結婚してから数年間、というか

つい先ごろまで、私は

夫(英国人)の実家に行くたびに

率先して食事の後の

片づけを手伝ってまいりました。

 

実際それくらいさせてもらわないと

申し訳ないほどのおもてなし

毎回受けているので、

それはよかったのでございます。

 

本来ならお食事作りの時点から

義母をお手伝いしたい気持ちではあるのですが

私と義母はその・・・何と申しますか・・・

 

私は正直実家住まいだった頃から

家事の手伝いとかあまりしなかった

ぐうたら娘ではあったんですけど

まあたまには台所で

母の隣に立ったりもしたんです、

で、そういう時のわが母というのは

効率と機動性を第一とする

厨房の鬼あるいは不動明王

(『無駄口は叩くな!手を動かせ!』

『サー!イエスサー!』

『働かないならお勝手から出ていけ!』

『サー!イエスサー!』)、

対してわが義理の母は

深窓の令嬢の面影を残した

おっとりしたご婦人であるため

調理における速度というものに

あまり重要性を見出さない方で

(『お義母様、ジャガイモ洗いますか』

『あら、Norizo、嬉しいわ、でも

ジャガイモ洗いは大変だから・・・

あ、ねえ、このお花見てちょうだい、

昨日のお客様から頂いたの、可愛いでしょ、

あ、ジャガイモね、だから

他の仕事をして頂戴、そうね、たとえば・・・

ちょっと待ってね、えーと・・・』

『ジャガイモ洗いました、切りますか』

『あら、ありがとう、助かるわ、じゃあそうね、

ジャガイモをどう切ってもらおうかしら、

あ、ところでジャガイモを洗って

手は荒れていない?私この間

とてもいいハンドクリームを見つけたのよ、

必要だったら言ってね・・・あ、ジャガイモね、

うーん、今日の御献立からすると・・・』

『とりあえず皮を剥いて水にさらしました』)、

結果どうもこう私が義母を『追い立てる』

みたいな感じになっちゃうんですよ。

 

しかも冷静に状況を鑑みて

義母は私のこうした『お手伝い』に少々

迷惑気な表情さえ見せているというか・・・

 

楽しく映画のDVDを見ていたら

義理の娘(悪気ゼロ)がやって来て

「お義母様、こういうのは『倍速』で見ると

時間が短縮できていいんですよ、

役者の声と音楽が

ちょっと甲高くなりますけど」

とプレイヤーの設定を

変えてくれちゃった、みたいな・・・

 

私ってやはりガサツなのかしら・・・

 

色々考えて私は夫の実家においては

『食事の支度のお手伝い』からは身を引くことにし

(私が『ひとりで』食事の用意をすることはある)

(その際は義母には他の部屋でくつろいでいただく)

かわりに食事の後に山と積まれる

汚れた食器の皿洗いを

引き受けることにしたわけです。

 

それはそれで本当に私としては

問題なかったのでございます。

 

義母は私が皿洗うをするたびに必ず

「助かるわ、ありがとう」

と言ってくれていましたし、

義父も義弟も夫もお礼を言ってきましたし。

 

晩餐の後、夫の家族は暖炉のある客間に集って

各自好きなものを飲みながら談話するのが

常なのですが、夫は客間に行く前には毎回

台所の流しの前に立つ私のそばにやって来て

「僕も客間に行っていいですか?

君がお皿を洗ってくれているのに何ですけど。

でも君がそうやってお皿を洗ってくれるから

僕は両親と余計に話をする時間が持てるわけで

・・・僕と両親は君にすごく感謝しているんです」

 

そんなことを言ってもらえたら

それは私だって悪い気はしない。

 

この分業体制に私はまったく

不満はありませんでした

・・・義弟その2が結婚するまでは。

 

違うの、義弟その2の配偶者が

皿洗いをしないとか手伝いをしないとか

そういう話じゃないの、

彼女はそういうお嬢さんじゃないの、

むしろ気配りも家事も得意な人なの。

 

義弟その2結婚後のある日、

夫の実家に夫の兄弟と

その配偶者が勢ぞろいした時に

晩餐に使用された食器は

子供の分も含め12人分、

これは今日の皿洗いは大変だ、と

私が静かに作業手順を

心の中で確認しておりましたら

義弟その2がやおらすっと立ち上がると

汚れたお皿やグラスを集め始め、

あら、私ったら出遅れたわ、と

腰を浮かしたところに

義弟その2の配偶者嬢がにっこりと

「あ、お義姉さんは座っていてください、

今日の片づけは私と彼で担当しますから。

お義母様も座っていてくださいね」

 

流し台に食器が集まると

義弟その2が汚れ物を洗い

配偶者嬢がそれを拭いていき・・・

おお、なんという効率性、と

その風景を感心しながら眺めていたら

同じ光景を眺めていた義母がくるりと振り向き

「あのふたりが我が家にいると、

私は食事の後席を立つ必要がないのよ。

何かしようと思っても

先回りしてやってもらえちゃうの。

食後にこんなにゆったりできるなんて

私、結婚してからこれが初めてだと思うわ」

 

・・・その時私は静かに悟ったのです、

私のやり方は何かが間違っていたのだな、と。

 

 

ふと気がつけば普段私が皿洗いをしている時は

「ありがとー、お義姉さん」

の一言でその場を去っていく義弟その3が

義弟その2組のそばには足を運び

自ら進んできれいになったお皿を食器棚に

入れていく仕事を引き受けているし

・・・うむ!私は明らかに何かを間違えていた!

 

この日、私は夫に宣言したのです、

私はもう今までのようには

この家で皿洗いはしない、と。

 

続く。

 

 

いや別に感謝して欲しいとか

ありがたがって欲しいとか

そういうことではないんですけど

 

そういう話ではないんですけど

 

・・・でもそういう話なのかしら

 

まあそういうこともあって

先日のあの記事

状態ではあったのですが

以来夫の実家でまったく後片付けを

手伝っていないというわけではないのよ

 

このお話は明日に続く

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