1Q84 BOOK 1 (2009/05/29) 村上 春樹 新潮社 商品詳細を見る |
私はヒット作を手に取るまで、わざと時間を置く癖がある。
たとえ村上春樹作品であっても、である。
大型連休でサクサクと読んでしまった。
500ページ×2冊なので、まとまった時間に
是非とも読まれたい。
この本の中で一番印象に残った部分はここだ。
もし我々が単なる遺伝子の乗り物に過ぎないとしたら、
我々のうちの少なからざるものが、どうして奇妙な
かたちをとった人生を歩まなくてはならないのだろう。
我々がシンプルな人生をシンプルに生きて、余計なことは
考えず、生命維持と生殖だけに励んでいれば、DNAを伝達する
という彼らの目的はじゅうぶん達成されるのではないか。
ややこしく屈折した、ときには異様としか思えない種類の
人生を人々が歩むことが、遺伝子にとって何らかのメリット
を生むのだろうか。(BOOK1 p.443より)
たくさんの人と会えば会うほど、この感じは強くなる。
私が出会った人々には様々な人生があった。
例えば、生まれつき両足が無かったり、目が見えなかったり。
そして、その様々な人生が同じ空間を共有する。
そこで、それぞれが相乗効果を生んだり、
マイナス効果を生んだりする。
もはや遺伝子本位とはいえない。
ともあれ、シンプルな人生ほどつまらないものである。
山があって、谷があって。
いつのまにか、谷を谷だと思わなくなっていく。