SCH悼む~バブルガムフェロー | SCHUMA 3冠日~競馬・POG・予想~

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2005年10月23日。ディープインパクトが菊花賞優勝。ついに無敗の3冠馬のオーナーになった。1993年初夏に始まったPOG人生。翌年にはサンデーサイレンス産駒が登場した戦国時代を12年11勝で生き抜き、SS指数によって発掘した史上最強馬で、今ここに天下統一を果たした。

 97年秋、天皇賞。私はこのとき初めて10万円1点勝負の馬券を買った。バブルガムフェローとエアグルーヴのPOとして、「バブルを倒すのはグルーヴ」「グルーヴを倒すのはバブル」と1年以上言い続けてきた私の夢が、超GⅠの大舞台で初めて実現し、自分の内なる思いの大きさを馬券で表現したかったのだろう。2頭の馬連を10万円、グルーヴの単勝を1万円、バブルの単勝は1000円だけ買った。単勝の額に差をつけたのは、客観的にグルーヴ有利と判断したこともあるが、内心、前年の覇者であるバブルに今回は遠慮してもらおうと願ったからではないか。

 当日はテレビ観戦だった。レースは3番手から前を捕まえに行ったバブルを、好位で折り合ったグルーヴが外から並び掛け、2頭の激しい叩き合いの末に決め手の差でグルーヴが首差制した。3着ジェニュインには5馬身もの大差。まさに2頭の歴史的マッチレースだった。

 馬連29万、単勝4万の計33万円が懐に転がり込んできた。実質22万の儲けを何に使うか。私は迷わず新婚旅行に投資した。すでに決まっていた3週間後のラスベガス&ロサンゼルスの旅。ロスでは私のわがままでブリーダーズカップ観戦を予定していたので、奥さんの旅費をすべて私が負担することにした。かくして、バブル&グルーヴの同期カップルによってもたらされた幸運は、我が家の円満な家庭生活につながったのだ。

 私が初めてバブルガムフェローを意識したのは、95年のドラフト直前。まだ競馬バブルが残っていた時代らしく、「週刊プレイボーイ」の誌上だった。ここで8月末に藤沢厩舎に入厩し、10月の東京デビューを予定していることを知り、隠し玉的な存在として1位指名に踏み切ったのだ。しかも、ドラフトではまさかのジャンケン。人生最大のグー・チョキ・パーを勝ち抜いたことで、ようやく手に入れることができた。もしプレイボーイを読んでいなかったら、もしジャンケンで負けていたら、もしかしたらその後の勝ち組の私はいなかったかもしれない。

 バブルの魅力は、やはり頭の良さにあったと思う。デビュー戦は最速上がりを記録しながら、当時の藤沢軍団らしい折り合い重視の上品なレースで前を捕まえきれずに終わった。ただ、ここで折り合い面の課題をクリアしたことで、2戦目は自らハナを切って楽勝し、3戦目の府中3歳S(現・東京スポーツ杯)でも2番手追走から強気の4角先頭でサクラスピードオーの追撃を凌いでみせた。圧倒的な強さは見せないが、常にサンデーらしい爆発力を内に秘めたまま自分をうまく制御して走っている。まさに名手・岡部幸雄が惚れ込むにふさわしい若駒だ。そんな奥の深さの一端を垣間見たのが朝日杯3歳S(現・朝日杯FS)。2、3番手の好位追走から、直線では内にモタれている隙に外からエイシンガイモンに一度は交わされるが、そこからエンジンに火がつくとガイモンに噛み付くような走りで一気に抜き去り、最後は抑える余裕さえ見せてねじ伏せた。私にとっては初の2歳王者のタイトルであり、前週の阪神3歳牝馬S(現・阪神JF)でグルーヴが2着に敗れたことのリベンジでもあった。

 96年春。バブルとグルーヴで牡牝クラシック完全制覇を狙っていた私に、まずグルーヴ熱発で桜花賞回避の報が、そして翌週にはバブル骨折・春絶望のニュースが飛び込んできた。桜花賞・皐月賞の1番人気候補をPOで同時に所有するだけでも奇跡なのに、そこで2頭がアクシデントで回避するなんて、一体どれくらいの確率なのだろう。この悔しさは、しかし、1か月後のグルーヴのオークス制覇で半分癒され、半年後、バブルの天皇賞制覇で完全に払拭された。

 1996年は私にとって、結婚という人生最高にハッピーな年でもあった。そんな記念すべき1年を天国⇒地獄⇒天国の波乱万丈な演出で彩ってくれた2頭は、今でも、そして今後もずっと忘れられない「親友」である。97年秋の天皇賞直前、「バブルとグルーヴはどちらが強いか」とメディアが騒いでいたなか、「どちらも強い」と胸を張っていた自分が、今では懐かしく、そして羨ましくもある。

 時代を席巻したサンデーサイレンス産駒のなかでも、最も利口で、最も華麗に、そして最も激しい気性を内面に抑え込んでターフを駆け抜けたバブルガムフェロー。優等生すぎたストレスが、父となり、結果的に産駒への遺伝力を妨げてしまったのは残念だが、その一代燃焼型の生き様は「THE競走馬」として私の中でいつまでも走り続けている。合掌。