書評『ハバロフスク』■追記:ヴャツコエ訪問記~虚構の英雄・金日成と白頭血統、および金正男暗殺~ | ScorpionsUFOMSGのブログ

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書評『ハバロフスク』

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追記:ヴャツコエ訪問記~虚構の英雄・金日成と白頭血統、および金正男暗殺~

本書では付録としてハバロフスク近郊の村、ヴャツコエ村を訪れた時のことも掲載されており、ヴャツコエ村が北朝鮮の独裁者、金一族にとって“ゆかりのある場所”であることを

現地の風景や金一族にまつわる切手を紹介しながら内藤先生が解説して下さっています。

 

■金正日生誕の地、ヴャツコエ村

ハバロフスクから北東に70キロほど行ったところにヴャツコエ村という小さな村があるそうです。

北朝鮮の公式見解では、“先代将軍”、故・金正日総書記は中朝国境にそびえる白頭山で生まれたことになっていますが、実際は父親の金日成(本名:金成柱)がここヴャツコエ村でソ連の軍事訓練を受けていた時に生まれた子供であることがソ連側の資料によって確認されているそうです。

 

白頭山というのは朝鮮の建国神話に登場する“霊峰”であり、「白頭山で生まれた」とするのは自らの権威を高めるための単なる捏造、プロパガンダに過ぎないことが様々な史料や現地の風景から確認できるそうです。



■“金日成”はチーム名?!

また「抗日抗争の英雄」としての“金日成キム・イルソン将軍”という名は1920年代から登場しており、実際には特定の個人の名前というよりは「実名を明かすことのできない非合法活動家の集合名詞」という意味合いが強かったそうです。

さしずめは「金日成」という名称はチーム名であり、“チーム金日成・第〇期生”、“チーム金日成・第〇期生”という人物が何人もいたということなのではないでしょうか。

 

そのため1945年に「金日成将軍歓迎平壌市民大会」が催され、司会者によって金成柱が「最も偉大な抗日闘士、キム・イルソン将軍」として紹介された時、33歳の若者が登場したのを観て、その場に集まった観衆は唖然としたとも伝えれているようです。

それもそのはず、1920年代から活動していたはずの人間が1945年に姿を現わしたら33歳だったなんて、どう考えても釣り合いません。

 

しかもその時の演説もたどたどしいことこの上なかったらしく、一部の人々は「偽の金日成だ」といって騒ぎを起こしたとも伝えられています。

 

■プロパガンダによって殺された金正男氏

この追記を書いているのは2017年2月15日ですが、昨日2/14に現・北朝鮮トップの金正恩総書記の兄、金正男氏が暗殺されたとのニュースが報じられました。

 

北朝鮮の金正男氏、マレーシアで殺害される

http://bloom.bg/2ksnNXO

 

韓国の著作家、ブロガーであるシンシアリー氏によると今回の金正男氏暗殺も金正恩氏にとって自分以外の白頭血統の存在が目障りであったというのがそもそもの根本的な理由であると指摘されています。

 

(以下引用)

いくら優れた政治家でも、北朝鮮では「白頭血統」でなければ、指導者にはなれません。そういう集団です。言い換えれば、金正恩は、自分以外の血統を打ち切れば、安泰・・・・という安ぽい考えを持っているのでしょう。

(引用終わり)

  

自らの権威を高めるためのプロパガンダに過ぎなかった“白頭血統”。

そのプロパガンダの正統性をめぐって一族内で骨肉の争いが繰り広げられ、暗殺まで起きてしまうということに、得も言われぬ恐ろしさを感じてしまいます。