名著「愛するということ」(エーリッヒ・フロム)の抜書きまとめ
こんにちは。
このゴールデンウィーク明けに、本書「愛するということ」をテーマに、久々にワールド・カフェのイベントを予定しているのですが、それに先立ち、本著を読みこんで抜書きまとめを作成したので公開してみます。
(参考)5/9(木)19:00~「愛するということ」ワールド・カフェ(大井町)
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/84346/
なかなか知っているけど読んでいないという人も多いと思うので、イベントに参加頂ける方への予習用として、「読んでなくても読んだ気になれる」抜き書き記事と言うことで、良かったらご活用ください。
多くの人に愛読書とされている名著で、私自身読んで楽しかった本ですが、何か、短く本書の要点をまとめようとするとすごく難しい本です。
それが愛について探求する際の難しさにも通じるのかと勝手に解釈しておいて、以下抜書きまとめ、また長文ですが宜しくお願いします。
■奇妙な態度 第一
どうすれば愛されるか
■男性が用いる手法
社会的に成功し、自分の地位で許されるかぎりの富と権力を手中におさめる
■女性が用いる手
外見を磨いて自分を魅力的にすること
■奇妙な態度 第二
自由な愛という新しい概念によって、能力よりも対象の重要性のほうがはるかに大きくなった
愛することは簡単だが、愛するにふさわしい相手、あるいは愛されるにふさわしい相手を見つけることは難しい 人々はそんなふうに考えている
■交換
物質的成功がとくに価値をもつような社会では、人間の愛情関係が、商品や労働市場を支配しているのと同じ交換パターンに従っていたとしても、驚くにはあたらない
■第三の誤り
恋に「落ちる」という最初の体験と、愛している、あるいはもっとうまく表現すれば、愛のなかに「とどまっている」という持続的な状態とを混同している
■不安
孤立しているという意識から不安が生まれる
孤立こそがあらゆる不安の源
■アダムとイヴの物語
人間が孤立した存在であることを知りつつ、まだ愛によって結ばれることがない ここから恥が生まれる
■どの時代のどの社会においても
いかに孤立を克服するか、いかに合一を達成するか、いかに個人的な生活を超越して他者との一体化を得るか
直面する問題は皆同じ
■祝祭的興奮状態
興奮による合一体験
共通する特徴
第一に、強烈
第二に、人格全体に起きる
第三に、長続きせず断続的、周期的
■孤立を克服するもっとも一般的な方法
集団に同調すること
■集団に同調しないことの恐怖
同調しないと実際に危ない目に会うかもしれないという恐怖
■たいていの人
集団に同調したいという自分の欲求にすら気づいていない
■幻想
私は自分自身の考えや好みに従って行動している
みんなと意見が一致すると、「自分の」意見の正しさが証明されたと考える
■集団への同調による一体感
おだやかで惰性的
孤立からくる不安を癒すには不十分
■一体感を得る第三の方法
創造的活動
あてはまるのは、生産的な仕事
■愛のみ
人間どうしの一体化、他者との融合
■生産的な性格の人にとって
与えることはもらうことよりも喜ばしい
与えるという行為自身が自分の生命力の表現
■愛の能動的性質
与える
配慮、責任、尊敬、知
■配慮
積極的な配慮のないところに愛はない
■責任
ほんとうの意味での責任は完全に自発的な行為
他人の要求に応じられる、応じる用意がある、という意味
■尊敬
人間のありのままの姿をみて、その人が唯一無二の存在であることを知る能力
自分が独立していなければ、人を尊敬することはできない
愛は自由の子
■その人に関する知識
尊敬するには、その人のことをしらなければならない
■彼の怒り
もっと深いところにある何かのあらわれだということがわかり、彼のことを怒っている人としてではなく、不安にかられ、狼狽している人、つまり苦しんでいる人として見ることができるようになる
■知
どんなに努力しても、ほんとうの意味で自分を知ることはできない
それでも
人間のいちばん奥にある芯に、到達したいという欲求を捨てることができない
■結合の行為
知りたいという欲求は満たされる
■相手の現実の姿を知るためには
相手を、そして自分自身を、客観的に知る必要がある
■二極性
二極性こそがすべての創造の基礎
■フロイトが見落としているのは
性の精神生物学的な側面
合一によってその両極に橋をかけようという欲望
■親子の愛
母親に愛されるということ経験は受動的
愛されるためにしなければならないことは何もない
■父親との関係
思考、人工物、法と秩序、規律、旅と冒険
子供を教育し、世界へつながる道を教えるのが父親
父親の愛は条件付き
父親の愛は原理と期待によって導かれるべき
