過労死裁判に証人として出廷 | 行雲流水~へき地の一人病理医の日常

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兵庫県の赤穂市民病院に勤務する病理医です。学士編入学を経て医学部に入学し、2004年卒業。病理専門医、細胞診専門医です。

 昨日は、裁判所で法廷デビューしました。


 ある裁判に証人で呼ばれて…


 その裁判とは…


 1995年、中国からこられた苗さんは、京都大学で博士号を取得したのち、製薬メーカーにて、当時としては珍しいポストドクター(短期雇用の非主任研究者)として働いていた。

 心電図に異常がみつかるも放置。そのまま働き続けたが、ある日路上で倒れ、32歳の若さでこの世を去った…


 詳しくは、以下の記事などを見ていただけたらと思いますが、現在労災認定をめぐり、行政訴訟が行われています。それと並行して、民事訴訟も行われており、わたくしは民事訴訟の証人として呼ばれました。

 生命科学の研究の現状、ポスドクのプレッシャーなどを話しました。


大阪 ポストドクター過労死裁判/研究者の使い捨て許さない/支援の輪広がる


苗 登 明 さんの過労死認定を求める請願書


 法廷は初めてで大変緊張しましたが、一番言いたかったことは、研究というのは、会社や研究所にいる時間だけが研究時間ではないということ。論文は読むし、風呂に入ってもトイレに入っても食べても寝ても研究のことを考えるのが研究者というものです。


 なぜそうするか、というと、研究が一番乗り競争で、金メダルしか価値がないからです。


 研究は、9時から5時まできっちりつとめれば、残りの時間はのんびりしていられるという簡単なものではありません。成果出してナンボの世界なのです。


 そうした研究者という職業を、裁判官にも知ってほしいというのがわたくしの思いです。


 研究室にいる時間が短かったから、また、論文を読んだりするのは自主的な判断で、会社が命令するものではなかったら労災ではありません、というのでは、研究者という職業は、たとえ死んでも何ら保障がないことになります。


 そんな研究者を使い捨てる国にしたくない…


 わたくしのような者の言葉がどの程度裁判官に届いたかわかりませんが、わたくしの証言が少しでもくみ取られた解決になることを祈っています。


 追記


 法廷は最初緊張しましたが、その後は冷静にあたりを見回せました。弁護士さんが法廷を歩いたりして、ドラマみたいでした。法廷に出廷するなんてめったにないことなので、いい経験だったと思います。