本日はガイ・フォークス・ナイト。


英国史上最初のテロリストの死を悼み

彼に似せた人形を作って

街を引きずりまわした後

火の上に吊るして燃やし

その勢いで花火を打ち上げまくるという

冷静に考えると

とんでもないお祭りなんですが

この話については後日詳しく。


皆様聞いてください、

私はとうとう変態の仲間入りを

してしまったかもしれません。


私と夫(英国人)は

またヨークシャーの夫の実家に

遊びに来ました。


エジンバラからいつものように

特急に乗車したのですが、

今回前売り券に

「片道だけ一等車を利用できる」

という特典がついていたのです。


そんなわけで

憧れの英国鉄道一等車に

足を踏み入れたわが夫妻。

確かに普通車と比べ

内装も豪華だし

椅子の座り心地もいい。

コーヒー・紅茶とお菓子も

無料でサービスされたりします。


すっかりくつろぐ私。


さてしばらく電車に揺られるうちに

私は少々お手洗いなどに行きたい気分に。


さすが一等車、

トイレも普通車両のそれと比べると

一段豪華な作りとなっています。

まず広い。

鏡も大きい。

色使いもお洒落な感じ。

ついでにドアの開閉は押しボタン式。


まあここらへんで

私の後の悲劇は予想がつくかと思いますが、

トイレに入りますよね、

「1」と書かれたボタンを押したら

ドアが閉まったので

そのまま目的行為を果たしますよね、

そんで目的が達成されたら

こう立ち上がりますよね、

その瞬間、

閉まっていたドアが音もなく開いたんです・・・


またこのドアが無駄に凝った作りで

スライド方式で開くんですよ、

思わずドアに背を向けたんですが

ほらトイレの内部には

大きな鏡が設置されていると

申したではないですか、

その・・・鏡越しに

ドアを開けやがった方と

目が合っちゃいましてね・・・


あ、面子のために申し添えますが、

私はちゃんと下着ははいていたんです!


ただその、ズボン・・・ジーパンがですね、

ちょうど膝まで

下げられたままだったんですよね・・・


ほらあの、ああいうときって

あわててズボンを引き上げると

なんというか言い訳がつかない感

増すじゃないですか?

だからズボンはそのままで

鏡越しに笑顔で

「あら嫌だわ!

ちゃんと鍵がかかっていなかったのかしら?

どうも失礼いたしました!」

とその通路に呆然と佇む男性に

お詫びしたんですけども、

私の英語が下手だったのか

相手が英語の話せない方だったのかは

わかりませんが、

彼ったら雷に打たれたかのように

棒立ちのまま無言でいらっしゃいました。


そして私は淑女の微笑を湛えつつ

必死にトイレ内のボタンを押しドアを閉め

(またこのドアが

ゆっくりゆっくり閉まってくれやがるのよ)、

もう一度ボタンの説明書きを読みましたら

「ボタン『1』を押してドアを閉めた後

必ず『2』を押して鍵をかけてください」


・・・どうしてこんな簡単な説明文を

2分前の私は理解しなかったのかしら・・・


まあ内心の動揺を抑えてですね

トイレの水を流しズボンをはき手を洗い

トイレの外に出ると

例の殿方がなお口を半開きにして

そこに立っていらっしゃっいました

(人間、本当に驚くと

口は開いたまま閉じなくなるらしい)。


さて席に戻り

夫に一部始終を話しましたら

「その被害にあった男性

最初にドアが開いた瞬間

どんな顔をしていた?」

「心底見たくないものを見た、

という顔をしていたよ。

なんか酔っ払いが道端で嘔吐するのを

偶然目撃しちゃったかのような」

「・・・ああ、それは彼は紳士だね!」


・・・夫の主張は

理解できなくもないのですが、

本当にあの方が紳士だったら、

とりあえず私が身づくろいをしている間に

他のトイレに行ってくださるのが

完璧な作法というものではないでしょうか。


いや、そりゃ私に

こんなこと言う権利はないでしょうけど。


変質者の仲間入りというより

あと一歩で

犯罪者確定ではないかこの所業は・・・
遠い異国の地で

私はいったい何をやっておるのでしょうか。