「法人税節税について」(岸 健一氏) | 清話会

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経営に役立つ法律・会計知識 第26回
法人税節税について


岸 健一氏(税理士法人ベリーベスト税理士)



すっかり涼しくなった今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

さて今回は、以前書かせていただきました 法人税節税に関して少し補足してみたいと思います。

以前、法人税節税の方法として、
1.セーフティーネット共済(連鎖倒産防止共済)の活用
2.生命保険の活用
3.従業員賞与の支給

の3点について書かせていただきました。

特に1のセーフティーネット共済はとても使い勝手がよく、デメリットがほとんどない手法ですから、活用なさっていない方は是非ご検討ください。

ところで、法人税の節税は次のように分類することができます。

●支出を伴うか伴わないか
●永久節税なのか単なる繰り延べか


この組み合わせで、一般的に節税は次の4種類に分けることができます。

1.支出を伴い永久節税
2.支出を伴い単なる繰り延べ
3.支出を伴わず永久節税
4.支出を伴わず単なる繰り延べ


節税というと2を指すことが多いです。支出を伴う単なる繰り延べです。
一般的に最もシンプルな節税方法はお金を使うということに他なりません。

お金を使う⇒費用が増える⇒利益が減る⇒税金が減る
という段階を踏むわけです。

要するに仮に1000万円の利益があれば、例えば広告費などで1000万円使ってしまえば利益はゼロになりますから法人税はゼロになるわけですね。

ですが、企業経営としてはたしてこの手法は正しいでしょうか。答えはNOだと思います。
大きな会社を経営している人ほど、法人税はしっかりと払うという発想を持っています。
法人税を払う=会社が儲かっているという証左に他ならないからです。

逆に言えば法人税を払わない=会社が儲かっていないということであり、継続企業を前提とするとこんなに危なっかしいことはありません。

先ほどの例に戻れば、1000万円利益が出ていた場合、法人税を300万円払えば700万円手元に残ります。
この300万円の法人税の支払いを避けるために広告費を1000万円つかってしまえば確かに法人税はゼロになりますが、お金は一円も会社に残らないですよね。

この1000万円の広告費が翌会計期間以降にきっちりと好影響を与えるならばこの支出は無駄ではありませんが、単に税金逃れのための広告費支出であればこんなにもったいないことはありません。

節税について書きますね、と言ったのに「税金は払いましょう」という議論をしているのがなんとなくおかしいですが、節税思考が強い人はお金を無駄に使ってしまう場合があまりに多いので、その警告として記述したまでです。
特に、支出が伴う節税を一生懸命やっている人は注意をしてください。

支出が伴う節税の代表例として、セーフティーネット共済、生命保険があげられます。
セーフティーネット共済はそんなに頭を使わなくても使いこなせる方法ですが、生命保険を活用する場合は営業マンの言葉を鵜呑みにはせず、かならず税理士と相談してから加入するようにしましょう。
解約のタイミング等々を検討してから加入をしなければ下手な節税になってしまう可能性はとても高いですからね。

真の節税になるのは、支出を伴わない永久型です。
いわゆる税額控除などの活用ですね。

法人の話ではないですが、個人の住宅ローン控除がこの典型です。
住宅ローン残高×1%が税額控除されるというあれです。

「住宅を買っているんだから支出を伴っているじゃない」という意見もあるかもしれませんが、家は節税のために買ったわけではないと思いますから、節税のために支出したとはいえません。よってこれは支出を伴わないにジャンルされるわけです。

また、税額控除は一般的に永久型です。後で住宅ローン控除の減税分を返してね、という話は聞いたことがないと思います。
逆に生命保険などの節税方法は単なる繰り延べなんですね。解約時には税金が課せられることになりますから。

というわけで、究極の節税は、「支出を伴わない永久型」です。
ではどんなものがあるのでしょうか。

ぜひ、「税額控除+法人」でインターネット検索をしてみてください。
こんなにあるのか! と驚くと思います。

例えば、人材を多く採用した、人材に対する教育を充実させた、研究開発を充実させた、大きな投資を行った場合などに税額控除が取れるケースが多いです。

つまり、税額控除を取れるのはケースが多いのは政府がその分野を充実させたい場合なのですね。
税額控除は完全に政策でして、「日本は今、雇用を充実させたいですよ。雇用を充実させてくれた法人さんは法人税を減税しますよ、だから雇用をお願いしますよ」というメッセージなんです。

しかも税額控除が取れるようなことをする場合は、補助金の獲得ができる可能性も高いです。政策に従って何かの施策をしようとする場合は、税額控除の検討と補助金の検討を忘れないようにしてください。


税理士法人ベリーベスト

http://vbest-tax.jp/