2007年10月。
フィオナ・ピルキントンさんという
当時38歳の女性が
自らの乗用車に火を放ち
焼身自殺しました。
車にはフィオナさんの
18歳になる娘も乗っていました。
彼女達は過去10年以上にわたり
近隣住民の子供たちから
深刻ないやがらせを受けていました。
フィオナさんの娘、
フランチェスカさんには障害があり、
その精神年齢は
4歳程度だったとされています。
また、フランチェスカさんの弟
アンソニー君にも
深刻な識字障害がありました。
そのことがこうした
いじめの背景となっていた模様です。
石を投げられる。
郵便箱に花火を入れられる。
罵声を浴びせられる。
家に卵や小麦粉をぶつけられる。
家の敷地内で
タバコを吸われ、瓶を割られる。
鉄の棒やナイフで脅される。
それが10年。
フィオナさんとその家族、隣人は
警察をはじめとする
公的機関に何度も助けを求めました。
しかし対応は
適切とはいえませんでした。
警察側はかつてフィオナさんのことを
「過剰反応し過ぎ」と公言したそうです。
もはや打つ手なし。
フィオナさんは車に火をつけました。
いやがらせに加担した少年の数は
16名といわれています。
中にはまだ10歳の男の子もいるそうです。
彼らは誰も起訴されていません。
・・・この暗澹たる気持ちを
私はどこにぶつければいいのでしょうか。
最初に確認しておきたいのですが、
英国はけっして障害者に対する
偏見に満ちた国ではありません。
むしろ日本よりも
理解が進んでいる面も多いと思います。
買い物などに出かけると、
必ずといっていいほど
身体に障害を持った人とすれ違います。
渡英した当初は、何故こんなに
車椅子や杖を必要とする人が
街に多いのだろう、と驚いたのですが、
今では逆に日本に帰るたびに
そうした人々は日本では
どのように生活しているのだろうか、
と不思議に思います。
人口全体に占める
身体障害者の数って
英国も日本も
そんなに変わらないと思うんですけど。
隠れているのか。
隠されているのか。
私のよく行くパブの
ウエイトレスさんには片腕がありません。
だから何ですか?という話なんですよね。
カフェで知的障害のある人に
世間話の相手になるよう求められたり、
ジムで知り合った人と立ち話をしていたら
「あ、私、片方の耳が聞こえないから
反対側に回って話してもらえる?」
と言われたり。
なんというのか・・・
私はそういうの、いいなと思うんですよ。
いや、いいも悪いもなく、
それが普通なんですよ、英国では。
少なくとも英国の一部では。
自分に障害があるからといって
それを隠したりはせず、
また、相手に障害があるからといって
過剰に親切にしたりもせず。
それが何なんですかこの事件は。
私の進学した中学校は
一時期割と荒れていたことで有名でして、
まあ私が中学生になった頃は
校内暴力も下火になってはいたのですが、
それでも何人かは
『絵に描いたような不良』が
敷地内に存在しておりまして。
しかしですね、
どんなに理不尽な要求を
後輩にするような悪たれでも、
喧嘩っ早いことで有名な暴れん坊でも、
知的障害者に石を投げて喜ぶような
真似だけはしなかったと思うんです。
・・・今時の不良は違うのかしら・・・
ともあれ、
私は最初にこの事件を耳にしたときに
「いじめに加担した連中は
年齢の一切を問わず
全員銃殺刑にしてしまいなさいな、
英国政府の財政が
逼迫しているというのなら
弾代くらいは私が寄付してもよくってよ」
とか思ったのですが。
一部の少年の年齢が10歳って。
10歳っていったら小学校5年生。
それは・・・それはどうなんだろう・・・
いや、私は
凶悪な少年犯罪には厳罰を!
という立場なのですが。
自分が小学5年生だったころを
思い返すとですね、まあ私は
それはそれは馬鹿な子供だったんですよ。
あのくらいの年齢の人間は
周囲の仲間次第で
本当にどうにでもなるんじゃないかな、と。
しかしこれを親と社会と友達の責任、と
断じてしまうのはまた違う気がするのです。
それにしても
どうして相手の障害を理由に
いじめとかいやがらせとかが
出来るのでしょうか。
人間誰しもが明日にでも
障害者になる可能性を
抱えているわけじゃないですか。
そんなのトラックに撥ねられて
首と頭を強打したら一発ですよ。
障害者に対して偏見を抱いていたり
冷たい態度を取ったりする人を見ると、
ああ、この人は想像力のない人なんだ、
と私は悲しい気持ちになります。
だがしかし今回の事件を
『悲しい気持ちになりました』の一言で
まとめるつもりはないわけで。
一部の政治家はこれを
政治問題にしたい様子でもあるのですが、
それもまた違うと私は言いたい。
自分がフィオナさんだったらどうしたか。
フィオナさんの隣人だったら何が出来たか。
私は考えています。
皆様もよろしければ
私と一緒に考えてみてください。
突然真面目な話でごめんなさい
結婚記念日の話を
書くつもりだったんですけどね・・・
それはまた明日にでも
文中に不適切な表現などがありましたら
どうかご指摘ください
言葉選びには注意したつもりなんですけど
デリケートな話題であることは
自覚しているので
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