書店で見た週刊誌は正反対のことを言っていた。
ニューズウィーク2月21日号は「格差社会はいいことだ」
http://www.newsweekjapan.hankyu-com.co.jp/contents/index.html
東洋経済2月24日号は「貧困の罠」
http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/ニューズウィークを読むと、ちょっとむかっと来た。金持ちが浪費すれば貧乏人が潤うというのが趣旨。おいおい、それで無保険者だらけを放置しているのかい。
一方東洋経済は無残な貧困の現状をルポ。
年金で生活できないから、東南アジアなど物価の安い国を点々する国際ホームレスがいるという話に衝撃をうけた。
このふたつはちょっとすれ違っているように思う。
もちろん誰も完全平等なんか求めていなくて、格差はインセンティブになるから否定できない。
だって、大学受験なんて究極の格差(偏差値)なんだし、そういうのは一生続く。
ニューズウィークの記事で面白いなと思ったのが、アメリカでは格差是正策は人気ないのだという。なぜなら、自分が大金持ちになるチャンスがあると思っているから。
最近の日本では、究極の貧乏だけれど、一発あてたる、なんて話は難しくなってきた。ITベンチャーの社長が東大卒なんてのは、その例だ。富めるものが富む。
日本では下克上ができにくいのだ。今までうまくやってきたのは、右肩あがりの経済だったから。
今は裕福層ががっちり利権を守る。ルールを作る側が自分の財産を減らそうとするわけない。ノブレスオブリージュもないから、寄付とかで貧困層へ還元しようとするヒトも少ない。
あっち側とこっち側の高い壁。
これだけ裕福なんだし、餓死する人もいないし、平等じゃん、という意見も多いが、東洋経済の記事を読むと、それも危うくなってきているようだ。医療が受けられない人が多数いる。
壁ができて、しかもセーフティネットがなくなって、アメリカより悪くなってきているのではないか。今の日本。
- 神野 直彦, 宮本 太郎
- 脱「格差社会」への戦略
「リベラル」(左派)から格差問題を扱った本。
既に日本は小さな政府なのに、これ以上小さくするのかとか、所得税の累進課税が緩んたために、国の税収が景気回復傾向なのに増えないとか、さまざまな問題を指摘する。
統計にそもそものらない貧困層が存在するという指摘は、格差の実感と統計の乖離を説明しうる。女性のアンペイドワークなども、きっちりと考えなければならない問題だ。
また、世代的な格差も明らかにし、人生前半の社会保障の薄さがフリーター問題を引き起こしていると解く。
教育の機会平等など、非常に考えさせられた。ここがしっかりしていないと、アメリカのような、自分が成り上がれる希望も失われる。
労働市場は乗り降り自由なバスでなければならない、という点は共感。