131.愛人関係 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

131.愛人関係

相変わらず彼は私が言った事に対して改善することもなく、返事をしないを突き通している。
トンチンカンなメールは、彼のデフォルトなのだろう。
しかも指定不可能な依存した機能の悪さ、ため息に笑みが漏れる。
気分の問題で私は気分は上々、仕事も楽しくやっている。


仕事を始めて半年が経った。
派遣だけで構成されていたこの現場も人件費なんかの問題で、パートが増え、徐々に効率の悪い派遣会社は切られていった。
切られていった会社は私が所属する会社だ。
時間指定された日給制は、あまりよろしくない。
今日の日のようにお昼にも仕事が終わりそうな時は時給な人たちの方が都合がいい。
それでも、私一人がこの会社に残ったのは、どうなんでしょうね。
顔か?顔なのか?
私に似たタイプの子達は、仕事が出来る出来ないに関わらず、やはり今まで通り揃っていたのだ。
私は、残務処理をするのに適した人材なのだと思っているのだけど。
否、自分ではトロイと感じているので、一生懸命やっているつもりではいる。


お昼になり、私は自分の仕事を終わらせた。
が、何故だかまだまだ書類が山のように残されており、書類を片付けるべくサポートに回った。
1時間もあれば出来るだろう、そう思ったが3時になっても書類の山は減ることはなかった。
勘が鈍ったか?と思ったが、黙々やるしかないのだ。
そんな中、上司が取った決断は疑い深い答えだった。
私以外の人間を上げたのだ。
後は、私一人がしろということ。
この山のように積み上げられた書類を私一人で5時までに済ませろと言うのだ。
扱き使いすぎだろう・・・。


定時の5時になり、私は何とか仕事を片付け控え室へ息をつきに言った。
「あんなに仕事あるのに、何で皆あげたんさー」
私が上司に愚痴ると、上司は浮かない顔でため息をついた。
「お前、朝来た時何時に終わると思った?」
「ごめん、うち遅かった?」
「いや、正直何時で終わると思った?」
「12時ジャストで上がりでしょ」
「正解!その後は、お前にやって欲しいことあってんけどな」
「なんで、あんなに仕事残ってたん?」
「パートのプチボイコットとでも言うんかな」
「何それ」
「長く働きたくて、暇な日はあぁやってダラダラ仕事して時給稼ごうっていうやつ。最近困ってんねん。これやったら派遣のがえぇしな」
「ふーん、じゃ、そうしたら」
「でもそうなると、最低コストが引きあがる。一番えぇのはパートに頑張ってもらうことなんやけどな」
「じゃ、頑張ってもらえよ、うちが困る」
「お前に言うことじゃないけど、お前も問題なんや」
「何?ごめん」
「いや、そうじゃなくて、『何であの子だけ、ズルイ』ってな不平が出てきてる」
「そりゃな、人材顔で選んだら、そんな事も言われるよ」
「確かに・・・」
「って、顔かいっ!」
「いや、それもあるけど、便利やから・・・」
「そやね、時給換算して500円弱やもんな。便利や・・・でも顔で選んでなかったら男子入れてるやんな」
「そうでもないよ、お前、結構仕事早いで」
「はいはい、ありがとうございます」
「ほんまやで、3時から一人で片付くとは思ってなかったよ。残業覚悟やったし」
「そんな事どうでもえぇよ、その説明はしたん?」
「したけど・・・『愛人なんやろう!もうヤったんか!?』っておばさんパワーで押し切られたわ」
「はぁ?押し切られてどうする。何?私、明日からアナタの愛人?勘弁してよ」
「俺はそれでもいいけど」
「よくない!パートの不平不満解決せな、プチボイコットは収まらんやろ?」
「すみません」
「ってか、何で私が上司を説教しなあかんわけ?」
「頭痛い」
「どうでもいいけど早く送ってくれます?」


愛人ね・・・。
キャバクラの時も店長とそんな噂流れたっけな。
女と連るまないと色恋の噂は流れるのだろうか。
それともまた別の理由があるのだろうか。
どちらにせよ、馬鹿馬鹿しい。
私は与えられた仕事をやるのみだ。


次の日、私は一人のパートに声を掛けられた。
「あなた、どれくらいお金もらってるの?」
それは給料の話なのか、交際料の話なのか問いたかった。
「日給で3千円プラスα、派遣会社から指名料頂いてます」
「え、それっぽっちなの?」
「はい、残業手当は時給千円ですが、定時を越えることは殆どありません。私も皆さんとお昼に上がりたいですよ。そしたら、時給は上がりますからね。給料かえっこしますか?」
「遠慮しとく」
「上司の事好きなんですか?」
「え?!なんで?」
「私、男がいるんであまり変な噂流さないでもらえますか?」
「愛人の事聞いたの?」
「はい、パートを切って派遣に戻すと言ってましたよ」
このパートの口さえ封じれば、解決すると思った。
女の勘だろうか。
上司とこのパートは何かあると思った。
何かって一つしかなく、上司の浮気相手なのだが。
「そう・・・」
「これは仕事ですからね、お互いうまくやらないと切られちゃいますね。あんまり問題起こさず仕事頑張りましょうね」
「そうね、少ない給料でご苦労様」
「そうそう、よく私の男の相談に乗ってもらうんですけど、俺は愛する女は逃がさないとかいってましたよ」
「へー、ありがとう」
「いえ、お互い様です」


女の嫉妬は怖いと思った。
そして自分も怖いと思った。
パートを切るなんて嘘だし、正確には愛せると思った女だ。
ま、誰にもデメリットは生じないだろう、そう思った嘘だった。
このパートの女性は切られることはない。
同時に、愛されていると思うだろう。
さて、愛せると思った女と愛する女の差がどう彼女に影響するかは・・・私に罪はあるのだろうか。
勝手にやってくれと思った。
ネチっこい職場だと呆れたが、また私は黙々と働く。
この仕事が結構好きなのだ。



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