絵描きはつらいよ | アトリエてらたより

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本来絵描きというものは自由な職業である。
父「寺田健一郎」遺作展時に制作された画集のサブタイトルも
「奔放に生きた画業35年」とある。
その本の年表を見てみるとこれが実によく仕事していたのが分か
る。

しかし働いていたのではなく「働かされていた」というのが現実
、勿論マネージャーである母にである。

父の絵のタイトル「アルル」「ドンキホーテ」等沢山スペインや
ヨーロッパ旅行でインスパイヤを受けて描いた物が多い。
母と長期ヨーロッパ旅行に行ってスケッチされたものが元になっ
ている。父はさぞかしヨーロッパに住みたいとばかりに楽しんで
いるかと思いきやそうでも無かったらしい。

博多が大好きすぎたのだ。

ヨーロッパにスケッチ旅行にでかける。ほっとくと朝からワイン
を飲みまくり遊ぶ事のスケジュールを組み出す父に母はノルマを
与えた。

「ノルマ」
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会社の売上を一定以上確保する、特定の日までに一定量を製造・生
産する、競合他社との競争に勝つ、などといった目的を達成するた
めに、経営者などが労働者にノルマを課す。労働者にノルマを達成
させる意欲を高めさせるために、労働者に対しノルマ達成の褒美
(報奨金、昇進、昇給、海外旅行など高額商品の授与)を用意した
り、未達成の場合はペナルティ(解雇、減給、左遷、暴力・暴言な
ど)を与える場合もある。(ウキペディアより)
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サラリーマンやセールスマン、売れないバンド人、演劇人のチケッ
トさばき等で聞くあの嫌な響きの言葉である。

母は「スケッチを1日10枚!終わったら遊んでよし!」
というノルマを父に与えた。
$アトリエてらたより
「絵描きもつらいよ。のポーズin ローマ」

父は朝早く(これは得意)からせっせとスケッチを始め10枚描く
終わると「終わった~」と飲み食いに忙しく立ち回る。
数日はヨーロッパも楽しんでいた父もしびれを切らすようになる。
夜になると「翠(母の名)~博多はどっちや~」
母「あっち!」勿論適当に答える。
父その方向を向いて「あ~みんな中州でのみよっちゃろーね~ヨカ
な~」と言うようになる。毎晩。
$アトリエてらたより
「母の監視の元スケッチする寺田」


あまりに帰りたがるので母はまだ滞在予定が残るのに父だけ航空
券を変更し先に日本(博多に)に返した。それほどうるさかった
という。で、母一人で切り詰めながら残りの日数旅行を楽しんだ。

父が福岡に帰ってすぐに母の宿泊しているホテルに国際電話が来
た。「翠~やっぱ博多はヨカね~!今中州でのみよったい!」
と「ヨーロッパお帰り飲み会」中州から生中継した。

母「そんな金あったら金送れー!」と一括し電話を切った。

90年代のドラマのような台詞はすでに母が使っていたのである。