「たまごはアンダンテに」第3話 ドラマ用シナリオ (青帽子のせいさん) | seishimonのひとりごと

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            沢田研二/時の過ぎ行くままに



○貴美子の下宿先・部屋(続)


  まだ、貴美子はシナリオを書いている。
  バイクの音が近づいて来る。
  キキキッ!!

  急ブレーキの音。
  ビクリと貴美子の鉛筆が止まる。
  静寂。

  貴美子、息を止めて外の様子をうかがう。

  また、バイクのエンジンの掛かる音。
  バイクの音が遠ざかっていく。
  貴美子ホッとため息を漏らす。


貴美子「……暴走族かな?(ホッとして)」
 

  安心してまた書き始める。


○学生ホール・食堂(次の日・昼休み)


  貴美子がいつもの窓際テーブルでランチのナポリタンをとっている。
  勝が、そこにハヤシライスとカップコーヒーを持ってやって来る。



「やあ、こんちわぁキミちゃん。これ、この前のお返し(コーヒーを渡す)」
貴美子「こんにちは勝君。わぁ~どうもありがとう!あっ、そうそう!陽子からの大事な伝言あったのよ。(バツ悪そうに)」
「休むんで、頼むってだろう?(苦笑)」
貴美子「そうそう!そうなの。連絡あったの?」
「朝、顔見えなかったから……たぶん休むと思って知り合いの子に出席の代返たのんじゃった。いつものことだもん」
貴美子「いつものこと?でも手回しいいのね。勝君のこと、また関心しちゃった」
「キミちゃんに、そう誉められると照れちゃうなぁ。えへへへ」


○喫茶店・サフラン(同時刻)


  一人でいる直樹。トーストをかじりながらマスコミ就職読本を読んでいる。
  頬に絆創膏と左腕に包帯が巻かれている。

有線放送のBGMは久保田早紀の唄う『異邦人』。
  本を閉じため息を漏らす直樹。
  陽子が店に入ってくる。
  だが、気付いていない直樹。




陽子「直樹じゃない。みんなは?」
直樹「まだ、会ってない」
陽子「ふーん。私も今日学校さぼっちゃった。どうしたの!?その顔(凝視して)」

直樹「何でもない。かすり傷さ。こけたんだよ」

陽子「危ないわねえ。気をつけなさいよね。(前の席に腰掛ける)で……どうだった?ADの話し」
直樹「……ことわった」
陽子「ええっ!?なんで断ったの?……(水を一口飲んでウエイターに)コーラフロートね」

直樹「(そっぽ向く)……その話はもう訊くな」



○学生ホール(続)


貴美子「ところで、勝君。美術のアルバイト、今日からでしょう?行かないの?」
「夕方の六時半からだから。放課後から行ってでも、早すぎるくらいだよ」
貴美子「いいわねえ。TV局内のアルバイトだなんて……現場だから、いろいろ覚えられるだろうなぁ、実践で」
「うん。俺もそう思ってんだ」


○喫茶店サフラン・中(続)

  

  直樹、陽子と話しこんでいる。



○学生ホール(続)


貴美子「(ランチを取り終わり)コーヒーいただきま~す!……あっ、そうそう!昨日ね……」
「(食べながら)どうぞどうぞ。あれから 何か面白いことあったの?」
貴美子「それが大事件があったの。深夜に」
「何が、何が!?(興味ありげに身を乗り出す)」
貴美子「下宿の近所に大型バイクが来たの」
「ああ。そりゃあ、きっと暴走族だよ」
貴美子「そう思うでしょ!?こわかったわ~」
「何台ぐらいで来た?」
貴美子「……一台だと思う」
「イ・チ・ダ・イ!?」
貴美子「それで、すぐ遠くに行ったみたい」
「な~んだ。真剣に聞いて損した」
貴美子「だってねっ。真夜中だったから本当にこわかったのよ」
「ふ~ん(興がそがれて)……ところで、直樹は?」
貴美子「まだ見てないわ」
「そうか。昨日の話し、どうなったのか聞きたかったのになぁ?」


○喫茶店サフラン・表(同日・夕方)


  直樹と陽子が一緒に出て来る。



陽子「ね、今からディスコに行かない?」
直樹「……ああ、別にいいけど」


○貴美子の下宿(夜)


  電話をかけている貴美子。
  何度も鳴るコールサイン。


貴美子「……いないのかな?」


○ディスコ・店内(夜)


  80年代のディスコソングがつんざくような音量で流れている。
  ドナ・サマーの「ホット・スタッフ」。

  喧騒とミラーボールが煌めく中で踊り狂っている陽子と直樹の姿。


○陽子の部屋(同夜)


  直樹と陽子がドーナツ盤のレコードを聞いている。
  沢田研二の『時の過ぎゆくままに』のバラードが低く流れている。
  二人のそばにコーラ瓶が置いてある。



陽子「最近ねぇ、丸尾音楽学園に通ってるの。言ったっけ?」

  直樹にもたれかかり肩に頭を預ける陽子。

直樹「え?初めて聞いたよ。何のレッスン受けてるの?」


  陽子の肩に手を回す。



陽子「歌のレッスン。今度のTVオーディションの審査委員長がそこの先生なの……でね。この前のレッスンが終わった帰りに、先生から食事に誘われちゃった」
直樹「ふーん」
陽子「車で家の前まで送ってもらって、キスしちゃった。今度はホテルかなぁ」
直樹「やめろ!そんな話しは。(陽子から離れる)陽子、そんな学校なんかやめちまえよ!(むきになる)」
陽子「直樹、怒ったの?ごめん。だからその日からレッスン休んでるの」
直樹「……それで好きなのか、その先生?」
陽子「嫌いじゃないけど……ただ私、プロになりたいから……それでつい、ね。しちゃったの。キス」
直樹「……わかんないでもないけど、そういう短絡的な事はやめときなよ、陽子」
陽子「関係ないでしょ。直樹に(むくれて)」
直樹「……ただ、俺は。陽子にそうなってほしくないんだ」
陽子「……直樹、私のこと……好き?」
直樹「……」
陽子「……好きなら、抱いて」

 


  陽子、誘うように目を閉じる。
  直樹、陽子を抱きしめると、ゆっくりと静かにおおいかぶさっていく。
  レコードが終わって針の音だけが聞こえている。


                                     (続く)


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