一生、自分の歯で噛むために ~国も、歯科医も、患者も、まずは「予防」の意識を〈後編〉 | 清話会

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Special interview『先見経済』2016年11月号誌面より

 
一生、自分の歯で噛むために
国も、歯科医も、患者も、まずは「予防」の意識を〈後編〉


「予防があって処置がある。この認識を、国も歯科医も患者も忘れてはならない」。茨城・龍ケ崎で祖父の代から3代続く歯科医院を引き継ぎ、東京・新宿でも最先端の歯科医療を行う小野瀬弘記氏はそう提言する。一生、自分の歯で噛むために、私たちに必要な意識とは――。歯科業界注目のプロフェッショナルが語る。(取材・文 本誌 大澤義幸)


〈前編〉 からの続き


1本でも多くの
健康な歯を残すために


――予防していても歯が悪くなってしまったら、例えばインプラントを入れる最適なタイミングはありますか?


小野瀬 インプラントを入れる目的は、欠損した歯に代わる噛める歯をつくり、残っている他の歯の負担を軽減し、長く持たせるためです。入れ歯では、残った歯に負担がかかるので、歯の残存率が落ちます。「1本なくなっただけだから、インプラントはまだ必要ない」ではなく、1本でもなくなったらインプラントを考えることが、次の1本を失わないことにつながります。

 
ここで注意したいのが、インプラントを安く入れられればそれで良いのか。少なくとも、歯を治す、原状復帰させるためには、それなりの材質を使い、設備が整った歯科医院で、専門医の治療を受けなければなりません。例えば安価な治療を行うところはそうした基準を満たしていないところも多いようです。


――小野瀬先生の新宿や龍ケ崎の歯科医院ではインプラントの最新機器を導入し、治療の評判も高いようですね。インプラントを考えている人のために、先生が治療で配慮している点を教えてください。


小野瀬 私の治療ポリシーは、木を見て森を見ずにならないようにすることです。口腔内環境を考慮し、例えば噛み合わせはどうかを、顎関節が正常に動いているかから見ていきます。歯には筋肉と力のバランスを取るポジションがあるので、どこに歯が欲しいのか、どこに根を置くのか、どこに骨を足すのかなどを総合的に考えます。

 
特に人工歯根(フィクスチャー)を埋入するインプラントは、自分の経験に頼って処置をするのではなく、最新のCAD–CAM で口腔内をスキャンし、埋入イメージを3Dでシミュレーションします。CT撮影で口腔内環境細部まで把握し、人工歯根はサージカルガイドを使用して、ミリ単位のずれも起きないよう正しい位置に埋入します。低侵襲で素早く科学的な処置を行うことが、患者の身体の負担を軽減します。他にも、セラミックの被せ物などは自然な歯の色や質感を意識しています。


――インプラントの治療や技術は急速に進歩していますが、歯科医がそれを生かす治療ができるかが重要ですね。


小野瀬 その通りです。そうした治療ができないところもある。これらが一緒くたにされ、専門医として括られているのは問題です。また、患者はインプラントの処置が悪いと、特定の歯科医院ではなく、インプラント自体が悪いと決めつけてしまう。そういう話が広がると、新たにインプラントを考える人が二の足を踏み、「インプラントはやりたくない」という人が増えます。

 
一方、いくら歯科医に経験があっても、日々進歩している科学的かつ先進的な知識や技術を、日ごろから勉強していなければ時代に乗り遅れます。アメリカと違って、日本の歯科医師免許には期限がありません。つまり免許が失効しないので、勉強するかしないかで、歯科医に雲泥の差が出ます。私も世界の治療はどうか、日本が突出している点はというグローバルスタンダードの観点を持ち、日々勉強していますよ。


――小野瀬先生は、今年インディアナ大学の教授となられたそうですね。これもそうした自己研鑽の一環ですか?


小野瀬 はい。客員教授としての4年間の重責を経て、教授として招へいされました。インディアナ大学は歯科や口腔内環境に対する先進的な考え方を持っています。「口は身体の他の器官との境界線がない」ことを踏まえ、医学部との連携を密に図っています。日本では歯科は専門性が特化され、他学部との連携がほとんどありません。アメリカも根管治療や補綴治療は専門医が行いますが、その前提として身体全体を見る「予防の専門医」がいます。こうして木を見つつ、森もしっかり見ているわけですね。


――歯科医のあり方が違いますね。予防の話に戻りますが、日本では、国も歯科医も患者も、予防が大切との認識を持たなければなりませんね。


小野瀬 その通りです。虫歯になるのは予防を怠った自己責任、歯を悪くするとお金がかかると教えていく。「健康な歯の人が増えると、食い扶持がなくなる」と嘆く歯科医もいますが、とんでもない。健康な口腔内環境を健康寿命に近づけることが大切で、そのためには歯磨きだけではなく、歯科医院で定期検診を受け、さらなる予防につなげていく必要がある。それは歯科医にしかできないこと。自分の歯の健康への投資、これが本来の保険であるはずです。


――私たちが元気に生きるための投資なら、今この瞬間から必要なことですね。本日はありがとうございました。




医療法人社団弘快会 理事長
新宿オークタワー歯科クリニック 院長
小野瀬弘記〈おのせ・ひろき〉

 
1962年茨城県龍ケ崎市生まれ。87年東京歯科大学歯学部卒業後、都内の歯科医院に勤務。その後、龍ケ崎で祖父の代から約100年続く小野瀬歯科医院を引き継ぎ、現在は新宿オークタワー歯科クリニックも展開。インディアナ大学歯学部歯周学インプラント科教授。ICOI(国際インプラント学会)認定医/アジア役員・指導医、ISOI(国際インプラント学会日本支部)認定医、アストラテックUSA認定エクセレントメンバー。

 
医療法人社団 弘快会

◆小野瀬歯科医院
茨城県龍ケ崎市上町4248-1
診療時間:平日9:00 ~ 13:00 / 15:30 ~ 18:00
土曜9:00 ~ 12:00 / 14:00 ~ 17:00
Tel.0297-62-0130(木曜、祝祭日休診)

http://www.onose-dc.com/
 
◆新宿オークタワー歯科クリニック
東京都新宿区西新宿6-8-1 新宿オークタワーA-203
診療時間:平日9:30 ~ 13:30 / 15:00 ~ 20:00
Tel.03-6279-0018(土日休診。祝祭日のある週は土曜診療)

http://www.shinjuku-eic.com/