第11話 | ~浮世離れ~

第11話

なんと表現すればよいのだろう。



何も無かったはずの空間に何かが紡ぎ出されていくとでも言えばよいのだろうか。



味わった事のない感覚…恐怖でもなく、好奇でもないまとわりつくような気味の悪さが3人を襲った。



ハインがその空間を撫でるたびに徐々にアイダが現れてくる。



ハインは踊るようにしてリズムよく複製作業を続けていくが、3人にはさっきまでの『生き返らせるんだ!!』などと息巻いていた勢いが無い。



「ふーー意外と時間かかっちゃいました…仕上げは先ほどの打合せ通りにお願いします」一仕事終えたハインはケンジに言った。



「あ…ああ」何となくグロテスクなものを見たような気分でケンジは刀を握っているオリジナルのアイダの方へ近づいていく。



位置につくと呼吸を整え、再び赤い玉を握り締めて大きな声で叫んだ。



『われ願うハザマツヨシの魂をこの肉体に呼び戻し復活させたまえ!!!』


…何も起こらないかのようにケンジの声だけが洞窟内に反響した。



ユミがその様子を見ていてこうつぶやいた…





「ケンジの手がぼんやり光ってる…」その次の瞬間ッ…!!!


「あぢぃ!!!」というケンジのうめくような声とビカッ!!!という強い光が辺りを一瞬包んだ。






眩しい光が収まっていく。




すると、アイダの体に青白い光が流れこんでいく。




あ…さっきの逆だ…。



もう目を開けても大丈夫な位に光は弱まり徐々に消えていった。



「ケンジ大丈夫か??」イシが駆け寄る。



「ああ、あっつかったのは最初だけだったけど…」アイダが生き返ったのか気にしているように見える。




ぴくっ。



物凄く弱く、そして微かに…アイダの刀を握る指が動いた。




「あ…あいだぁ…!!!」ユミはまた涙を抑えきれない。


「…」突っ伏しているような体制からゆっくりとそしてのそっとアイダが仰向けの体制に自力でなった。




「ただいま」優しさがあふれるような言葉をアイダが言うなり3人はアイダを抱きしめた。



再開の喜び…それを分かち合う4人の横でハインは別のことを考えていた。




これから始まる『不幸』について…。


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