任天堂: 2012 E3 アナリスト Q&A セッション | みらいマニアックス !

任天堂: 2012 E3 アナリスト Q&A セッション

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任天堂の2012 E3 アナリスト Q&A セッションの質疑が公開された。
例によって非常に長く、持って回った言い回しが多い。みらい的に簡潔な一問一答にサマリーしてみた。


Q01:Wii Uの価格設定は。ハード単体で利益を出すのか、ソフトで稼ぐのか?
A:発売後すぐに値下げを行わないでよいような、リーズナブルに感じてもらえる値段で発売する。

Q02:デジタル配信に対する小売の反応は?
A:概して前向き。

Q03:蓄積した剰余金をもっと前向きにつかってはどうか?
A:個別の案件についてはここでは言えない。コンテンツの独占権に大金をつぎ込むことは考えていない。

Q04:マルチプレイヤー、市場、コネクティビティの点で、iOSやAndroidとどう戦うのか?
A:iOSやAndroidには追随しない。ゲームを面白くする目的に限った閉じたネットワークを想定。Miiverseはその形。

Q05:少額課金、会員サービスはどうなるか。iPad、iPhone、Android等からのオープンな接続は想定するか?
A:技術的には少額課金やF2Pは可能。オープンにはしない。

Q05:Wii Uロンチ時点でのデジタル販売タイトル数は?
A:メーカーの考え次第。

Q06:MBOをするか?
A:MBOは想定しない。株価は不適切な水準であり、今後手を打っていく。

Q07:F2Pをするか?
A:F2P自体は否定も肯定もしないが、現時点では想定していない。

Q08:Wii Uが失敗したら困るが?
A:そうはさせない。

Q09:Wii Uの発売時期は。ゲームパッドはいくつ同梱されるか?
A:同梱物について、今は言えない。

Q10:円高対策は?
A:ドル建て払いにした。ユーロ払いは受け入れられていないので、ユーロ安の影響は避けられない。円高は続かないと予想。

Q11:スペック詳細について聞きたい。PS3やXboxと比較した性能差は?
A:ゲームパッドにコストをかけ、処理性能のコストは落とした。だが潜在性能的には上で、エンジンのチューニングが進めば他ハードを上回るだろう。HDDは外付け。

Q12:新興国市場への対応は?
A:将来性は認識しており、現在は準備段階にある。

Q13:MSのSmartGlassはWii Uの差別化要素を潰したのではないか?
A:ゲームパッドにはボタンがあるので差別化はできている。ゲームパッドの低いレイテンシも差別化要素になりうる。

Q14:デジタル配信によって収益性は向上できるか?AppleTVをどう考えるか?
A:収益性は向上できる。AppleTVは製品がセパレートだが、Wii Uは統合されておりこれで差別化する。TVは簡単にはリプレースされないので、AppleTVはスロースタートするだろう。

Q15:Wii Uのマーケティングは?非対称的なゲームプレイはいつ頃から本格化するか?
A:マーケティングについては今は言えない。非対称的なゲームプレイはいつ頃から本格化する時期はわからない。

Q16:宮本氏はWii Uのタイトルに関わったか?
A:関わっている。

ニュアンスも含めた正確な理解を求められる向きは、公式の参照を推奨する。
(http://www.nintendo.co.jp/ir/library/events/120606qa/index.html)


みらい的コメント

興味深い点が多い。

まず本ブログの予想した、Wii Uはゲームパッド別・込みの2SKUで発売されるという予想は外れた。
公式に「今はっきり申し上げられるのは、本体と必ずWii U GamePadをセットにしないと、これはWii Uになりませんので、その点について保証しているという点だけです。」とのコメントが出た以上、これはない。

かなり無理筋の予想ではあったので妥当な結果だが、価格設定の自由度は大きく減った。
本ブログの推定では、Wii Uの原価(損益分岐点の価格)は$350。これが正しいとすれば、仮に$250で売った場合の損失は$500億円弱となる。これは厳しい。小売価格は$299/3万円の可能性が高くなったと思う。

また、明らかに明確な答えを避けた質問や、現時点で具体的な計画がないことを明らかにした質問は重要だ。

明らかに直接的な答えを避けている質問は、Q01(ハード単体で利益を出せるか)、Q09(Wiiの同梱内容)、Q11(相対的なスペック)、Q15(非対称的なゲームプレイ)あたりになるかと思う。ごく単純に考えると、任天堂は、Wiiの価格設定についてはまだ悩んでおり(Q01、Q19)、競合機とスペックに差がないこと触れられたくないと考えており(Q11)、非対称的なゲームプレイの普及について明確な目途は持っていない(Q15)ものと思われる。
また現時点で具体的な計画がないことを明らかにしているのは、Q05(マイクロ課金)、Q07(F2P)、Q12(新興国市場)あたりが該当するだろう。やはりごく単純に考えると、新しいビジネスモデルや新しい市場への展開については及び腰なのだと思われる。

逆に他のネットワークやデバイスへに対するオープン化はっきりと拒否しており、方針が固まっていることが分かる。またSmartGlassやAppleTVに対する差別化についての答えも明確で、Wii Uのコンセプトが十分に練られたものであること、任天堂がそれに強い自信をもっていることをうかがわせる。

全体として見ると、変わる市場や攻め込む巨大なライバルといった現状を、マリオのパワーで正面突破するという印象を受ける。成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。実際、アナリストらの間でも予想は割れている(前エントリ「Wii U: 北米アナリストら。価格は$299との意見が主流」)。

だがその一端は、近く(夏頃?)に発表されると思われる、Wii Uの価格に見ることができるだろう。