本日はまず、初台のNTTインターコミュニケーション・センターへ。
 東京に生まれ育って今年で47年になるけれど、京王新線に対する理解がまったく出来ておらず(つまりは西東京がよくわからない)、何度も電車を乗り直して30分ほどロス。

 なぜこんなロスが……と不思議に思っていると、目的の『サイレント・ダイアローグ』の展覧会場で、憧れのメディアアーティスト、植物界のある意味マッドサイエンティスト、植物の生体電位変化をサウンド・インスタレーションに変える男、銅金祐司さんに初めて遭遇。
 銅金さんご自身から展示作品の解説をいただくという希有な事態に。
 偶然がもたらす必然。

 銅金さんは俺のホームページの「55ノート」に関してコメントをくれたり、“『VOL』の「アヴァンガーデニング特集」に『PLANTED』がいち早く反応していたのが素晴らしかった”といったありがたい言葉を与えてくれたりしつつ、何度も快活に笑った。
 俺は自分の西東京への理解の足りなさに、むしろ自ら感謝した。

 で、『サイレント・ダイアローグ』だが、これが実に刺激的だった。
 銅金さんと藤幡(正樹)さんの、“植物に歩行訓練をしてもらって、そろそろ歩いちゃいかがですか?と呼びかける”インスタレーションや、マイケル・プライムの“椎茸の生体電位を音響化する”作品など、植物が21世紀の主役にふさわしいことを証明するマッドな展覧会になっている。
 俺も、もう一回は必ず行くと思う。

 乗り間違え続けた電車の中で読み終えたのは茂木(健一郎)さんと松岡(正剛)さんの対談、『脳と日本人』
 タイトルがあまりに偏っているのでもったいないが、中身は二人が集中して世界と日本と人類を語った本。
 それにしても松岡さんの不動の知性が凄い。
 ほとんど巌(いわお)のごとく、峻厳で大きい。正確でゆるがない。
 逆に言えば、相手が松岡さんだからこそ茂木さんの若さがよく出た対論でもある。海底の巨岩の前でゆらぐ海藻のイメージ。

 対論といえば、『月刊現代』今号で中島(岳志)さんが小林よしのり氏に直接対話を呼びかけていて、編集部がつけたタイトルこそ「小林よしのり氏にガチンコ討論を申し込む」と多少扇情的だが、読んでみると内容は実に冷静で論旨明快であった。是非、この対論を実現してもらいたい。読みたい。
 
 さて、本日の締めは「アニマルプラネット新年会」だったのだが、時間があまったので渋谷のうまい珈琲屋で、次の文芸漫談のネタ本であるデュラス『愛人』を読む。20年ぶりの再読。
 隣にインド系の青年が来て、ノートブックでしばらく株操作らしきことをしていたのだけれど、いつの間にか電子辞書を出してのっぴきならないムードを出し始める。
 ちらりとノートブックの画面を見ると、日本語のニュースサイト。
 
 「スリランカでテロ、大臣死亡」といった見出しがついている。

 青年はこのニュースを必死で解読しているのだった。
 あ、この人の国の話なんだ、と思ったときの異様な感覚が今日は忘れられない。