忍耐づよく、寛大でなければならない
■良心
自分自身の愛する能力によって母親的良心を築き、理性と判断によって父親的良心を築きあげる
■神経症の根本原因
双方が統合されるというこの発達こそ、精神の健康の基礎であり、成熟の達成
■愛の対象
愛とは、特定の人間にたいする関係ではない
世界全体に対して人がどう関わるかを決定する態度、性格の方向性のこと
■ほとんどの人は
愛を成り立たせるのは対象であって能力ではないと思い込んでいる
■一人の人をほんとうに愛するとは
「あなたを通して、すべての人を、世界を、私自身を愛している」
■兄弟愛
あらゆるタイプの愛の根底にあるもっとも基本的な愛は、兄弟愛
■兄弟愛とは
あらゆる他人に対する責任、尊敬、理解(知)のことであり、その人の人生をより深いものにしたいという願望
■兄弟愛の底にあるもの
私たちは一つだという意識
■母親愛
一方がひたすら助けを求め、一方がひたすら与えるという不平等の関係
■真価が問われるのは
成長を遂げた子どもにたいする愛において
巣立ちを耐え忍ぶだけでなく、それを望み、後押ししなければならない
■難行
徹底した利他主義
■異性愛
その性質からして排他的であり、普遍的ではない
すぐに探検しつくし、知りつくしてしまう
そこで新たな征服、新たな恋を求めるようになる
ひとえに個人と個人が引きつけ合うこと
■自己愛
他人に対する態度と自分自身に対する態度は、矛盾しているどころか、基本的に連結している
■利己的な人
自分を愛していなさすぎる人
■マイスター エックハルト
もし自分自身を愛するならば、すべての人間を自分と同じように愛している。他人を自分自身よりも愛さないならば、ほんとうの意味で自分を愛することはできない。自分を含め、あらゆる人を等しく愛するならば、彼らを一人の人として愛しているのであり、その人は神であると同時に人間である。したがって、自分を愛し、同時に他のすべての人を等しく愛する人は、偉大で、正しい
■神への愛
ほかの愛となんら変わらない
孤立を克服して合一を達成したいという欲求に由来する
■神は
最高善の象徴
■人類の発達段階
自然との合一感
動物を神として崇拝
自分の手で作ったものに投影
偶像を崇拝
もっと後の段階
神に自分の姿を投影
母権的宗教から父権的宗教へ発達
さらに
人間を超越した存在へ
正義、真理、愛という原理の象徴となった
■真に宗教的な人は
神にたいしていっさい何も求めない
「神」が象徴するさまざまな原理を信仰する
真理について思索し、身をもって愛と正義を生きる
人生は、自分の人間としての能力をより大きく開花できるような機会を与えてくれるという意味においてのみ価値があり、能力の開花こそが真に重要な唯一の現実であり、「究極的関心」の唯一の対象
■自分で意味を与えないかぎり
人間が自分で意味を与えないかぎり、人生には意味がない
人間は、他人を助けないかぎり、まったく孤独
■老荘
道
「知る者は、語らない。道について語ろうとする人は道を知らない人である」
「重さは軽さの根であり、静は動の支配者である」
■逆説論理学
唯一なる神は否定の否定、否認の否認
重要なのは、思考ではなく行為
■世界を知るただ一つの方法
思考ではなく、行為、すなわち一体感の経験
■他人に対する愛
直接的には家族関係に根ざしているが、結局は、その人が生きている社会の構造によって決定される
■現代資本主義の特徴
労働の集約化
自分は自由で独立していると信じ、いかなる権威、主義、良心にも服従せず、それでいて命令にはすすんで従い、期待に沿うように行動し、摩擦を起こすことなく社会という機械に自分をすすんではめこむ
自分の生命力をまるで投資のように感じている
誰もが孤独で、孤独を克服できないときにかならずやってくる不安定感、不安感、罪悪感におびえている
■さまざまな鎮痛剤
商品、映像、料理、酒、タバコ、人間、講義、本、映画など
うまいものをたっぷり食べ、きれいな服を着て、性的にも満ち足りているが、自分というものがなく、他人ともきわめて表面的な触れ合いしかなく
最高のスローガン、「昨今は誰もが幸福だ」
物質的なものだけでなく精神的なものまでもが、交換と消費の対象になっている
■「チーム」という概念
幸福な結婚に関する記事を読むと、結婚の理想は円滑に機能するチームだと書いてある
こうした発想は、滞りなく役目を果たす労働者という考えとたいしてちがわない
そうした労働者は「適度に独立して」おり、協力的で、寛大だが、同時に野心にみち、積極的であるべきだとされる
■結婚カウンセラー
夫は妻を「理解」し、協力すべき
妻も、理解しようと努めるべきである
こうした関係を続けていると、二人の間がぎくしゃくすることはないが、二人は生涯他人のままであり、決して「中心と中心の関係」にはならず
■愛や結婚に関するこうした考え方
