N-033 とげぬき童子全身像
N-033 とげぬき童子全身像(大) H.92×W.52×D.65cm (ローマ・カピトリーノ美術館収蔵 紀元前一世紀頃の原作 現存するのはローマンコピー)
”とげぬき”には、さらに小さいサイズのこちらもあります
N-034 とげぬき童子全身像(小) H.35×W.26×D.20cm
この写真だと違いが分かりづらいかもしれませんが、こちらはかなり縮小されたものです
”とげぬき(英語だとThe Spinario)”は彫像としても良く知られていいましたし、石膏像としてもかなり古くから存在している製品です
たくさんの複製品がヨーロッパ各地の美術館に収蔵されていますが、石膏像の元となったのはローマ・カピトリーノ美術館(コンセルヴァトーリ宮)のブロンズ像ではないかと考えられています
そちらの映像がこちら、
コンセルヴァトーリ美術館収蔵のとげぬき像
紀元前一世紀頃の古代ギリシャの原作が、ローマでコピーされたものと考えられています
紀元前1世紀頃の原作ということですから、古代ギリシャとしては比較的末期となるヘレニズム期(紀元前323~30年頃)の作品です
ヘレニズム期というのは、アレキサンダー大王のマケドニアによるギリシャ支配の経験から、ギリシャ世界がオリエント文明の影響を消化していった時代です。
彫刻という観点からすると、それまでのパルテノン神殿に代表されるようなクラッシック期の作品がコントラポストなどのカノン(基準・規範)を重要視した人間(神々)の理想美の姿を追及していたのに対して、ヘレニズム期になると彫刻のテーマ、表情、ポーズ、モデルの年齢(老人や子供の彫像も多い)・・・などの幅が広がり、より派手で、分かり易く、よりリアルで劇的な表現となっていきました
この”とげぬき”の彫像も、そういった”カノン”の発想からは離れた自由な表現となっています。足の裏のとげを探る少年の姿は、人間の理想美というものとはかけ離れていますが、何気ない日常の姿に彫刻家は美しさを感じとったのでしょうか・・・
このコンセルヴァートリ美術館のブロンズ像について、Wikipediaの解説を元に要約してみます
このブロンズ像は、古代ギリシャのブロンズ作品を元にした複製品だが、ローマ時代にローマで鋳造された貴重な彫像である。しかも土中に没することなく保存されていた。1160年にはラテラノ宮の外に設置されていて、彫像は欠損の無い状態であったという記録が残っている
その後、1470年代になると教皇シクトゥス4世がコンセルヴァトーリ宮に移動させ、ルネッサンス期に人々の賞賛を集めるようになった。1501年には、Severo da Ravenna,Jacopo Buonaccolsiという人物が、イザベル・デステ(エステ家出身のマントヴァ侯妃、ルネッサンス芸術を庇護した)のためにブロンズ製のコピーを作成した
その後16世紀になると、Giovanni Fancelli,Jacopo Sansovino、Benvenuto Celliniの監督の下でさらなるブロンズ複製品が制作され、エステ家のイッポリート・デステが当時のフランス・スペイン王であったフランソワ1世への外交的な贈り物としてこの彫像を贈った。枢機卿Giovanni Ricciは、スペイン王フェリペ二世にこの彫像を贈り、イギリス王のチャールズ一世はHubert Le Sueurの制作した複製像を入手した。縮小された複製像も制作され、この彫像を入手することが貴族たちのステータスともなった
大理石製の複製品も制作され、フィレンツェのサンマルコ寺院に設置されたメジチ家の古代彫刻コレクションの一部になった。フィレンツェを舞台とした初期ルネッサンスの芸術家たちも”とげぬき”に影響を受けており、最も顕著な例はサン・ジョバンニ洗礼堂の青銅扉のためのコンペティションに参加したブルネレスキが製作した「イサクの燔祭(犠牲)」である
左下の人物のポーズ・・・まさに”とげぬき”のポーズです
この彫像について”Spinario(とげぬき)”という名称以外にも知られている”The faithful boy(Il Felele、忠実な少年)”という名称は、この少年が羊飼いの少年であり、ローマの元老院までメッセージを伝えに行く道程で、足の裏に刺さったとげを抜き取る瞬間以外は片時も休まずに使命に忠実であった・・・という作り話から生まれたもの。しかしこの見方は18世紀の学者によってすでに否定されている
素晴らしい!
こちらはフィレンツェ・ウフィッツィ美術館収蔵のもの メディチ家のコレクションだった大理石製の複製品
大英博物館収蔵のもの 1世紀頃
Pieter Claeszという16世紀のオランダの画家の作品 とげぬき像が描きこまれていますね
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