3DSの大作の成功が導く、任天堂の没落 | みらいマニアックス !

3DSの大作の成功が導く、任天堂の没落

誰もが予想していた通りに、Wii Uの厳しいセールスに対する警告がとうとう発せられた。そして任天堂はWii Uが大失敗したことを基本的には認めている。PS4とXbox Oneには非常な勢いがあり、Wii Uを復活させることはおそらく不可能だろう。

残念なことに、同社の携帯機である3DSが大ヒットしたことで、Wii Uのこの憂鬱な大失敗によっても任天堂は戦略の見直しを喫緊の課題とは思わないだろう。ファミ通の最新情報の、年明けのゲーム業界の二日酔いの中でのセールスは、任天堂の変化を妨げているのが何なのかを示している。


今週、コンソールとソフトウェアの売上は新年の高水準から一直線に減少したが、カービィの新作は驚くほど鮮やかなデビューを飾り、日本での3DSの売上は22万5千台に達した。

カービィは年老いた少々退屈なフランチャイズで、北米ではその輝きのほとんどを失ってしまった。だが任天堂のホームである日本では、この懐古派御用達のキャラクターは依然として携帯機のホット・ナンバーに登場している。同じ週に3DSポケモンの新作の日本での売上は、非現実的ともいえる410万本を突破した。3DSモンスターハンターの新作も340万本に迫っている。どうぶつの森は400万本に達した。

家庭用コンソールでの手ひどい大失敗にもかかわらず、任天堂は携帯機によっておカネを刷りまくっている。グラフィックスを向上させ新しいネタをいくつか導入した、マンネリで型通りの続編によって古いフランチャイズにミルクを補給しつつ、これまでの数十年来のテーマをリサイクルしているのだ。この戦略は懐古好きな日本では例がないほどに上手くいっており、米国市場でもかなり上手くいっている。


問題はこうだ。Wii Uが手ひどい失敗に終わったのは、これまでに任天堂が得意としてきた中規模のカジュアルな作品を、タブレットとスマートフォンのゲームが横薙ぎにしているためだということだ。家庭用コンソールというビジネスで生き残るただ一つの方法は、巨大でオペラ的な作品、広大な舞台をもち写真のようにリアルなグラフィックをもつ作品を開発することなのだ。

明らかに任天堂は、携帯機市場という安全な子宮の中に逃げ込んで、90年代~00年代という平穏の日々を永遠に生き続けることができると思い込んでいる。だがそうはいかない。スマートフォンやタブレットは手始めに任天堂の家庭用ゲーム機に対する需要を殺してしまったが、携帯機市場を無傷のままにしておくつもりなどないからだ。

タブレットのゲームは飛躍的に洗練され、奥深いものになりつつある。米国のモバイル・ゲーム市場はClash of ClansやGame of Warのような、比較的深いストラテジ/シミュレーションゲームに徐々に引き継がれつつある。Marvel War of Heroesのような中毒性の高いカードバトルゲームの収益も勢いを増している。MinecraftのようなCo-Opの作品は、巨大な仮想コミュニティという卵を産んでいる。これは任天堂が、3DSの作品で作り出すやりかたを学んだことがないものだ。3DSの作品はもともとシングル・プレイのゲームとして設計されたものだからだ。Angry Birds Go!は、任天堂のマリオカートの最重要な要素をコピーするやり方を、モバイルゲーム・メーカーが驚くべき活発さで学び始めたかを示している最近の好例だ。


日本の携帯ゲーム市場は時計が止まったままだ。

昔々の大ヒットシリーズをくり返し復活させ、何度も何度も大規模な量で売っているだけなのだ。モバイルゲームが品質と光沢の両面で絶え間なく進歩しているという事実から、任天堂の目を背けさせている。3DSの成功にそそのかされて、ゲーム専用のハードウェア/ソフトウェアという戦略に任天堂がしがみつき続けることについては、ほとんど疑いようがない。

そしてこのことは、長期的な成功を保証してくれる唯一の市場に進出することを妨げている。スマートフォンやタブレット上のフリーミアムのゲームだ。結果として、任天堂はフェイスブックを適切に活用し、仮想コミュニティを構築する方法を学んでいない。これはKingやSupercellのような企業の強みになりつつあるものだ。

日本のゲームの皇帝は、壊れたラジオのようにカービィやリンクという古代の儀式を繰り返すだけの、過去の生物へと成りかわったのだ。


NS: BGR  The 3DS’s blockbuster success could be Nintendo’s downfall


みらい的コメント:


フリーミアムが任天堂にとっての未来になるとは思わない。
専用ハードなくなるとも思わない。
日本の携帯市場はおそらく世界でも最も進んだ市場だし、そこで3DSが好調なセールスを続けているという事実は重要だ。


とはいえ3DSが任天堂の古めかしさをそのまま形にしており、その成功が任天堂の進化を妨げているという指摘はそこそこ当たってはいるように思う。
しかしそれを気にするのはゲーマーだ。キッズはそんなことを気にしはしない。

プレイに時間を要する超大作と短サイクルなカジュアルゲームの二極分化は、ゲームの世界で起こっているいくつかの極めて重要なメガ・トレンドの一つだ。
キッズの世界ではこの分化は進まないが、オトナの世界では今後も進む。


結局、誰の方を向いてこれからビジネスをしていくつもりなのか?
任天堂に問われているのは、まずはそこなのだと思う。