堪えがたい孤独感からの避難所を見つけることにいちばんの力点が置かれている
■サリヴァン
愛の本質は協力体制という状態の中に見られる
「共通の目的を達成するために、自分の行動を、相手が表明する欲求に合わせる」
現代社会の特徴である病んだ愛の、「正常な」姿
■神経症的な愛を生む基本的条件
一方あるいは両方が、親の像への執着を捨てきれず、かつて父親あるいは母親に向けていた感情、期待、恐れを、大人になってから、愛する人のうえに転移すること
知的あるいは社会的には年齢相応のレベルに達しているが、情緒の面では二歳か五歳か、あるいは十二歳のまま
比較的軽傷の場合には、葛藤が生じるのは親密な人間関係に限られる
■神経症的な愛
一方あるいは両方が、親廼像への執着を捨てきれず、かつて父親あるいは母親へ向けていた感情、期待、恐れを、大人になってから、愛する人のうえに転移すること
情緒の面では二歳か五歳か、あるいは十二歳のまま
■母親への幼児的執着から抜け出ていない男たち
いまだに子どものような気分でおり、母親の保護、愛情、温もり、気づかい、賞賛を求めている
関係は、いつまでたっても表面的で無責任
彼らの目的は愛されることであって、愛することではない
かなりの虚栄心
誇大妄想
女性が彼らの幻のような期待に沿って生きるのをやめると、葛藤と憤まんが頭をもたげる
■父親に執着している場合
彼の人生は、父親の賞賛を得られるかどうかによって、上がったり下がったりする
彼の人生の目的は父親を喜ばせること
この種の人間は、しばしば社会的に成功をおさめる
彼らは誠実で、信頼でき、何事にも熱心
しかし、女性にたいしては心を開くことがなく、いつまでもよそよそしい
ひそかに女性を軽蔑
■不満を顔にあらわしたりしない両親
互いに愛しあっていないが、抑圧心が強いために、喧嘩したり、不満を顔にあらわしたりしない両親
子どもは自分の殻に閉じこもり、白昼夢にふける
宙ぶらりんの苦しい状態から抜け出すために、無意識のうちに夫を挑発
■偶像崇拝的な愛
自分の能力の生産的な使用に根ざした、しっかりとした自意識をもつにいたらなかった場合、愛する人を偶像化しがち
■センチメンタルな愛
現実の他人にたいする現実の関係において経験されるのではなく、もっぱら空想のなかで経験される
この傾向は、現代人に特徴的な一般的態度と一致
■現代人
現代人は過去か未来に生き、現在を生きていない
センチメンタルに幼年時代や母親を思い出し、あるいは将来の幸福なプランを胸に描いている
抽象化され疎外化された愛の形は、現実の苦しさや孤独感をやわらげる麻薬のはたらきをする
■投射のメカニズム
自分自身の問題を避け、そのかわりに「愛する」人の欠点や弱点に関心を注ぐ
この手の人間は、他人のどんな些細な欠点もめざとく見つけ、他人を非難し、矯正するのに忙しく、自分の欠点には気づかずに平然としている
■幻想
愛があれば対立は起きないと信じている
■真の対立
破壊的ではない
そういう対立はかならずや解決し、カタルシスをもたらし、二人はより豊かな知識と能力を得る
■中心における経験
それぞれが自分の存在の中心と中心で意志を通じあうとき、はじめて愛が生まれる
この「中心における経験」のなかにしか、人間の現実はない
そうした経験にもとづく愛は、たえまない挑戦
安らぎの場ではなく、活動であり、成長であり、共同作業
二人がそれぞれの存在の本質において自分自身を経験し、自分自身から逃避するのではなく、自分自身と一体化することによって相手と一体化するということ
■中世の人は
神を真剣に考えていた
■現代では
物質的安楽と、人間市場での成功への努力に捧げられている
■個人主義
無関心と自己中心主義
■現代人
三歳児に近い
助けが必要になれば泣いて父親を呼ぶが、そうでないときは一人で満足して遊んでいる
人間の姿をした神にたいして、子どものようにべったり依存しながら、自分の生活を神の掟に従わせようとしない点で、現代は、中世の宗教的な社会よりも、偶像を崇拝する原始社会に近い
兄弟愛が、非人間的な公平さに取って代わられた
■愛の修練
愛することは、個人的な経験であり、自分で経験する以外にそれを経験する方法はない
■修練を積むためにいくつか必要なこと
□規律
生活全般における規律も含まれる
現代人はひとたび仕事を離れると、ほとんど自制心を持たない
現代人は権威主義と闘ってきたので、ありとあらゆる規律に対して不信の念を抱いている
■忍耐
現代の産業システム全体が、忍耐とは正反対のもの、すなわち速さを求めている
■関心
技術の習得に最大の関心を抱くことも、技術を身につけるための必要条件の一つ
■一人でいられる能力
一人でいられる能力こそ、愛する能力の前提条件
