千田稔・本多健一・飯塚隆藤・鈴木耕太郎(編著)『京都まちかど遺産めぐり なにげない風景から歴史を読み取る』ナカニシヤ出版,2014年5月,978-4-7795-0823-3


や! こんなところに歴史がコロがっている。さすが京都!! 路傍の、小さな祠や、見た目には何の変哲もない道路から、それに関わった大きな歴史を読み取る「ミクロ文化遺産」。土地の歴史を発掘し、叙述する新しい方法を編み出した成果。




京都本を一定程度置いていると自負する書店の店頭に、この本があるかないか。それでその書店の力量がわかる。目次は、以下の通り。

はじめに

なにげない街角の風景から歴史を読み取る

第I部 洛中
1 京都御苑のグラウンド 明治時代の常設の博覧会場跡
2 畠山辻子 武将の邸宅跡にできた新たな「道」
3 上京小川の名残 戦国期の繁華街をつくった川の流れ
4 聚楽第のその後 「悉く荒野と成りて、涙夢の如し」
5 「物の怪」の気配を感じる土蜘蛛塚 頼光の山蜘蛛退治譚
6 千本のシンボル、時計塔 時を刻み続けて
7 西陣 織物職人が暮らす路地
8 平安宮中の式内社 消えた神々の謎
9 月下氷人石 迷子・尋ね人の行方を求める江戸の「掲示板」
10 祗園祭の「周縁」 ひっそりと営まれる町々の行事
11 平安京東西の主軸、二条大路 権力のイメージをおびた道
12 市電の旧軌道 廃線後のさまざまな痕跡
13 消えた五条橋中島 しかし、晴明塚は残っていた
14 平安京の坊名と小学校名 歴史を背負う地名
15 七条大橋の過去・現在・未来 100年目の橋渡り

第II部 洛東
16 法勝寺八角九重塔 観覧車の下に眠る東山のシンボル
17 日本最初の路面電車と第四回内国博覧会 明治の岡崎
18 二つの武徳殿 近代和風建築のゆくえ
19 志賀山越 切断された古道
20 ラジオ塔 ラジオ放送普及の跡をめぐる
21 花山洞 東山から山科へ、街道を抜ける

第III部 洛北・洛西
22 栗栖野氷室跡と氷室神社 山間の地に涼を求めて
23 鳴滝 平安時代から鳴り響く滝の音
24 洛西花園の法金剛院 南の墓地は平安時代の築山跡か
25 御土居の袖 秀吉による京都改造の謎
26 壷井地蔵 井戸から現れた石仏
27 松尾月読神社の月延石 京に伝わる安産利益の鎮壊石
28 洛西竹林公園 流転の石仏たち
29 静かに眠る愛宕山鉄道 嵐山と愛宕山を結ぶ観光路線跡

IV部 洛南
30 朱雀大路の痕跡 道幅を探る
31 東寺南大門 移転した日本の距離原標
32 木造三階建て京町家のある景観 嶋原商店街
33 梅小路機関車庫 重い「幻の遺産」
34 伏見稲荷の忌刺榊 中世の宗教的領域(氏子区域)を伝える
35 深草と旧陸軍 旧軍用道路と建物の跡
36 旧京都電燈火力発電所 伏見に残る明治の面影
37 三栖閘門 川の港・伏見に残る近代化遺産
38 桃山いろは舘 明治天皇陵と参拝者の宿

図版出典一覧