M-445 中古代婦人半面
M-445 中古代婦人半面 H.39×W.20×D.15cm (1471年頃 ローラナ作 パリ・ルーブル美術館収蔵)
いよいよミケランジェロか~!・・・・・・・と思っていたんですが・・・・・・・
石膏像の一覧のリストを眺めていたら、あれもこれも・・・そういえば・・・。となってしまったので、きょうはこちら。
”中古代婦人”ってさ。。これまたいい加減なネーミングですが、こちらは出自がはっきりしている彫刻です。
原作の彫刻はこちら、
アップの写真、
1471年頃 フランチェスコ・ローラナ作 「貴族の女性の肖像(アラゴンのエレノア?イザベラ?)」 パリ・ルーブル美術館収蔵
作者のフランチェスコ・ローラナ(1430~1502年)は、ヴェネッイア勢力下のダルマシア出身(犬のダルメシアンの発祥地・現在のクロアチア)で、なぜか南のナポリでそのキャリアをスタートさせた人物です。
ナポリっていう土地は複雑な歴史を持つ場所で、
11世紀~ノルマン人による支配によって、”ナポリ・シチリア王国”に、
1266年~フランス王家、アンジュー伯による支配、
1441年~スペインのアラゴン家による支配、
1494年~フランス王、ヴァロア朝のシャルル8世によるナポリ再征服・・・・・以下、取ったり取られたりの繰り返し・・・。
という流れで、ローラナが活躍したのは、スペインのアラゴン家支配の時代です。
彼がナポリに残したのは、
1466年頃制作 アルフォンソ一世の凱旋門 ナポリ カステル・ヌーヴォー
ローラナは、この辺を担当したみたいなんだけど・・・たくさんの彫刻家が共同で作業したようで、それぞれの分担はよく分からないんだそうです。。。。。
この凱旋門の制作のために、ピエトロ・ダ・ミラノ(ミラノ出身)、フランチェスコ・ローラナ(クロアチア出身)、パオロ・ロマーノ(ローマ出身)、イザヤ・ダ・ピーサ(ローマ出身)、ドメニコ・ガッジーニ(ミラノ出身)などがイタリアの各地から招聘されました。
それまで、ルネッサンスは北方で発展していたわけですが、このアラゴン家による凱旋門の制作を機に、イタリア北部の彫刻家達がナポリを訪れてルネッサンスの息吹を伝える作品を生み出すようになりました。
こういったアラゴン家との関連から、今日とりあげている石膏像の彫刻が制作されたものと思われます。
ローラナがシシリー(シチリア島)に滞在していた時期(1466~1471年)に、このアラゴン家にまつわる人物の胸像が何点か作られており、石膏像の婦人像もその中の一点です。
こちらも、ルーブルのものと同一人物(アラゴンのエレノーア?、イザベラ?)を描いた肖像彫刻 ローラナ作 シシリー・パレルモ州立美術館収蔵
この女性はミラノ公爵のジャン・ガレアッツォ・スフォルツァの妻だった人物で、”アラゴン家のイザベラ”とする説が有力です(どこの美術書でも確定的ではないみたいですが・・・)。
当時のミラノはスフォルツァ家の支配下にあり、スフォルツァ家とナポリのアラゴン家とは近しい関係だったようです。この石膏像の人物もスフォルツァ家の血筋としてナポリで生まれ、本家のあるミラノに嫁ぎミラノ王妃となりました。
スフォルツァ家は、それ以前の支配者だったヴィスコンティ家の傭兵隊長出身の家系だったのですが、宮廷では学者、芸術家を保護し、ミラノにおけるルネッサンスの熱心な庇護者となりました。
なかでも”イル・モーロ(ムーア人風の)”と呼ばれたルドヴィーコ・スフォルツァ(1452~1508年)は、あのレオナルド・ダ・ヴィンチの初期のパトロンとなったことで有名です。
当時のミラノ宮廷にダ・ヴィンチが仕えていたことから、あの”モナリザ”のモデルがこの石膏像の人物のアラゴンのイザベラなのではないかとする説もあります(モナリザについては”説”がたくさんありすぎますが・・・)。
この方、相当な美貌と地位だったようで、あのラファエルも描いているんです。
ラファエロ作 イザベラ・ダ・アラゴナ
レオナルド・ダ・ヴィンチ作 「白貂を抱く貴婦人(チェチリア・ガッレラーニ)」
この絵は萌えるよね~。モナリザより断然こっちの方が惹かれる。。。この貴婦人は、前出のルドヴィコ・スフォルツァ(イル・モーロ)の愛妾だった人物なのですが、なんとなくアラゴンのイザベラにも似ているような・・・。
う~~ん。ここまで書いてきて、複雑すぎますか??
アラゴン家と、スフォルツァ家が出てくるんで、ゴチャゴチャしてしまいました。
結局、ローラナさんはナポリ・シチリアっていう南の場所で、ずっと北の地であるミラノの王室(スフォルツァ家)の人物の肖像彫刻を作っていたということです。
次回も、フランチェスコ・ローラナ作の作品をご紹介。。
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