その一言が怖いって言ってんだよ。どう解釈すればいいの?もう少し話をして欲しい>
彼からの返事はなかった。
彼が恋愛として答えを出すには早かったのだと思い知らされる。
彼が会おうとしたのは、私が必要だったんだ。
どんな形かなんて解らないけれど、会うことで得られるものがある。
そうだったんじゃないかと、勝手に彼を推測してみる。
私と彼が今まで一緒にいた理由だと思う。
彼を失いたくはないけれど、私は彼との恋愛の道を今は選びたいと思うのだ。


彼の返事がないまま翌日には連休を迎える時まで過ぎた。
<また反応なし…。言葉に出来ないなら出来ないってことくらい言えないかな?いつ折れてあげればいいのか解らないじゃん。私はゆうじが好き。だからあなたにどう思われてるのかちゃんと確かめたいと思う。ゆうじが何で私を好きだって言うのかを聞くのは、私の好きとは違うと思ってるから。無視されてる人に必要とされてるなんて思えないし、そんなあなたに私の気持ちを受け止められるわけがないよね。私は次に会える時、あなたには私の全てを受け止めて欲しいと思ってる。中途半端になんてさせない。抱きしめられて、チューして、セックスもする。ゆうじにそれが出来る?会うってことがどういう事か解る?私は確かめ合った上で会いたかった。ゆうじにその気がないなら会わない。私はゆうじが好き。何も言えないのなら言わなくてもいい。ただ会いにくることの意味を理解して欲しい。来る日はいつ?>
私の完敗宣言。
話をしてくれない彼に、全部責任を押し付けたのだ。
誤解したって私は悪くない…と。
もう疲れたから…。


翌日の朝、彼からの返事が来る。
<今夜会いに行きます>
彼の言葉の意味を考えることはなかった。
<わかった>
素直に喜ぶことは出来ない。
何だかまだまだ曖昧な気がしてならない。
私の気持ちはちゃんと伝わったと思ってもいいのだろうか…。
じわじわと押し寄せる喜びと、とどまり続ける恐怖と不安が入り混じる。


これで、良かったのだろうか。



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