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投資家向けサイト: 雪だるま式に加速するPS4、それを傍観するMS

クラウドと企業向けのソフトウェアに集中するため、MSはハードウェア事業から距離を置きつつある。MSが何に集中しているのか、それは最近発表された6月のNPDコンソール販売実績に対する飾り気のないレリーフに示されている。Xbox Oneの普及は遅れている一方、PS4は『雪だるま効果』を膨らませ、勝利しつづけている。

NPDのレポートは非公開だが、コンソールメーカーはすでにそれらを受けとっている。Xbox Oneのマーケティングを統括するAaron Greenberg氏は、Xbox OneとPS4の戦いでなぜMSが敗北を続けているのか、その理由の一端を明らかにしてくれている。


Xbox OneとPS4の戦い。敗北を目の当りにするMS

Greenberg氏はこうツィートしている。「6月の#NPDでの#XboxOneの売上は対前年比で+51%だったし、#E3週で一番売れたコンソールで+79%も売上が伸びた。ワオ!だけどPS4のバットマン同梱版は思ったとおりに手ごわかった」、と。このツイートの最後の一文が全てを語っている。

3rdパーティ・パブリッシャの間で作品丸ごとの独占は廃れつつある。彼らは最近では、両方のハードにコンテンツをオープンに供給しようとしてきた。その一方で時限独占の形で、MSとソニーに今もまだ独占コンテンツを販売している。

売れている方のコンソールにコンテンツを提供する際には、価格は常に安くなる。セールスが小さければ、ゲームーメーカーは損をするからだ。例としてBatman Arkham Knightは6月にセールストップに輝いたが、この作品ではソニーのPS4独占の機能が提供されていた。

VGChartzは完璧とは言い難いものの例としては使える情報源だが、Xbox OneとPS4の販売台数はそれぞれ13.1百万台と23.8百万台とされている。Warner BrothersはBatman Arkham Knightを開発したが、もしも彼らがXbox One向けの独占コンテンツを作ったとすれば、この23.8百万台に背を向けることになってしまうのだ。

逆にPS4に提供するのであれば、うんざりさせるユーザーはぐっと減る。MSから見た場合、コンテンツの独占にこれまでよりもっと多くの費用がかかることを意味する。6月の両者のセールスの差は、そこから全て生じているように見えたとしてもだ。

この『雪だるま効果』は、Xbox OneとPS4のセールスの差がいつか逆転するのではないかという希望を最終的に終わらせるかもしれない。


MSは撤退できない。今は。

MSは今時点では、Xbox Oneを棚からひっこめることはできない。たとえハードウェアから距離を置きつつあるように見えたとしても。だがそれは、PS4との戦いで勝つために、MSが莫大な資金をつぎ込み続けるということにはならないのだ。

MSは全ての部門を巻き込んだ大きな変革の途上であり、そのポケットはハードウェア事業にダラダラと垂れ流せるほどほど深くはないし、勝負に勝とうとコンソール事業にキャッシュをダダ漏れさせ燃やし尽くす余裕はない。

MSはXbox Oneのロンチを失敗させ、セールスを後押しするにはカネをばら撒く以外に手だてがない。同社はKinectを切り捨てて価格を下げ、後方互換性を追加することで本体のセールスを増やそうとしてきた。これらの機能はいずれもXbox Oneのセールスを改善させたが、PS4との巨大な格差をひっくり返す役には立たなかった。

Xbox One対PS4の戦いで、独占コンテンツを囲うための費用はこれまでよりずっと吊り上っている。PS4と同じ土俵で戦うためにという理由で、自社の持つリソースをコンソールのために割くつもりは、MSにはさらさらないのだ。かつては同じ土俵での戦いがあった。それほど昔のことではないのだが。


雪だるま効果という失敗に直面するMS

Xbox 360はPS3に対して良いスタートを切った。それには多くの理由があったが、中でも最も重要だったのは価格が安いことだった。しかし今回はPS4にその利点を奪われてしまった。PS3はXbox 360よりもはるかに高価だったし、ゲーマーはPS3にプレミアムを支払う用意はできていなかった。

MSはXbox 360の成功に倍賭けした。MSはCall of DutyのActivision-Blizzardを自陣営に引き入れた。マリオを別にすれば最も強力なシリーズだ。そしてActivisionを説き伏せ、Xbox 360向けのコンテンツを真っ先に発売させるようにした。

シリーズで最も売れた作品であるBlack Ops向けのDLCは、Xbox 360にPS4よりも1ヶ月も早く発売された。これが時限独占であり、セールスを見ればその効果は歴然だった。Black OpsはXbox 360向けには千二百万本も売れたのだ。PS3ではわずか3百万本に留まった。

ソニーはMSから戦い方を学んだ。ソニーはスクリューを逆回転させ、Xbox One対PS4の戦いを完敗から遥かに遠い地点に押し戻した。Arkham Knightの独占コンテンツにお金を払うことでPS4はXbox Oneに競り勝った。マーケットで大きな役割を果たすとMSが考えた通りに。

E3 2015において、MSはXbox Oneに後方互換性機能を追加すると発表し、Xbox 360のゲームを多数持っているユーザにXboxブランドに留まる理由を与えた。Xbox Oneの売上は爆発的に伸び、その週の間MSはソニーを売上で上回った。珍しい出来事だった。


いくつもある、雪だるま効果が生じた理由

Xbox One対PS4の戦いでソニーが雪だるま的な成功を収めたのは、ただ価格が低かったからだけではない。雪だるま効果がが生じたのはもっとずっと多くの理由があり、そのうちのいくらかは市場の自然なダイナミクスだった。

現代のAAAゲームでは、あるプレイヤーがPS4を使っていた場合、Xbox Oneを使用しているプレイヤーと対戦することはできない。あるハードを使っていそうなフレンドが多くなればなるほど、まだどちらも買っていないゲーマーに対して、それだけそのコンソールは魅力的に映るようになる。

ブランディングも一役買っている。多くの人々がPS4を持つようになれば、コンソールやその1stパーティ製ゲームは話題になりやすくなる。Uncharted 4はHalo 5よりも遥かに頻繁に話題に上るかもしれないが、それはプレイしようとする人が多いという単純な理由による。どちらのコンソールも持っていないがそのうち買おうと思っている人に、そのゲームを強く印象づけることになる。

雪だるまを反転させるには大変な努力が必要だ。3rdパーティの売上が勝負を決めるコンソール市場では、努力とはすなわちキャッシュだ。コンソール市場でさらなるキャッシュを火中に投じることに、MSはなんの興味も示さなかった。

Steve Ballmer氏がMSの中に築き上げたハードウェア事業を、Satya Nadella氏は良しとはしていない。彼はすでにその大半を切り捨て、残りを隅に押しやってしまった。

MSはゲーム事業を続けようとするだろう。Xboxブランドには維持するだけの価値があるからだ。だがMSは、ホームコンソール市場で生じた雪だるまを押しとどめるために努力するつもりなどない。E3 2015においてXbox Oneはお手頃で陽気だったが、PS4のチームは大枚を叩いてCall of Duty: Black Ops 3のDLCをPS4に先に登場させたのだ。

劇的な変化が生じない限り、Xboxのファンの心を慰めることは起こりそうにない。6月のNPDの数字はそれを端的に示している。Arkham Knightは決定打だったのだ。そしてホリデーシーズンに、今度はCall of Duty: Black Ops 3が決定打になるだろう。雪だるまは転がり始めたのだ。そしてSatya Nadella氏のチームは手を打とうとしているようには見えない。


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