E-715 セレネの馬
E-715 セレネの馬 H.64×W.86×D.22cm ( 大英博物館収蔵 )
この「セレネの馬」という彫像も、やはり前回取り上げた”ラボルトの首像”同様に、パルテノン神殿の破風彫刻の一部だったものです。
現在では、大英博物館に収蔵されており、ヒジョーーに貴重なパルテノン神殿の遺物のひとつです。
前回の”ラボルトの首像”は西側破風の一部でしたが、この”セレネの馬”は東側破風彫刻の構成要素です。
Wikiを探してみたんだけど、あまり良い映像が無くて・・・
上の写真が、東側破風彫刻(ペディメント)の再現想像図。。
一番右端に、アゴをちょこんと載せているのが、今回取り上げている「セレネの馬」です。馬の左隣りに居るセレネ(月の女神、アルテミスと同一視される女神)が操る四頭立ての馬車を引っ張っています。
右の端には”セレネ(月の神)の馬”、左側の端には”ヘリオス(太陽神)の馬”がおり、セレネ(月)は夜の空を駆けた役目を終え海中へと沈んでゆこうとするところ、逆にヘリオスは夜明けとともに、今まさに海中から上ってくる・・・という夜明けの場面なのです。
この破風彫刻全体のテーマとしては、”アテナの誕生”の場面が描かれています。
ゼウスの頭頂部から、完全武装の姿をしたアテナが突如出現した・・・というギリシャ神話のビックリエピソードです。
中心に居る二人がゼウス&アテネ。その周囲で、ギリシャ神話の神々がビビりまくっております。
先ほどの、復元彫刻の中心部分。ゼウスの後ろはヘラ、アテナの盾の後ろがヘファイストス(鍛冶の神)、その右隣がポセイドン。ただし、この中心部分は、17世紀の時点でさえ既に完全に失われており、こうした想像図の根拠となる絵画さえも残されていないというのが現実です。
大英博物館での展示は、こんな感じです。
神殿をイメージさせるような広大な空間に、パルテノン神殿の彫刻のみが展示されています。
素晴らしい展示スペースです。
セレネとは反対側の端の”ヘリオスの馬”と”ディオニソス”の像。ディオニソスの奥は”デメテル”と”ペルセポネ”の仲良し親子。
こちらは、セレネの馬に近い位置の部分。左は”ヘスティア(かまどの神、右端が”アフロディテ”とされています。
それにしても、この体にまとわりつく濡れたような布の表現!!
数百年前に、直立不動のクーロス像を作っていたことを考えるとなんという進化でしょうか。
破風彫刻での”セレネの馬”の位置を考えると、石膏像もこの角度からの写真が大切ですね。
この大英博物館に収蔵されている、パルテノン神殿の破風彫刻、メトープ(欄間にあたる部分のレリーフ彫刻)は、膨大な数のコレクションで、”エルギン・マーブルズ”と呼ばれています(最近は、いろいろ批判があって、”パルテノン・マーブル”と呼ばれてるみたいだけど・・・)。
これは直接観ると、本当に、本当に、ものす~~ごく素晴らしい彫刻コレクションなんだけど、同時にものすご~~い規模の”略奪品”でもあるわけです。
ギリシャと英国との間で、返還に関する長年の論争が交わされてきたのですが、いまのところこの大理石彫刻群は大英博物館内にとどまり続けています。
この辺の事情は、以前↓の本に関して記事を書いたときに少し触れたことがあります。
ご興味のある方はぜひ。これすごく良い本ですよ。
2011年11月の記事です → 「パルテノン・スキャンダル」
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