第1話 時を経て! 新たな伝説の始まり | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。


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(2016/11/3 パラレルさんにいただきました)


 

 

 



 ある夏の日の夕方に起こった電波障害。
 あらゆる画面に映し出される謎の文面。
 そして何より、渋谷で目撃された巨大な怪物。

 それらの現象は30分とたたずに嘘のように消えうせた。機械は以前のように正しく動き、怪物が暴れた跡などどこにも見当たらなかった。しかしそれだけに、この事件はしばらく大きな話題となった。どこかの偉い先生達がそれぞれ納得できるような説を唱えたが、それもいつしか忘れられていった。

 事件は都市伝説となった。今では語られる事も少ない。
 その裏に6人の少年少女の活躍があった事を知る者は、更に少ない。

 彼らのそばにいる人間でさえ。





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「ったく、弟の誕生日とその『用事』ってのと、どっちが大事なんだよ!」
 俺は思わず立ち上がって叫んだ。
 金曜日、夕方のリビング。父さんはまだ帰ってきてないし、母さんは買い物。家にいるのは俺と目の前に座っている(やつ)--俺の兄貴だけだ。
 兄貴はこれで何度目かのため息をつきながら答えた。
「だから言ってるだろ。『用事』は明日じゃなきゃダメなんだって。夕飯までには帰ってくるからそんなにカリカリするなよ」
「去年もそう言って出かけたじゃないか! 久しぶりに父さんも一緒に出かけようって話だったのに、お前が『用事があっていけない』って言い張ったせいで無しになった!」
 俺の言葉に、兄貴が不機嫌そうに考え込む。
「午前中なら空いてるから、サッカーの試合の応援にはいけるぞ」
「それは来なくていい」 
 俺はそっぽを向いた。サッカーの試合に来られるのだけは嫌だ。
 話すのも嫌になってきて、自分の部屋に行こうとする。

「信也」

 兄貴が背中越しに声をかけてくる。
「俺に家にいろって言ったり応援来るなって言ったり……もう5年生だろ、あんまりわがまま言うなよ」
「わがままばっかりなのはそっちだろ! 俺はチームで『神原拓也の弟』って言われるのが一番嫌いなんだよ!」 
 俺はリビングを飛び出して自分の部屋に駆け込んだ。

 扉に背中をつけながらつぶやく。
「……兄貴のバカ野郎」
 いつの間にこんな関係になってしまったんだろう。顔合わせるたびにケンカ腰になって。
 俺は頭を振ってその考えを追い出すと、明日の試合の準備に取りかかった。