リラックスして椅子に座り、目を閉じ、目の前に白いスクリーンを見るようにし、邪魔してくる映像や想念をすべて追い払って、自然に呼吸する
呼吸について考えるでもなく、むりに呼吸を整えるのでもなく、ただ自然に呼吸をする
そうすることによって呼吸が感じられるようにする
そこからさらに「私」を感じ取れるように努力する
私の力の中止であり、私の世界の創造者である私自身を感じとる
すくなくともこうした練習を毎朝20分ずつ(できればもっと長く)、そして毎晩寝る前に続けるとよい
■集中
何をするにつけても精神を集中させる
そのとき自分がやっていることだけが重要なのであり、それに全身で没頭しなければならない
精神を集中していれば、自分が何をしているかはあまり問題ではない
大事なことも、大事でないことも、あなたの関心を一手に引き受けるために、これまでとはまったくちがって見えてくる
■自分にたいして敏感
自分にたいして敏感にならなければ集中力は身につかない
リラックスしながらも用心おこたりなく、自分が精神を集中している状況
どんな変化が起きてもわかるように心を開いている
人は自分自身にたいして敏感になることができる
疲れを感じたり、気分が滅入ったりしたら、それに屈したり、つい陥りがちな後ろ向きの考えにとらわれてそうした気分を助長したりしないで、何が起きたのだろうと自問する
どうして私は気分が滅入るのだろうか、と。
なんとなくいらいらしたり、腹が立ったり、また白昼夢にふけるとか、その他の逃避的な活動にふけったりしたときも、それに気づいたら、自問する
■重要なのは
変化に気づくこと
手近にある理屈にとびついてそれを安易に合理化しないこと
内なる声に耳を傾けること
■内なる声は
なぜ私たちが不安なのか、憂鬱なのか、いらいらするのか、その理由を、たいていすぐに教えてくれる
■教師の役目
人間としてのあるべき姿を伝えること
■愛を達成するための基本条件
ナルシシズムの克服
■ナルシシズムの反対
客観性
人間や事物をありのままに見て、その客観的なイメージを、自分の欲望と恐怖によってつくりあげたイメージと区別する能力
ナルシシズムによって現実をどの程度歪めているかはさまざま
どういうときに自分が客観的でないかについて敏感でなければならない
■謙虚さ
理性の基盤となる感情面の姿勢
■関わりを持つすべての人に対して
客観性と理性をはたらかせなければならない
■信じることの修練
■理にかなった信念
自分自身の思考や感情の経験に基づいた確信
私たちが確信を抱くときに生まれる確かさと手ごたえのこと
信念は、人格全体に影響をおよぼす性格特徴
理にかなった信念は合理的思考の重要な構成要素
■他人を「信じる」ということは
その人の根本的な態度や確信部分や愛が、信頼に値し、変化しないものだと確信すること
■自分自身を「信じる」
自分のなかに自己がしっかりあるという確信
自分自身を「信じている」者だけが、他人に対して誠実になれる
■愛に関して言えば
自分の愛は信頼に値するものであり、他人のなかに愛を生むことができる、と「信じる」こと
他人の可能性を「信じる」こと
■権力
権力と信念は相容れない
■勇気
信念をもつには勇気がいる
勇気とは、あえて危険をおかす能力であり、苦痛や失望をも受け入れる覚悟
■信念と勇気の修練
日常生活の些細なことから始まる
第一歩は、自分がいつどんなところで信念を失うか、どんなときにずるく立ち回るかを調べ、それをどんな口実によって正当化しているかをくわしく調べること
■愛することを恐れている
人は意識のうえでは愛されないことを恐れているが、ほんとうは、無意識のなかで、愛することを恐れている
愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねること
■能動性
愛の修練にあたって欠かすことのできない姿勢
思考においても感情においても能動的になり、一日じゅう目と耳を駆使すること
内的な怠慢を避けること
人を愛するためには、精神を集中し、意識を覚醒させ、生命力を高めなければならない
そして、そのためには、生活の他の多くの面でも生産的かつ能動的でなければならない
赤の他人を愛することができなければ、身内を愛することはできない
愛の可能性を信じることは、人間の本性そのものへの洞察にもとづいた、理にかなった信念
抜書きまとめは以上です。
なぜ「愛するということ」ワールド・カフェをすることになったのかと
いうところに関しては、以下をご参照ください^^
(参考)5/9(木)19:00~「愛するということ」ワールド・カフェ(大井町)
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/84346/
本日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。