学生時代に歯が立たなかった「日本の思想」(丸山真男著)を、昨年40数年ぶりに何とか読破した。読破したと言っても、書いてあることが何となくわかった、というだけである。それにしても難解極まる本だった。
今は、経済学部に進学するのに文系と理系の両方から学生を募集する大学が多くなった。東大、京大、阪大、一橋大、東北大、九大、神戸大など一流大学が多い。
我々の時代、経済学部は文系からの募集だけだった。但し、経済学部はその必要性から教養部で数学を原則必須としていた。原則というのは「履修した方が望ましい」程度の意味である。その当時の数学のテキストが以下の二冊である。
①「位相解析入門」(入江昭二著・岩波書店)
②「経済のための線形数学」(二階堂副包著・培風館)
数学の最初の授業に出てみた。教官は理学部出身の助教授。内容は高校数学から全くかけ離れたものだった。最初から「なんじゃこりゃ~」ということになった。
数学が得意のつもりでいた自分のプライドはひどく傷ついたが、周りにもそんな学生が多かったと思われる。結局、自然科学うちの一科目は数学ではなく別の科目で単位を取得した。
特に「位相解析入門」については、今読んでみたところでちんぷんかんぷんだろう。
以下は、そんな「歯が立たない本」に関する東大の英作文の問題である。著者の吉田洋一氏(1898‐1989)は、数学者・随筆家らしい。
(問題)
次の日本文の下線部を英語に訳せ。
本がわかりにくいとき、それが本のせいではなく、読者の方が未熟であるためのことがないではない。こういう場合には、読者自身の成長する日を待つよりほかに手がないであろう。同じ本を年月を経てから読み通してみると、よくわかって面白かったという経験をもつ人は少なくないと思われる。
*吉田洋一「気儘な読書法」
(東京大学・1990年)
(拙・和文英訳)
When a book is difficult to understand, it's not because the book is too difficult, but because the reader isn’t mature enough to understand it. In such a case, there will be no choice but to wait for the day when the reader himself will grow mature. It seems that not a few people have had the experience of finding a difficult book well understood and interesting, when reading it again after many years.