- 波のうえの魔術師 (文春文庫)
- 石田 衣良
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読みやすい文章で有名な作家・石田衣良氏による経済小説。
語り口が若者目線なので、知識がなくても分かりやすい。
株をテーマにした「池袋ウエストゲートパーク」的小説である。
この本は「ビックマネー!~浮世の沙汰は株しだい~」という名前で
テレビドラマ化されている(フジ系。TOKIOの長瀬智也主演)。
主人公はパチンコで生計を立てる就職浪人。
しかし、ある人物との出会いを期に、株式の世界に入っていく。
半年の訓練を経て、立派なディーラーとして成長する。
次第に、とある計画に巻き込まれる。
それは、大手都市銀行の「まつば銀行」に対して復讐するというものだった。
時は98年。長銀、日債銀が相次いで破たんした年である。
莫大な資産を信用売りに入れ、主人公たちは戦いに挑む。
石田氏自身も株をやっているため、リアルな内容。
(ストップ高、ストップ安が無いという点はあるにせよ)
バブル期の変額保険ネタは本当にリアルである。
支店のノルマに関する記述(成績が悪いと化学調味料を
食べさせられる)に関しては、銀行の友人から聞いた限り
そんなことはないらしいが、真相は不明。
98年というと就職氷河期だから、今に通じる部分もあるかもしれない。
(主人公の卒業した大学では男の3割が就職できない、という描写など)
入社10年目の女性行員のエピソードからも、今と変わらない仕事観が
読み取れる。
ここからはネタバレ。
主人公は後に逮捕されるのだが、容疑が「風説の流布」である。
堀江さんと罪状が同じ。
この本の出版は01年なので、堀江さんの逮捕のほうが後になる。
この罪状から見ても、本書は立派な経済小説であることがわかる。