180.言葉にのる感情 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

180.言葉にのる感情

<ゆうじ、大好き>
想いが溢れると私は彼にメールを打つ。
<俺もいつも想ってるよ>
そんな彼からのメールに笑顔が引きつる。
不安で仕方なかった。
理由?沢山ある気がする。
不安だよって言えないでいる。
相手を感じ取る事が何だか精一杯の気がする。
探り合っている。


<体調、いいか?>
<うん、元気だよ。なかなか勉強が難しくて頭痛いけど>
<そか。元気ならよかった>
<もう直ぐ会える?>
<あぁ、頑張って仕事調整してる>
<そか。早く会いたい>
<そうだな>
彼のリアクションに何故か落ち込んだ。
不安だけの所為だろうか。


<俺の事好きか?>
何度も好きだと言う私にそんな風に聞かれる事が多くなった。
<うん、好きだよ。ゆうじは?>
<あぁ、いつもお前の事は想ってる>
そんな風に彼は答えるようになった。
<どんな風に想っててくれてるの?>
<ん?色々考えてる>
彼は正直すぎると思う。
彼の気持ちは探さなきゃ見つからなかった。
勘違いしてしまわないように必死で彼の想いを探した。


そしてまた、連絡のない週末が過ぎていって、私は寂しくて辛くて、少し心配で不安で、ヤキモキする毎日で…。


<お疲れ。とても忙しい毎日です。週末は六甲山の登山に、会社で参加。56kmを16時間かけて完走しました。体中ボロボロになったけど、久々に感動したよ。今日の仕事も辛かったな…。明日は出張。仕事は相変わらず忙しいけど毎日何とかやってます。せのりには辛い想いばかりさせて、ごめん>
火曜の夜中、彼のメールで目を覚ます。
何で彼ってこうなんだろうって腹が立った。
心配させて、寂しい想いさせて、辛い気持ちにさせて、不安にさせて、謝らないで欲しい。
こんな思いで過ごした私が馬鹿みたいだ。
事後報告は嫌。
心配させないで、寂しい想いさせないで、辛い気持ちにさせないで、不安にさせないで、謝らないで…。
同じ馬鹿なら、あなたに想いを募らせたい。
楽しく毎日を過ごしていたい。
事前に教えててよ。
腹が立ったから、返事は送らなかった。
腹を立てながらまた布団をかぶって眠りについた。
だけど、涙がいっぱい出てきて眠れなかった。


嬉しくて眠れなかった。

今までのメールと何が違うかなんて、説明できないけれど探さなくったって、彼の気持ちを感じる事ができたのだ。
文字だけのメールに、人の気持ちは乗ると私は思う。


彼が別れを告げた後から「好きだ」とか「会いたい」って私に言わなくなっていたことは気付いていた。
彼女がいることより、彼女に気持ちがあることより、自分に気持ちがないんじゃないかと思う事の方がどれだけ辛く寂しいことだったかを身に染みて感じた。
言葉が教えてくれる彼の気持ち。
このメールのどの部分かだなんて説明できないけれど、私は彼の気持ちが戻ったことを感じたのだ。


もう直ぐ、好きだと言ってもらえる気がした。



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