多読書評ブロガーの石井です。
1億円の値がついたフィギアなどのポップアートで有名な村上隆さんというアーティストの書いた芸術論です。
最近芸術家に絡むプロデュース論や教育論などの本を読み漁ってきましたが、本書は白眉です。
書き上げるのには、4年の歳月を必要としたということ。「言葉」で芸術の価値を高めるべきだという哲学の元、同時にその内訳を披露しながら自らのセルフブランディングを高めるという緻密に計算された熱い本です。
芸術というと「独創性」だとか「オリジナリティ」という「つきぬけた」ところに目が行きがちですが、作品の価値を高めていくためのシナリオ作成、チームによる作業など全てが、「買い手」側の心にどう突き刺さるかということをきちんと計算して構成していることが分かります。
チームで価値とシナリオを作っていくプロセスや、ゼロから新しい発想を生みだす際の思考の原点などの舞台裏を赤裸々にかつシンプルに解き明かしてくれています。
■価値・ブランドの源泉は「観念」や「概念」
「芸術作品の価値は言葉で高められるべき」
「現代美術の評価の基準は、概念の創造」
■チームで作品の価値を作る
「画商やアドバイザーや、プレーヤーやオークションハウスや美術館の人に、作家作品の成否を相談し、シナリオを作って作品の価値を高めていくのは当然の手順」
「分業制をとることで、一人ではできないほどの精度でものを作れるようになりました。」
手仕事に追われないから、創造性を発揮することができるようになるといい、これを現代における商品つくりの可能性を高めるやり方の鉄則としています。
■建築家・デザイナーの仕事
創造性の象徴として取り上げられることの多いデザイナーや建築家などの仕事を見ても、実は色々とアイデアを絞ったり、設計の実務をしているのはアシスタントの人たちです。彼らの創造性をどう引き出していくかということの「手助け」したり、「方向性」を提示し、「最終判断」をすることが「主」の仕事です。
■マネジメントに集中した人間が勝つ
村上氏も世界に通用する方法について話す際も、「マネジメントに集中していく人間が勝つ」という、意外と悲しい結論になると評しています。
■文脈を創り上げる
歴史と紐付けて作品を語る(=シナリオを組み立てる)ことの重要性を再三指摘してます。
「世界で唯一の自分を発見し、その確信を歴史と相対化させつつ、発表すること」
これが世界共通のルールだと述べられています。
芸術の表現をしようとするときには、製作の背景や動機や設定が緻密に必要になるとのことです。
■唯一の自分を発見する方法
この唯一の自分を発見していく作業というのはどうすれば良いのでしょうか。
「自分の惹かれているものを紐解いていくこと」
・好きな作品の歴史を研究していくこと。
好きな歴史自体を深堀りしていくことも薦められています。
■ゼロからものを考えるとき
ゼロから新しいことを発想していくときの要点として、
「最近どういう楽しいことがあったか?」
「最近どういう悲しいことがあったか?」
とあります。全てはその人自身の感情から生まれてくるものなのだということでしょうか。
最近ストーリーテリングの研究をしたり、「人が変わる瞬間」等のワールドカフェを通じて、「全ての源泉は自分の中にあり、どれだけ自分を掘り下げて理解できているかどうかが、その人の成長」だと感じています。
【多読書評ブロガー超いちおし本】
1作品1億円の値がついたフィギアなどのポップアートで有名な村上隆さんですが、とにかく分かりやすい物言いで「人の心を動かす」作品の作り方について非常に丁寧に書かれている本です。
ブランディングやストーリーテリングに興味分野が在る方は必読です。
幻冬舎
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考えさせられる本
残念な芸術論
本の内容とは関係なく
もう一歩踏み出す勇気をくれた一冊
アマゾンレビューを見ると賛否両論ですが、これも彼が目指すところの話題となる、物議をかもすことだということを目指しているとすれば意図して行っているとも思えてしまいます。
【編集後記】
最近長男(2歳)のさっくんは、大好きな桃を食べると最後に必ず、「ママの分、パパの分、ももちゃんの分」と最後に三切れ家族の為に残してくれます。