ラストはシェイクスピア!
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鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂を舞台に繰り広げられる謎解きミステリー。
7巻にしてついに完結……! ということで。ドキドキしながら本書を手に取りました。
いやあ、本にももちろん物語はあるけれど。それを受け継いできた、多くの「人」たちにも、想像のはるか上を行く本との物語があって……。
古書に隠された謎解きが何とも興味深く、また本を愛する切れ者の栞子さんのことも大好きで、毎回夢中になって読んでいました。
極度の人見知りであるものの、古書に関しては並外れた知識を持つ、美人で巨乳の女店主・栞子さんと、訳あって、本が長時間読めない体質の、アルバイトの五浦くん。
晴れてカップルになった二人が、今回対峙することになる古書の作者は、なんとあの、劇作家・ウィリアム・シェイクスピア!
今回はシェイクスピアが1616年に死去してからわずか7年後に出版された「ファースト・フォリオ」と呼ばれる、シェイクスピアの戯曲を集めた最初の作品集に、焦点が当てられています。
なんでも、400年近く前の古い本が現代に残っているのはすごいことなのだそうで。
栞子さん曰く、
「17世紀初頭は紙も高価でしたから、判型が大きくなればなるほど豪華な本ということになります。
生前から人気があったとはいえ、劇作家の個人作品集がきちんと出版されることは非常に画期的なことだったんです。
シェイクスピアの役者仲間が追悼のために出版したと言われていて、劇場で使われていた公認の台本から原稿を起こしたようです。
ファースト・フォリオが世に出たおかげで、シェイクスピアの戯曲は後世に残ったと言っても過言ではありません」(p.107)
とのことでした。
ファースト・フォリオがあったからこそ、今もなおシェイクスピアの劇は世界中で演じられているのですね……。
世界中のコレクターにとって、垂涎の的である「本物」がもし見つかれば、何億円もするという、ものすごーーーい価値のある「ファースト・フォリオ」をめぐって、悪い大人たちの巧妙な心理線が繰り広げられます。
それと共に、今まで謎に包まれていた、栞子さんの祖父や祖母、母の生き様も明かされます。
あ~~~もう!今回は、登場する古書が今までで一番、値段が高かったというのもあるけれど(笑)、今までで一番、ドキドキさせられる展開でした。
特に終盤、緊迫した雰囲気の中で行われる篠川母娘の対決はすごかった……!
「世界が舞台で人間はそれを演じる役者」だというのは、シェイクスピアの戯曲にしばしば登場する考え方らしいのですが、それぞれが時にまるで「道化」にでもなったかのように、与えられた役者を演じ、相手の心に揺さぶりをかけ、自分の目的を達成しようとする様子は、手に汗握って読みました。
おもしろかった。本当にドキドキしておもしろかったです。
今回も、古書や作家の知識が五浦くんの解釈を通して、わかりやすく伝わってきたのはもちろんのこと。
栞子さんが、本が読めない五浦くんに本の内容を楽しげに語って聞かせるほんわか素敵な描写を見て、ビブリアを通して、私も今までその名を聞いたこともなかった、たくさんの楽しい本に出会えたことを思い出しました。
イギリスの小説家・アンソニー・バージェスによる『時計じかけのオレンジ』
坂口安吾の奥様、坂口三千代さんによるエッセイ『クラクラ日記』
ロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』
他にも太宰や江戸川乱歩など、ビブリアを通して手に取ることができた本が、たくさんありました。
もう読めなくなるのが寂しいよ~と、震える手であとがきを読むと、番外編やスピンオフはまだ出るとのことで、楽しみです。
本について、私はまだ何も知らない、おもしろさのカケラもわかっていない、もっと知識を深めたい、人から人の手で読み継がれてきた古書の魅力も知りたい……!! と、好奇心がムクムクあふれ出す、素敵なシリーズでした。
【余談】
昨日、京都に帰ってきた私。
帰宅早々、またマンガを大人買いしてしまいました……。笑
次回は、マンガのレビューを書きますね。
京都は今日は雪っぽい氷っぽいものが降っていてとても寒かったです。
皆さま身体に気をつけて、お過ごし下さい。
さゆ