Wii U: 逆ザヤについてちょっと考えてみた | みらいマニアックス !

Wii U: 逆ザヤについてちょっと考えてみた

前エントリ「任天堂IR: 2012年度Q2。年明からが本当の勝負。逆ザヤ解消は14年度以降?」の※欄で、Wii Uの価格の中身はどうなっているのか?という質問があった。
確かにこれはわかっているようで、案外わからないポイントだ。これについてちょっと考えてみたので、メモしておく。

始めに断っておくと、特に情報源を明記した点以外、本エントリは全て本ブログの推定かつ妄想だ。
これはアナリストのようなプロであっても確実な情報を持っていない類のものなので、その点についてはご留意いただきたい。


さて、まずリークによると、Wii Uの製造原価は$180程度らしい。
(http://www.forgetthebox.net/mag/culture/forum-m/rumor-wii-u-price.php)

次に任天堂の決算によると、2011年の材料費とそれ以外の費用はこのような比率になる。

材料費 430,740 (63%)
材料費以外 216,912 (27%)



材料費からWii Uの価格をマークアップすると$286となる。北米での販売価格$299から、メーカ卸値は$225程度と思われる。ここから計算すると$61程度の逆ザヤとなる。

2011年の決算をそのままあてはめると、Wii Uの価格の内訳はこんな感じになるはずだ。

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シンプルに考えると、Wii Uの価格内訳はだいたいこんな感じになるが、実態はこれよりもずっと厳しいに違いない。たとえば、iPhoneの原価構成を例に取ってみよう。

製品のデザイン、ソフトウエア開発費用が58.5%、部品費用が21.9%を占め、このほか、韓国企業の利益(4.7%)、中国を除く労働者の人件費(3.5%)、アップル以外の米国企業の利益(2.4%)、 中国での労働者の人件費(1.8%)(以上合計92.8%)などだった。(http://n-seikei.jp/2011/12/iphone.html)

デザイン、ソフトウエア開発費用が費用の過半を占めるが、これは製造の前に発生する。会計上はこの費用は発生した年で処理されるが、内部の原価管理は製品別に行われている(に違いない)ため、この費用は発売前に消滅したりはせず、発売されたWii Uにのせられていく(はずだ)。

発売時点ではWii Uがライフサイクルを通じて何台売れるかは分からないため、実際に出荷されたユニットにこの費用を割り振るしかない。だからロンチ年のWii Uは極めて原価が高くなっているはずだ。Wii Uの開発は2009年頃からおこなわれているが、この4年分の開発費がいきなり全部初年度のWii Uにのってくるためだ。

だがユニットが売れていくに従い、当初発生した費用に対する分母が大きくなり一台あたりの費用は急激に減少していく。例えばロンチ前に発生した費用が10億円、初年度に本体が10万台、次年度には90万台売れたとすると、初年度には1台あたり1,000円であった原価が、次年度にはわずか100円にまで下がる。これはただの例だが、似たような現象がWii Uで起こることになるのではないか。

上の例では、将来的に販売されるであろうWii Uの全てのユニットで、当初に発生費用を負担する格好となっているため、一台あたりでは$22で済んでいる。だが現実には、ロンチ後の初期には、少ないユニットにこの費用を負担することになるため、$22よりも遥かに高くつくことになる。

iPhoneの内訳の推計では、デザイン、ソフトウエア開発費用が58.5%となっている。現代で最も高度なデザインとソフトウエアをもつハードの1つであるiPhoneと、ある意味でいちゲーム機に過ぎないWii Uが、「デザイン、ソフトウエア開発費用」の比率において同じだと仮定することは、あまり適切ではないかもしれない。
だが仮にiPhoneの半分程度の比率であっても、Wii Uの一台あたりの研究開発費は軽く$100を超えてしまう(この場合、コストは一台あたり$373)。1/3であっても$64だ(この場合、コストは一台あたり$328)。いずれにせよ、$22よりはずっと高くなるだろう。

広告宣伝費についても同じことだ。任天堂はWii Uの露出を極端に絞っているが、それでも発売前に一切広告を打たないことはないだろう。その費用も同じように処理されるとすれば、これも初期のユニットの原価をアップする要因になる。


そういったことを加味すると、原価はこんな風になるのではないか。

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決算の説明で、プラットホームとしての収支は来年度中に黒字にするとのことだったが、それは材料費の低減、広告宣伝費の絞りこみ、研究開発費の配賦の低下といったことを通じて、売価とコストを近付けていくということだ。

来期の期末のWii Uはこんな感じになっているのではないだろうか?

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このくらいであれば、ソフトが売れればトータルの収支はプラスに転じるような気がする。

それにしても、なかなか厳しいものだ。
もちろんこれは全て本ブログの推定であり妄想なのだが、さりとてこれ以上ガッツリ改善できそうな点は、それはそれでなかなか思いつかない。そしてそうこうしている間にも、市場はどんどん変わっていってしまうのだ。任天堂経営陣の苦労は、まさに思うべし。


ホリデーシーズンのソフト売上がどうなるかが、まずは最初のハードルになる。
北米のアナリスト諸氏から高い評価を受けているラインナップだが、どう動くのだろうか?