■不動産と一般的な商品の違い

 例えば日用品を大手ドラッグチェーンで購入する時、その商品が他店より安いかを厳密に比較して購入する人は少数派でしょう。高額な買物ではないということもありますが、大手ドラッグチェーンであればコンビニより安く、競合他店からみても大差ない金額で売っているとわかっているからです。一般的な商品はその製造者はそれを生業とする企業であり、製品によっては完全受注生産やオーダーメイドもありますが、ほとんどは万単位といった個数を製造するマスプロダクツです。不特定多数の消費者により多く購入してもらえるよう企業が販売戦略を立てます。

 一方、不動産の売主は個人であることが多く、類似した物件はあっても、まったく同じものは存在せず、購入者はたった一人いればいいのです。販売価格の最終決定権は売主にあり、中には売主の個人的な事情や思い入れによって相場からかけ離れた高値で販売されることもあります。あまりに高値であれば販売を受けない不動産業者もいますが、もしかしたらその物件をどうしても必要とする人が一人いるかもしれない、少なくとも100%売れないとは断言できない、すると、とりあえず売主の言い値で販売を開始することが多くなります。

 実際には、不動産業者が販売にあたり価格査定をしているのが一般的ですが、購入検討者からすると不動産業者は物件を売る側の立場に見え、その言葉に客観性を感じにくいものです。不動産鑑定士という価格査定の専門家もいますが、鑑定評価にはそれなりの費用が掛かりますので、個人のマイホーム探しで利用されるケースは一般的ではありません。

 不動産の販売価格は売主が自分の事情で決めるので、購入検討者にとってその価格は市場を適正に反映した価格ではないのではないかという疑念が生じやすくなります。

(続く)