前の回に書いた3/23にはもうひとつのミラクルが起こっていた。

 倉本(美津留)っちゃんと仕事をして、ソバが食いたくなり、スタッフで恵比寿の街に出たのだが、途中で倉本っちゃんが

 「せいこうさん、シークレットなんとかいう植物のドキュメンタリー……」
 「え? Journey through the secret life of plantsのこと?」
 「そうそう、スティービー・ワンダーが」
 「サントラやったのに、お蔵入りしちゃった映像!」
 「さすが、よく知ってますね」

 知ってるも何も、俺は敬愛するスティービー作品で『songs in the key of life』と、このサントラ(二枚組)を最高峰と考えているし(スティービーのファンでもソウル寄りの人はこの二作品を評価しない。だが、俺はする。圧倒的なこの音楽性の高さを俺は大評価してやまない)、この二作品を日本で一番多く聴いてきたとさえ自負していたのである。
 ちなみに昨年、JUST A ROBBER「フラワー・パワー」という収録曲を日本語にしてカバーしたのだが、許可が下りずにそれこそお蔵入りしている。


 それはともかく、倉本っちゃんはこう続けた。

 「それがね、今、YOU TUBEで出てるんですよ。十分弱ずつに分けられて。昨日見つけたんだけど」
 

 「ええーーーっ!!!」


 とりあえず、皆さんもどうぞ。
 花が咲いていく映像とスティービーの音楽のコンビネーションの奇跡!
 どんどん続けて観て下さい。
 theboydannyが上げている映像がそれです。

 これが1979年にお蔵入りしたまま、誰の目にも触れていなかったはずの映像。



 で、奇跡はここからで、俺は倉本っちゃんの話を聞いて、すぐルーカスB.Bに言わなきゃと思った。
 5/1に始まる我々のWEB-TV『PLANTS+TV』でリンクもしたいと俺は思ったのだ。

 そして、倉本っちゃんと道の角を曲がった途端、向こうからそのルーカスが歩いてきたのである!

 ただ、俺もスタッフと一緒だったし、ルーカスもそうだったのでくわしい話は出来なかった。
 俺たちはいつものように握手した。
 すると、ルーカスが言った。

 「じゃ、いとうさん、明日ね」

 そうだった。
 俺は忘れていたが、翌日ルーカスと会うことになっていたのだった。
 したがって、ソバ屋の近くでは俺はこう言いさえすればよかった。

 「ルーカスに今、どうしても伝えたいことがあったんだ!」
 「わかった。明日聞かせてね」

 流れがうまく出来過ぎている!


 ということで翌日、俺は神保町でルーカスにシークレット映像のことを思うさま話し、そのままWBCの8回からを古い喫茶店の中で一緒に観た。
 アメリカ人ながらルーカスはプレーごとに一喜一憂した。
 ただ、「旗はよくないね」とだけ言って笑ったのが印象的だった。
 野球自体を楽しむ姿勢の基本が、さすがに本場の人、ルーカスにはあった。
 イチローの一打以後、俺は集英社に移動して奥泉(光)さんと携帯画面で続きを観たが、何より素晴らしかったのは奥泉さんの無関心ぶりであった。
 優れた野球プレイヤーである奥泉さんは、単にたくさんある試合のひとつとしてしかそれをとらえていなかった。渦巻く熱狂から身を離すその知性のあり方。
 
 
 話はどんどんずれたが、倉本っちゃんのおかげで、俺は今も画面の左端で『Journey through the secret life of plants』を観ながらこれを書いている。

 これを観たいと長年願ってきたスティービー・ファン、植物ファンは是非、削除される前に観ておくべきです。


 これはYOU TUBE時代でなければ起き得ない、事件だ!