日韓慰安婦合意の深刻さを認知されていない方のために、ショートですが。

今回の日韓慰安婦合意ですが、これは河野談話に比較しても遥かに深刻です。

まず、河野談話は、極めて巧妙に日本が凄く悪かったと誤認させる内容になっていますが、よく読むと日本政府の責任を明確に認めているものではないのです。

河野談話でも強制連行を直接官憲が加担したとは記していませんし、そもそも白馬事件などを想定したもので、軍や政府に属する個人の犯罪について記されたものです。(官憲という言い方は軍や政府そのものを指す場合もありますが、個人を指す場合もあるためです。)

韓国での軍の組織的な強制連行を認めているかのように捉えることのできる今回の談話は河野談話よりはるかに悪質で荒唐無稽で禍根を残します。

河野談話では、
「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」

ですが、官憲等が直接これに加担したのが、『慰安婦の募集について』であって、「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例」に関与したかは分からない玉虫色の表現です。私たちが、あくまで官憲が関与したのは慰安婦募集のための自由募集におけるものであると言えば、問題のない話なのです。

また、当然のことながら、その本人たちの意思に反して集められた事例の被害者がどの国の人か特定されていませんから、どの国もこの表現だけで訴えることはできません。更に言いますと、甘言も強圧も、お金を借りて、やむなく風俗で働くことになってしまった現代人でも同じ目にあっているでしょう。

ところが、今回の日韓慰安婦合意では、韓国人を対象にして、かつ歴史上初めて軍による不法行為を認定しました。不法行為が強制連行であるかは明言していませんが、いずれにせよ不法行為は損害賠償の対象になります。

今回の合意文書は「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。」とされました。

これは、どのように解釈しても当時の軍が、刑法上の名誉毀損罪を犯し、当然に民法上の名誉毀損としての不法行為をしたことになります。

今まで政府の不法行為による賠償責任を認めていなかったので、当然に損害賠償は支払えませんから見舞金などという形で支出されてきました。しかし、今回、初めて、損害賠償の求償権が存在していたことを明確化してしまったのです。

ただ、無論、「求償権は、基金の設立で損害を受けたと考えられる被害者の代表の地位にある韓国政府と合意した基金の設立で弁償し、損害賠償はこれと相殺する」ことは可能であり、求償権がこれで消滅すると法律上は考えられます。

しかし、仮に、求償権を持っていた人々がアメリカなどで提訴し、「損害賠償額」の積算が10億円を超えており、相殺できていないとアメリカのどこかの州の裁判所で認定されたなら、不足分を請求されることになるでしょう。

これは無論、最初は、今回の合意で作られた基金に対する求償権者からの請求になりますが、基金が当然不足しますので、韓国政府は、「韓国政府が、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。」とした合意は、あくまでも制度の話であり、被害額の話ではないと逃げて、日本に請求してくることでしょう。