お姉さま、……かよわき消費者に節分の際には恵方巻を買わせようとした小売業界が、今度はバレンタイン商戦をかけてきましたわね……。



……ま、いくら攻勢をかけられたところで、わたくしは買いませんが……。ええ、義理も、友も、自分へのご褒美もなく、ましてや本命などっ……。

……女として生まれ、3×年ですが、人生で本命チョコをあげたのは、幼稚園の時のただの一度きり……。マコト君、あなた当時は何とも思わずに受け取ったかもしれないけれども、あれは今となっては非常に貴重なものだったのよ……。だってこのわたくしが唯一あげたことのあるチョコレートなのだから……。



……そこはそれ……。


世間はバレンタイン一色なので会社帰りに寄った丸井もチョコレート販売の特設会場が設けられており……もちろんそこは素通りし、目指すは酒売り場……。そこで前から目をつけていたスコットランドのシングルモルトウイスキーを鷲掴み、ああ、これと何をあわせようかしらと妄想猛々しくしながらレジに持って行くと……レジのお姉さん……「プレゼント包装で宜しいですか?」



……はい?



……えっ……贈り物って決めつけるの?とぎょっとしつつ、「えっ自宅用ですが」と応えると、レジの方はわたくしの更に上をいくぎょっとし具合で、「ご自宅ようですかっ!」と目を見開かれ……。慌てた様子でそそくさとウイスキーを紙袋に詰めだし……。


……時期が時期だからプレゼント用と決めつけられたのか……それとも、ウイスキーをまさか自分用に買う女がいるとわということなのか……。どちらにしろ、敗北感に打ちのめされ、ウイスキーを片手に帰路につくわたくしの背中はいつも以上に寂しい……。



赤貧亭



寂しい女はウイスキーの琥珀色の中に孤独を見る……。



新豆腐百珍 百七十二珍目 【豆腐の雷漬け】



そして合わせた酒肴は豆腐のキムチ風ともカクテキ風とも言える唐辛子漬け……。

低カロリーながらイソフラボンたっぷりで美肌、アンチエイジング効果も高く、唐辛子のカプサイシンで代謝まであがってしまって美容に良いだけではなく……チーズにも似た濃厚な味わいが酒肴として堪らなく……。……ウイスキーと良く合いましたよ……。もちろんおビール、日本酒、白ワインとも言わずもがな。万能な酒肴ですので、お試しあれっ。


<材料>


木綿豆腐 一丁、粉唐辛子 大匙2杯、塩 小匙2杯、甜菜糖 大匙1杯


<作り方>


・ 豆腐をレンジで5分加熱し、重石をして1時間ほどしっかり水切りします。ジップロックなどの袋に全ての調味料を入れて良く振り、その中に豆腐をいれます。4,5日で食べごろです。



しかし……「ご自宅用ですか?」と訊かれたことは幾多とあれど、「プレゼント用ですか?」と訊かれたことは初めてです。改めて女性にウイスキーってまだまだマイナーなのねと思った次第……。





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