ステルクララの森に棲む妖精の多くは翅や翼を持っています。
血筋で決まっているその家系の「職」によって、樹木や鳥のお世話をする妖精はしなやかな翼を。虫や植物のお世話をする妖精は軽やかな翅を。それぞれそなえています。
しかし、この翅は虫や鳥のそれとは異なり、季節で生えかわります。
特に虫担当の妖精たちの翅はこの季節、一斉に生えかわるのです。
冬の間は、枯葉の下や樹皮の隙間で越冬する虫のさなぎや卵の見廻りだけを仕事とする妖精たちは、北風に負けない強度を保ち、陽射しを透す透明度のある、小回りの利く小さな翅をしています。
しかし、これから羽化して大空を飛び回る虫たちを相手にするには、冬の翅では小さすぎ、これから来る夏の陽射しには透明すぎるのです。
それで、梅雨の季節の前。
やがて訪れる夏よりも夏らしい、懐かしい香りのするこの季節になると、ステルクララの森ではたくさんの妖精の落とし翅を拾うことができます。
そんな落とし翅を小さな標本に仕立てました。
ステルクララの物語は妄想から生まれた、100%フィクションです。
フィクションですが、時々、現実の世界とつながっていたりします。
この妖精の落とし翅は滑石を整形して作りました。
これを古いインテルで拵えた小さな標本箱に、錆びた古い時計の螺旋で留めました。
【妖精の落とし翅】
Talc Wing
Forest in Stelklara
インテル標本箱は写真と同じ3mm板のものと2mm板のものがあります。
また翅も妖精の種によって若干形状が異なります。