ポーランドの振り見てわが振り直せ | 世日クラブじょーほー局

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(世界日報2月20日4面)

 

 いささか旧聞に属するが、2月20日付、世界日報4面(国際企画)「ワールド・スコープ」は、「『ホロコースト法案』施行へ」との大見出しでウィーンから小川敏特派員のレポートだった。

 

 記事によれば、1月31日ポーランド上院において、「ユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)に関する法案」=ホロコースト法案が賛成多数で成立。その法案の内容は、ポーランドがナチスドイツに占領されていた時代のユダヤ人強制収容所を”ポーランド収容所”と呼んだり、同収容所が(ナチス政権と連携した)ポーランド国家に帰属していた、といった間違った主張や表現をした場合、ポーランド国民だけでなく、外国人も罰金刑、最高禁固3年の刑罰を受けるというもの。

 

 この法案成立について、イスラエルのネタニヤフ首相は、「ナチ政権時代のポーランドの戦争犯罪を隠蔽するものだ」と警告。また米国務省は「同法案は過去の戦争犯罪問題に関する自由な表現や議論を妨げる恐れがある」と表明した。

 

 確かにこれはどう考えても問題だろう。どこまでがセーフかアウトか線引きは困難であるし、畢竟、当局の逆ゲシュタポ化により、人権は風前の灯となること必定? ともかくも、「ユダヤ人虐殺では多くのポーランド人がナチ・ドイツ軍の手先となって関与したことは史実」であり、歴史修正は許されない。

 

 ただ、だ。国家の尊厳と名誉をあくまで守るというポーランドの気概に触れる思いがするのだ。これは同国に限らず、主権国家としての当然のスタンスだろう。いわんや独裁国家である中国や北朝鮮においておや。ちなみにロシアのプーチン政権は、ロシアが自国の「領土」と規定する土地について、「ロシアの領土ではない」と発言すれば罪となる改正刑法をクリミア併合を宣言する直前の14年3月に施行している(読売2月25日国際面)。

 

 今現在、いったいどこの世界に、自らの歴史の負の側面に殊更スポットを当て、国会で、マスメディアで、学校教育で米搗きバッタよろしく、悪うございましたと謝罪を繰り返す国があろうか。わが国の異質性が浮かびあがる。ヘイトスピーチ対策法は施行されたが、公正な選挙を経て選出された自国の首相に対するそれは、まったくのフリーらしい。中韓のプロパガンダである南京大虐殺、万人坑、遺棄化学兵器、従軍慰安婦、徴用工問題などなどに加え、近年では沖縄も恰好のターゲットとなり、歴史戦ではやられるがまま。かてて加えて竹島、北方四島は1ミリも動かず、尖閣に対する中国のプレッシャーは先鋭化し、対馬も陰に陽に攻勢にさらされている。

 

 戦後我が国のメンタリティーはマゾヒズムと化した。個人の趣味としてそれは勝手にどうぞ。だが、一国の主権にかかわる問題についてそれは亡国を意味しよう。昨日、韓国の文在寅大統領は3・1独立運動記念式典にて、日本に対し、「加害者である日本政府が『終わった』と言ってはならない」と述べ、竹島について、「独島は日本が朝鮮半島を侵奪する過程で、最初に強制的に占領した我々の土地だ。日本がこの事実を否定するのは、帝国主義の侵略への反省を拒否していることに他ならない」と訴えた由。平昌オリンピックを無事乗り切って、満を持して政権浮揚のための日本批判に舵を切ったのだろう。パラリンピックはこれからにも拘わらず…。

 

 これに対して、わが政府は外交ルートを通じて抗議するのみ。「遺憾、遺憾」と。かかるわが国に対する侮りは、自ら招いていると自覚できないのか。小川氏は記事のなかで、独週刊誌シュピーゲルの「ポーランドではリベラル派と保守派の間でコンセンサスを見出すテーマは少ないが、ポーランドのナチ占領時代のユダヤ強制収容所に関する見解では一致している」という論評を紹介している。国家のアイデンティティにかかわる問題は保革の別なく、当然のこととして一致協力できるというのだ。その大前提として国民の間に健全な愛国心があることだろう。

 

 自国の歴史問題の扱いについて近隣アジアや欧米諸国の腹黒さに倣う必要はない。真摯に向き合えばいい。ただ国家の名誉と尊厳に対する攻撃にはただでは済まさないとの気概を示さなければならない。