安倍政権の景気刺激策や東京オリンピックの開催等より今後の住宅ローン金利の上昇を予想する人が増えています。金利の上昇局面に有利な金利タイプは固定金利です。今後、金利が上がろうが(下がろうが)最初に組んだときの金利のままです。

 フラット35は全期間固定金利の住宅ローン商品です。融資の引き受け自体は独立行政法人住宅金融支援機構が行いますが、様々な会社が取り扱い窓口になっており、取扱会社によって金利や手数料の条件が異なります。

 ちなみにある取扱会社の2013年11月時点の金利は1.81%で、さらに、一定の条件を満たした建物であればフラット35Sが適用され当初10年の金利が-0.3%の1.51%となります。民間金融機関の提供する変動金利ローンでは当初10年間の固定金利特約期間金利がおおむね1.2%~1.6%なので、どうせならフラット35を選択すべきと思われるのですが、実はそんな簡単ではありません。実際にはフラット35を検討するものの断念し民間金融機関の変動金利ローンを選択するケースが多いです。それはなぜでしょうか、フラット35について、住宅ローンの解説本にはあまり触れられていない実務的側面について記載します。


①団体信用生命保険料が別払い

 団体信用生命保険(略して団信)はローン支払期間中に主債務者に万が一のことがあると、ローンの残債分の保険金が下りて一括支払いしてくれるので。残された家族には無借金の家が残ります。

 一般的な民間金融機関の住宅ローンの場合、団信に強制加入で、その保険料は月々の支払いに込みです。しかし、フラット35の場合は任意加入となっており、加入する場合の保険料は月々のローンと別払いになります。

 保険料はローンの残額によって増減しますが、仮に期間35年、金利1.81%で3000万円のローンを組んだ場合の初年度の保険料は107,300円で、35年間の保険料総額は約210万円になります。保険料210万円を金利支払いとみなすとローン金利は+0.33%アップの2.14%となり、民間金融機関のローン金利を上回ってきます。


②物件価格の9割までしか融資をしない

 仮に物件価格を3000万円とすると、フラット35の融資上限額は2700万円です。物件購入にかかわる諸経費を物件価格の1割とすると総額3300万円、差額の600万円は頭金として現金で用意しなければなりません。対して民間金融機関の住宅ローンの場合は条件次第では3300万円をフルに融資を組むことが可能です。フラット35は住宅購入のためにお金を計画的に貯めていたり、親御さんからの資金援助があるような方に適したローンと言えます。
(ただし、2014年4月から諸費用を含めない物件価格10割の融資を行う予定になっています)

 実はフラット35でも、不足分を別途ローンを組むことが可能です。ただし、この場合は主に信販系の金利高めの(年利4%程度)、年数短め(最長15年程度)のローンになるので月々の支払額は上がります。そこまでしてフラット35で組むべきかということになります。

(次回に続く)