Statement | -Sayoko's gallery- 
Circulation

この世のすべてのものは、循環する

ひとつの細胞が、さまざまな形に姿を変え、この世界を形成するように
ひとつの魂も、この身体から解き放たれたとき、どこかで存在し続けていくのだろうか
それは、今の私には分からない

今、私が願うことは
自身の表現を以て、自己の感受性で得たものが、この世の循環の一部分となることだ

ひとりの人間の中の感性は、あらゆる表現を巡って
またある人間の中に入り込み、この世を彩っていく

感性の循環の先にあるもの

いつかはこの世からいなくなり、それが見られなくなる時が来ても
今は、伝えることの積み重なりを、あらゆる循環を楽しむことを、
大切にしていきたいと思う




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今回の個展"Circulation"のステートメントです。

個展のテーマを「循環」とした理由は、いくつかあります。

まず、世の中のものは全て循環していくのだと、私自身が気付いたこと。
水も、雲も、木も、土も、そしてこの身体が、いつか死体となったとしても、細胞は形を変え、この世に有り続けていく。

また、人間の営みにとっては切り離せない、経済もまた永遠と循環し、それが時代を形作っていく。

そう考えたとき、自分の魂も、この身体が動かなくなったときにも、どこかで在り続けるのではないかと、希望を持つことが出来たのです。
今までは、「死」は全ての終わりを意味する、怖いものでしかなかったから。

そういった、この世の真理のひとつとしての「循環」を、表現したかった。



そして、もう一つの理由。

それは、ステートメントの中にもありますが、
私自身の感性が、作品を通して、鑑賞者に何らかの影響を与え、この世を彩っていく「循環」の一部分となりたい、という願いからです。

劇的な変化では無いとしても、芸術というものは、日々の生活の中で、私達に無意識に影響を与えてくれます。
また、「人間は誰一人として同じではない」という真理を、表現を以て、また生き方を以て証明するのが、芸術家の存在する所以であると思っています。
(各々の芸術家の掲げるテーマは様々ですが、人間社会を俯瞰して見た時に、「個性(人間らしさ)の容認」を証明する役割にあるのが芸術家である、という意味です)
だから、個々の違いに対して寛大さを失いつつある現代の社会にこそ、芸術家は必要だと思うのです。

でも、今回の個展では決して「芸術(家)は必要だ!」というようなことを言いたい訳ではないのです。

好きで作品を作っていく、好きなものを作っていく
それはとても大切なことですが、そこで留まってしまってはいけない。

ひとつの作品が、誰かの感性や考え方に影響を与え、その人を変える。
そしてまたその人から、ある人にその人の考え方や感性が伝わる。
その循環によって、世の中は形成されていく。
良い方にも、悪い方にも。


私は、その循環の一部分を作っているのだという責任と、
自身の感性が、作品が、世の中にとって良い循環の一部分となっていきますように、という願い
その二つを込めて、"Circulation"(循環)というタイトルにしました。

節目となる30歳の個展に、作家として今一度、覚悟と戒めを込めて。