103.タイムリミット | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

103.タイムリミット

目を覚ますと、彼はまだ眠っていた。
携帯のアラームも鳴っていない。
いつもウダウダと、起き上がるのに2時間かかってしまうのに、今日はすんなり起きられた。
何故だろう。


そっと彼の胸の中からすり抜ける。
起こさないように・・・。
すると彼は、私が抜け出した途端に、私が居る逆方向へと寝返りを打った。
そう言えば、人って寝ている間に何度も寝返りを打つって聞くけれど、私たちって寝返り打ってるのだろうか。
前も起きると彼の腕の中にいて、眠った時のままだった。
彼もずっと腕枕をしたままで、私を抱きしめたままだった。
腕枕って大変かも・・・寝返り打ちたかったのだろうか。


喉の渇きに私は此処へ来る前、昨日コンビニで買った2リットルのお茶を探す。
何処に行ったのだろうと辺りを探すとゴミ箱の中で発見した。
喉渇いた・・・。
冷蔵庫を空けたけれど持ち込み専用冷蔵庫には何も入ってはいない。
当たり前だけれど。
そこら中の戸を開け、4つのTパックを見つける。
お湯・・・。
洗面台に行き、『浄水』とラベルの付いた蛇口からポットへと水を入れた。
このラベルの信憑性は疑わしいけれど、この辺りの水道水は抵抗なく飲めるので気にはしなかった。
しばらくすると、ポットから湯気が立ち保温ランプが点灯した。
湯飲みにTパックを居れ、お湯を注ぎあつあつ緑茶をすすり飲む。
全くのどの渇きが潤わない。
さて、どうしたもんか・・・。
私は取り合えず、残り3つのTパックをゴミ箱の中に捨てられたペットボトルに詰め込んだ。
そして、ペットボトルにお湯を注ぎこみ、シェイク!
ジョボジョボと音を響かせている。


「お前、何やってんの?」


かなり恥ずかしいところを見られた、多分。


「いや、お茶がなくてね」
「それ、此処のTパック?」
「うん♪」
「4つで2リットル?」
「1個使ったから3つで2リットル」
「・・・・・」
「飲む?」
「うーん、ありがとう」
「喉渇いたでしょ?でも、まだ熱いよ」
「あー、の・ど・か・わ・い・た・なー」
「何!?その棒読み。偉いでしょ」
「あぁ、偉い、偉い」
「へへ、おいしい?」
「おぅ、意外に出てるよ」
「ソフトに持ってく?もっと作ろうか?!」
「いらんし!!」


そんな事をしていると携帯のアラームがなった。
タイムリミット、そんな風に思えた。
彼はアラームを止め、シャワーを浴びにゆく。
私は、ぬるくなったお茶をがぶ飲みした。


彼がシャワーを浴びている間に私は化粧を済ませる。
服を着替え、ソファーで彼を待つ。
彼を困らせないように・・・。


お風呂場の戸が開く音がする。
彼と目が合うと、彼は真っ直ぐ私に歩み寄り私を抱きしめた。
そして、ミント味のキスをくれた。


「そんな顔すんな・・・」


私はどんな顔をしていたんだろう。
着替え終わった彼に、また抱きしめられ手を繋ぎ部屋を出た。
車に乗り込み、私の家へとあとは向かうだけ。



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