ユミの話3 ~意味~
祠に足を踏み入れると、体が何か感じる。
それは、恐怖であり興奮でありスリルであり、また別の何かのような気もした。
1メートル進むと外からの光がまったく入らなくなる。
光を無限に吸い込んでいく様な不思議な祠だった。
見つけた時は1メートルしか進めなかったのだけれど、いつものメンバーで何度も何度も挑むうちに奥へ、奥へ、奥へ進めるようになっていった。
そして、時は過ぎて…。
「卒業式の日に祠の一番奥まで行こう」珍しくアイダが言い出した。
ワタシ達は何度も何度も祠に挑んだけれど一番奥までは一度も到達できていなかった。
時には大量の虫の恐怖で、時には道具を忘れて・・・。
そんな冒険の最中、いつも一番臆病なアイダは最後尾をついてきていて、探険する事を一番怖がっていたのに・・・。
アイダ・・・。
ワタシはそれが何となくどんな意味か解っていたんだ。
『あいつらは男子校…ワタシは女子校…あいつらなりの別れの儀式なんだろう』
解ってしまうと何となく少し物寂しい気がした。
使い込んだ懐中電灯、大量の水、万が一の時の救急箱、長めのロープ…最初は何を持っていけばいいかも解らずに苦労したなぁ…。
道具を準備しながら色々思い出す。
弱虫で、お調子者で、運動音痴なんだけど、発想が豊かでアイディアマンのアイダ。
単純で、喧嘩っ早くて、強引なんだけど、運動神経抜群で情に厚い頼れるリーダーのケンジ。
人を馬鹿にするのが得意で、冷めてる所があるんだけど、知識と思考力に富んでいて話のまとめ役のイシ。
本当にワタシはいい仲間を持っていたんだと思う。
それも、明日最後の冒険になるんだ…。
春の息吹を感じるとともに別れの予感がワタシの胸を締め付けていた。