学者のウソ | 行雲流水~へき地の一人病理医の日常

行雲流水~へき地の一人病理医の日常

兵庫県の赤穂市民病院に勤務する病理医です。学士編入学を経て医学部に入学し、2004年卒業。病理専門医、細胞診専門医です。

掛谷 英紀
学者のウソ

筑波大学の掛谷さんの新著。言論責任保障協会 などで活動している気鋭?の学者さん。


エリートが無責任に自分たちに有利なように社会を作っているという批判は鋭いし、なるほどと思う面も多々ある。


ただ、違和感を感じるところもある。


博士号取得者の就職難はウソで、自分はいくつも内定をとることができた、というのは、自身が東大の工学系の院を出ているという特殊事情をもうちょっと考える必要があるだろう。


また、アファーマティブアクション(女性優遇)を批判しているが、その批判の一つに、女性がハウスハズバンドなどを探せばいいのにその努力をしていない、というのがあった。


男性が女性を主婦にして好き勝手できるのに、女性はその逆ができない、という文化的な側面を一考だにしていない。


言論保障にしても、自分の発言に責任を持つ、という意味で重要なことだと思うが(とくに、あるある問題が取りざたされている中、無責任な発言をする研究者が多いので、そう感じる)、それが発言を萎縮させてしまうというのではよくないし、誤ったことをいう「権利」は、学問の自由のなかで重要なことだと思う。訂正可能性が研究の世界では重要だと思う。


なかなか難しいところではあるが…


いずれにせよ、さまざまな論点を含んでいるので、左右どの立場の人も、一読されることをお勧めする。