Gaikai買収: クラウドによる後方互換性。PS系の過去作品はプレイできるか? | みらいマニアックス !

Gaikai買収: クラウドによる後方互換性。PS系の過去作品はプレイできるか?

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PS1・PS2・PSPの過去作品をクラウドでプレイすることは可能か?という疑問に、Digital Foundryが答える。


クラウドでの配信は、困難な課題に対する興味深いソリューションだ。ゲーム業界では、過去の作品の再利用はキャッシュ・カウ(現金を絞れる牝牛)とかちょっとした小遣い稼ぎ的なものだとみなされている。 ソフトウェア・エミュレーションを行うのであれば、PS3やPS VitaはどちらもPS1やPSPのタイトルを実行するのに十分以上の性能があるが、プレイに先だって最大で1.4GBにも上るサイズのデータをダウンロードする必要があることから、プレイアブルデモとしては使いにくい。これはユーザーがこれらの過去作品を購入するのを妨げ、セールスを非常に低いものにしてしまうだろう。この意味でクラウドには多くのメリットがある。PS3やPS Vitaのどちらからでも、過去作品の全てに気軽にアクセスすることができるし、さらにプレイアブルデモを全ての作品に設けることができる。単にプレイ時間に制限を設けるだけでよいからだ。

実際のところ、PS1やPSPのエミュレーションは公園を散歩するくらいに簡単なことだ。本当にチャレンジングなのはPS2だ。(初期のPS3に搭載されていた)PS2へのハードによる後方互換性をライフサイクルの早い段階で廃止したソニーは、ソフトウェアによってこの挑戦的なグラフィックス·シンセサイザチップを完全にシミュレートしようとに苦労を重ねてきた。だがエミュレートできたのはPS2ゲームのほんの一部で、これらはPlayStation Storeからダウンロードすることができる。クラウドはこのプロセスをシンプルで、はるかにアクセスしやすいものにできるかもしれない。

まず初めに、ソニーがパートナー(Gaikai)のデータセンタの既存のハードウェアを利用するものと仮定しよう。これはもちろんPCベースだと考えられる。なぜなら、特注のハードウェアをロールアウトするのは、遥かに高くつくからだ。つまりソニーのハードウェア投資はゼロでよく、またこれまでのPS1、PSPのエミュレータをPCベースに作り直すのも簡単なことだ。オープンソースで開発されているPCSX2エミュレータ(PS2のエミュレータ)が、ほとんどのPS2タイトルを高い精度で実行できていることを念頭におくと、ソニー自身のコードはそれよりもさらに完全に動作するだろうとしか思えない。

クラウドというコンセプトは、これ以外の側面からも非常に理にかなっている。Vitaは前世代機PS2のエミュレーションをするには性能が不足しており、PS2タイトルを動作させるのであればポートし直さなければならないが、このやり方であればVitaでもPS2を動作させることが可能だからだ。

前世代機を対象としたクラウドというアプローチはまた、イメージ品質という問題を緩和することにも役立つ。ゲームの映像をクラウドシステム上で効率よくエンコードすることは大変難しいのだが、古くてビジュアルがあまり複雑でないゲームであれば、問題を解決するのは遥かに簡単だ。いくつかの例外を除けば、PS2タイトルの解像度はたった640×448に過ぎないが、これはHDストリーミングを必要としていないことを意味する。一般的な詳細レベルはこれよりずっと低いが、これは帯域幅についての要求がさらに低くなるすることを意味している。帯域幅とイメージ品質とのバランスを正しくとることは大変容易で、PS2タイトルをエンコードする独自のテストによれば、HDリマスターと比較しても、大半のゲームであれば1.5Mbps~最大2Mbpsもあれば十分以上であることが分かっている。

だが落とし穴もある。まず第一に、エンコードされたイメージの品質は非常に高いものでなければならない。低品質でエンコードされた420pのイメージを720p(またはユーザの設定によっては1080p)へアップスケーリングしても、イメージ品質が低いことを強調してしまうだけだ。これは低ビットレートのデジタルTVのチャンネルHDTVで再生すると、恐ろしくみっともなく見えるのに似ている。

第二に、少なくとも熱心なゲーマーにとっては、レイテンシは全体を台無しにしかねない要素だということだ。オリジナルのハードでプレイしたのと完全に同じようにプレイすることは不可能だということは、いずれにしてもじきに分かるだろう。クラウドゲーミングの基本は、PC上で動作するバージョンは30FPSでなく60FPSでシミュレーションを実行して入力のレイテンシを低く抑え、稼いだ時間をエンコードとデコード、さらに伝送による遅れの軽減に当てることにあるのだ。

クラウドシステム向けの過去コンソールのエミュレータは全て、プレイヤーのコマンドをできるだけ早く、オリジナルのハードよりも早く処理できるように構築されている必要がある。だがこれを考慮に入れ、さらにクラウドのレイテンシについて全体的な改善が行われたとしても、PS2のタイトルにはもともと60Hzで動作していたタイトルも多いため、このような場合にゲーム体験はいずれにせよオリジナルよりも低下してしまうという問題は残る。本当の問題は、タイムラグがはっきりと認識でき、ユーザの多くが気づくようになるのはどの程度なのか、ということなのだろう。

このストーリには他にもまだいくつかの疑問点はあるものの、うまく実装されれば、これは膨大で大インパクトなこれまでの一級の作品の山を間違いなく活性化し、PSNを大きくブーストする可能性があるPlaystationの過去の作品の遺産という巨大なライブラリーが便利で手軽にプレイできるようにするということは、ゲーマにとっては言うまでもなく、ソニー自身にとっても3rdパーティにとっても、抵抗できないほどの魅力がある。さらにh.264がデコードできるあらゆるデバイスが活用できるということも素晴らしい点(a winner)だ。パーティに参加できるのはPS3やVitaだけではない。Bravia TVやPS Certifiedなスマートフォンやタブレットもまた、ストリーミング・ゲーミングを実行できるターゲットになるのだ。


NS: Eurogamer
http://www.eurogamer.net/articles/digitalfoundry-in-theory-how-cloud-could-run-playstation-back-compat-games


みらい的コメント

1.5Mbps~最大2Mbpsとは驚き。これならば3G回線の実効レートでもカバーできる範囲に近い(下りでだいたい0.9~3Mbpsくらいらしい)。無線はレイテンシが大きいのでFPS、格ゲ、音ゲといった特に高いフレームレートが要求されるゲームは向かないだろうが、それ以外は普通に楽しめてしまいそうだ。XperiaでGT4やエスコン5をプレイできるとか、改めて考えると相当なインパクトがある。

また、帰りの電車でプレイした続きをそのままリビングのBraviaでプレイするとか書斎のVaioでプレイするとか、そういったマルチウインドウでのプレイも可能になるのだろう。

なんというか、とっても未来な感じだ。