91.1日の我慢 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

91.1日の我慢

長く感じた週末、日曜の夕方、彼からの着信に驚いた。
何処かでもう掛かってこないなんて思っていたからだろうか。


「もしもし」
「はい」
「はいじゃないやん!もしもしって聞いてんねんで」
「ごめん、もしもし」
「元気そうやな」
「そう?」


彼の声聞いて私は急に元気になった。
それだけで充分だった。
理由なんてどうでもよかった。
声が聞けただけで・・・。


「寂しかった?」
「え?!」
「ごめんな、連絡できんくて」
「うん」
「俺、急な出張で今東京」
「東京?!」
「そう、俺の仕事、結構出張多いねん。全国に支店があってな、挨拶回りとか大変。暑いしさ」
「ふ~ん」
「仕事の話しても面白くないか!」
「うぅん」
「寂しかったか?」
「何で?」
「何でって・・・」


ずっと伝えたかった言葉。
彼から聞いてくれたのに、私はそれでも言えなかった。
私は寂しいと思ってもいい立場なんだろうか。
寂しいと言ってしまってもいいの?


「いっぱいメールくれてたしな、ずっと返事出来ひんかったし、早く連絡せやなって思ってんけど」
「うーん・・・」
「何や?」
「ちょっとだけ寂しかった」
「そか」
彼が嬉しそうにそう答えてくれた。
「寂しかったよ」
私、そんな彼の声を聞いてもう一度伝えたくなって繰り返し言ってみた。
「そか、俺もせのりの声聞きたかったよ」
「うん、嬉しい」
「泣いてないか?」
「泣いてない」
「俺は泣いてたで」
「嘘うそ!!」
「はは、泣いてないけどな」


彼の仕事の話を色々聞けた。
そう、彼は社会人なんだ。
学生の頃とは違う。
メールを打って返ってこない事なんて珍しくない。
だけど、彼は「忙しいとは言い訳したくないからもう言わないよ、大丈夫?」って言ってた。
そう、これは忘れちゃいけないこと。
声を聞くだけで許せることなんだ。


だから、だから、1日の我慢。
明日になれば、連絡がくる。


もう、寂しくない。
多分・・・。



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