L-613 天女レリーフ(B・夜) | きょうの石膏像 

L-613 天女レリーフ(B・夜)





きょうの石膏像     by Gee-L-613

L-613 天女レリーフ(B・夜)    直径31×D.2cm (1815年 ベルトル・トルヴァルセン作 コペンハーゲン・トルヴァルセン美術館収蔵)






18世紀末~19世紀にローマで活躍したデンマーク出身の彫刻家”トルヴァルセン(1770~1844年)”の作品です。


トルヴァルセン自身による自画像。



前回の”昼”に続きまして、”夜”というタイトルになります。


右下に飛んでいるフクロウが”夜”であることを表しています。


そして、主人公の天使はそっと目を閉じ、幼子たちも眠りについています。



トルヴァルセン美術館に収蔵されている、直径80cmのオリジナルはこちら、


Natten

Wikiでどうしても映像が見つからず・・、トルヴァルセン美術館様のHPから拝借しました。。すみません


オリジナルは、私たちの石膏像よりも直径が2.5倍くらいですから、立体感がすごいですね~。衣の表現、羽の盛り上がりなど素晴らしい作品です。




トルヴァルセンは”新古典主義”の彫刻家としてカテゴライズされるのですが、この一対のレリーフを見る限りだと、とても優美でしっとりした質感があって、華やかさを追及していたロココ時代に通じる印象もうけます。まあ、そのあたりの区分っていうのは、後世の研究者たちの考えでしょうから、当時の芸術家にとってはあまり意味の無い区分かもしれませんね。


同時代の良きライバルであったカノーヴァにもいえることですが、ギリシャ・ローマの古典に範を求めるといいつつも、注文主である為政者、貴族、富裕層たちからの貴族趣味的な要望にはしっかりと答えているんですよね。


ミケランジェロなんかですと、パトロンからの要求もあることはあるんですが、それと闘いながら身を削って作品を生み出していたような印象を受けます。そういったルネッサンス期の大家達と比較すると、ロココの作家達や、カノーヴァ、トルヴァルセンといった人達は、あくまでパトロンと調和して生涯の芸術活動を展開しています。


素晴らしい技術で、パトロンたちの要望に沿った作品を生み出すわけですから、当時の富裕層からは絶大な支持を受けました。ただ、その辺が現代の我々から見ると、ちょっと”そつがない”ような印象を受けてしまうような気がするのですが・・・。


ともあれ、カノーヴァもトルヴァルセンも歴史に残るすごい作品をたくさん残しています。


File:ThorvaldsensJason.jpg

「イアソンと金の羊毛」 1802年 トルヴァルセン作 コペンハーゲン・トルヴァルセン美術館収蔵



これはギリシャ神話では、すごく人気のあるエピソード。


王の息子として生まれたイアソンは、陰謀によって王と共に追放されるんだけど、やがて成人して王位を取り戻しに帰り、そこで王位復帰の条件として出されたお題が”コルキスの金羊の皮をとってこい”っていうものだったんです。


もちろん困難な冒険だから王位継承の条件になるんですけど、これを取りに行く旅が”アルゴー号の冒険”として結構長くて華やかなお話なんです。ヘラクレスとかオルフェウスっていうギリシャの有名キャラクターがみんなで乗りこんで出発するんだけど、例によって意味不明のエピソードが山積みで・・・。


で結局、困難だったはずの金の羊の毛皮は、敵方の王の娘であった”メディア”っていう女性の手助けによってサクッと完了。その金羊の毛皮を手にしたイアソンの姿を描いているのが、このトルヴァルセンンの彫刻作品なんです。


冒険の目的を達成したイアソンが、若々しく、気力に満ち溢れた姿で表現されています。トルヴァルセン作品としては、これが一番有名かな・・。



ちなみに、ここで登場する”メディア”は、エウリピデス作のギリシャ悲劇「メディア」の主人公。この冒険譚の後、イアソンと結ばれたメディアのその後が描かれます。円満な家庭を築いていたのに、浮気性なイアソンに捨てられたメディアはついに自分の子を殺し・・・。。。っていう本当の悲劇。。




File:Thorvaldsens Gratier med Amors pil.jpg

「三美神」 1817年 トルヴァルセン美術館収蔵


これもポピュラーなテーマですね。カノーヴァもそっくりなの作ってると思うんだけど…。




File:Thorvaldsens Venus.jpg

「リンゴを持つヴィーナス」 1816年 トルヴァルセン美術館


左手の位置、指の形が、フランスの彫刻家ファルコネの作る彫像にそっくりです。ギリシャ・ローマ的古典に立ち返るといいつつ、人体自体のボリューム感なんかは明らかにギリシャ彫刻などとは趣が違います。もっと繊細で優美なように思います。




File:Maximilian Wittelsbacherplatz-1.jpg

15世紀末のハプスブルグ家出身のオーストリア大公マクシミリアン一世像 トルヴァルセン作 ミュンヘン


トルヴァルセンは、ローマにとどまらず、ヨーロッパ中に作品を残しています。



ローマで彫刻家として大家の地位を確立していたトルヴァルセンは、1838年に母国デンマークに帰国しますが、その時は大変な歓迎で迎えられたようです。


トルヴァルセンの帰国を歓迎する人々




デンマークって、私一度行ったことあるんだけどな・・・。その頃はまったくノーマークで。。食器のロイヤル・コペンハーゲンの工場見学行ったり、チボリ公園でフラフラ遊んじゃったり・・・。あ~あ。有名な石膏像コレクションをもっている美術館もあるんだよね~ここは(ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館)。本当は行くべき場所なんだろうけど、もう一回行きたいかっていうとね~・・・。もっと南のイタリアとかにいきたいかな~~。





今回取り上げた、L-613 天女レリーフ(B・夜) は、私共の運営するオンラインショップ「石膏像ドットコム」で実際に購入していただくことが出来ます。以下のバナーをクリックすると、ショップに入れます。よかったら覗いてみてください。


きょうの石膏像     by Gee-sekkouzou.com