125.消したい | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

125.消したい

親友に一部始終を話した。

必要ない事もあることも、全て話した。

何もかも話した。

親友の相づちなど挟む間もなく、吐き捨てるように。
彼に言えなかった言葉にもいくつか気付く事ができた。
寂しいとか声が聞きたいとか、簡単な事が言えなくて私は極端すぎる。
彼女に話をすればするほど後悔が押し寄せた。


サヨナラを言ったこと。
想いをちゃんと伝えられなかったこと。
恋愛関係になったこと。
彼に再会したこと。
彼を好きになったこと。
彼に出会ったこと。


私は一体、何処から後悔すればいいんだろうか。
よく解からないけれど、戻りたいと思った。


「大丈夫やから」
彼女は自信たっぷりに言う。
「何?その自信。根拠は?」
「根拠は・・・女の勘」
「裁判では負けそうやな、それ」
「んーーま、根拠はないけど賭けてもいい、あんた等は別れん!」
何故か、励ましの言葉だけには聞こえなくて彼女の話をもっと聞いていたかった。
「最低な男なんじゃなかったっけ?」
「二股してんと早く別れろって思ってるだけや」
「これで、けりつくんちゃう?」
「否、別れるのは彼女の方やからな」
「何なん?ほんまに、その自信。どっから来るわけ?」
「せのりが友達やからとかじゃないよ。私はあいつとも友達やからね。ただ、私には彼女と別れへん理由が理解できひん。何の繋がりがある?彼女ってだけやん」
「たかが彼女、されど彼女やん」
「ってか私の願望なんかな」
「願望?!」
「あんた等みたいな関係が羨ましいと思ったからかな」
「こんな変な関係をか?」
「二股は嫌やけど、恋人になれたのならいい関係やと思ったかな」
「いい関係ね・・・」
「私らんとこなんか、付き合ってるけど形だけで喧嘩もせんし、何考えてるか解からんもん」
「そうか?」
「彼女ってだけが唯一の繋がりみたいな・・・いつでも別れられるよーって空気の中、恋人って関係だけが繋いでる。そう、あいつと彼女みたいにね」
「そういうのが硬いんじゃないの?ゆうじみたいにさ、別れられないってやつが愛なのかもよ」
「そうかもしれんけど、愛を感じはしないよ。ただの繋がりなんか」
「うちは・・・」
言葉を詰まらせたのは、何故だか彼の愛を感じたから。
見えない何かを感じて、愛されてる気になった。
馬鹿みたいだと思う。

親友の言葉に乗せられたか!?
彼女でもなんでもないのに、愛を感じるなんて、とんだ勘違い。
「愛なんかないよ」
「じゃぁ何やねんってホンマに思うねん。好きでもない女に何でそこまで出来る?毎月会いに来るわけやろ、いつも奢って、気に掛けて、セックスする為?そんならもっと楽な女おるやろ!相手はせのりやで!!前にも言うたけど、そこらの男じゃ手に負えん。お互い助け合って、お互いが必要としてる。キモイ感じで言えば運命?!しかも、私が見てる中で確実に彼女には会ってない。連絡は・・・どうか知らんけど・・・。うちの人には一つも当てはまらへんことやで・・・。私が名古屋まで行って、奢って、アホ言われて、NARUTOのゲーム買ってあげて、そのまんまこっち帰ってくる・・・私、一体なに?あーなんかムカついてきた。」
彼女に変なスイッチが入った。
少しの間、彼女の彼氏の愚痴が続き、何もなかったかのように彼女は私の話に戻ってきた。
「とにかく、大丈夫なんやって」
「あ、え、あ、うん」
「好きなんやろ?」
「うん・・・」
「別に、振ったわけでもないし、いつもの喧嘩とかわらんよ」
「うん、どこかに戻れるかな・・・」
「あの人、心読むのうまいし、気付いてる筈やって。それに、今、あんたを手放すわけにはいかんのとちゃうかな」
「ね・・・どうだろう」
「なぁ、今、一つだけ願いが叶うなら何願う?」
「あんたは?」
「私は、あんな奴やけど結婚したいな」
「そう、結婚ね・・・」
「あんたは?」
「そうやな・・・消したい。彼の存在自体を消したい」
「それが一番楽かもな」
「もう、何処にも戻れへんから」
「そうやな、あんたの人生散々やもんな」
「それ、言い過ぎ」
「とりあえず、今夜焼肉でも!?」
彼女の落ち込んだ時はパーっとという乗りは好まないけれど、一人の夜が怖くて誘いを受けた。
「そうそう、今日は仕事やけどいつでも連絡してこい!連絡あったら直ぐ教えてや」
彼女はそういうと、仕事に遅れるからと、電話を切った。


待ち受け画面に変わった携帯をしばらくながめ、メールセンターに問い合わせをしてみた。
電波状況の所為かしばらく忙しなく画面が動き回った後、0件と表示されて画面は落ち着いた。
返事がこない。
彼は答えをくれるのだろうか。
それとも私は自ら彼を消すのだろうか。


何故だか許されぬ私たちの関係を今は応援している親友がいる。
彼に縋る思いで私は泣きじゃくる。
何故か好きを諦めた私は、あたかも間違いだったように慰められる。
何が正しいのかよく解からない。
もしも、彼が引き止めてくれたのなら、そこへ戻る事許してくれますか。

彼の側にいること許してくれますか。

今、私は誰かに間違いだと言われても、押し通すほどの強い気持ちがない。

ただ、好きなだけなんです。

ごめんなさい。



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