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(以前の記事から転載・写真と本文とは関係ありません)

 

昨日の朝、近鉄奈良線東花園駅で、こんなことがありました。

 

電車遅延で乗客対応中の車掌が駅から飛び降り 近鉄・東花園 別の駅の人身事故影響で

 

21日午前11時ごろ、大阪府東大阪市吉田の近鉄奈良線東花園駅で、別の駅で起きた人身事故による列車遅延について乗客に対応していた男性車掌(26)が突然、制帽と制服の上着を脱ぎ捨ててホームから線路に侵入、高架になっている同駅から約5メートル下の地面に飛び降りた(後略)

 

産経ニュースWestより)

 

詳細は上記リンク先をクリックしてご覧いただきたいのですが、この車掌さん、列車の遅延を乗客に問い詰められ、パニック状態になってしまい、このような行動に及んでしまったようです。

人身事故など外的要因によって列車のダイヤが乱れることは、どの路線にもままあることですが、最近では遅れや運転中止について「どうしてくれるんだ!」「責任者を出せ!」など、理不尽にも駅職員に詰め寄る乗客が後を絶たず、そのことも大きな問題になっています。まして最近は、自らの顧客・乗客という立場を笠に着て、相手に対し理不尽かつ過大な要求をする「クレーマー」も増加の一途を辿っており、このようなクレーマー対策には、昨今どこのサービス業でも頭を痛めていると聞きます。

 

そもそも人身事故とか天候不順とかで列車が遅延したとしても、その責任って鉄道事業者にあるんでしょうか?

以前に保線用車両が脱線事故を起こしたため、東京メトロ東西線が運転不能になった例がありますが、あのように鉄道事業者側に過失があり、その結果として列車のダイヤ乱れとか運転不能の事態が出来したとしたら、そりゃ鉄道事業者は責められるべきでしょうし、お詫びして当然でしょう。

しかし、そうではない外的要因に基づくダイヤ乱れや運転不能は、鉄道事業者も乗客同様、被害者としての立場にあるはずです。それを忘れ、「俺たちは客だ!」とばかりに理不尽な要求をするクレーマー(最近ではさらに凶暴化して『モンスタークレーマー』と言うそうですが)は、一体何様なんでしょうか? どこかの記者みたいに「人が死んでんねんで!」などと大上段に構えるつもりは全くありませんが、なぜそこまで居丈高になれるのか、管理人には全く分かりません。

この車掌さんも、ネット情報によると、そのような理不尽なクレーマーに取り囲まれ、吊るし上げられていたという情報もあります。さらに未確認情報ですが小突き回されていたという情報もありますから、もしそれが事実であれば、威力業務妨害と暴行傷害で、クレーマーの方が犯罪者になるのではないでしょうか?

 

上記ニュースの続報として、こんな情報もあります。

 

駅から7・5メートル飛び降りの車掌 遅延対応中に激高か 制帽と制服を脱ぎ 近鉄・東花園

(同じ産経ニュースWestより)

 

だとしたら、会社も「駅係員が鉄道事業者として不適切な行動を引き起こしたことは誠に遺憾。心よりおわびする」(上記ニュースを受けての近鉄のコメント)などと言うのではなく(あるいは対外的にはこう言わざるを得ないのかもしれませんが)、それなら警察に被害届を出すべきですし、当該職員の心のケアにも万全を期すべきです。

もし近鉄が、この職員を処分するだけで済ませてしまい(勿論対外的なけじめとしての処分は必要だからそれは当然として)、事後の手当てを何もしないままであれば、現場社員は「いざとなったら会社は俺たちを守ってくれないんだ」と絶望してしまいます。その結果、現場に「事勿れ主義」が蔓延し、いくら安全対策を会社が策定しても、現場社員が守らなくなってしまうのではないでしょうか。つまり、現場のモラール(士気、やる気)の低下です。これだけは運輸業として絶対に避けなければならないはずです(こちらもご参照ください)。


「お客様は神様です」はかつての大物歌手の名言ですが、最近ではこの言葉を履き違え、自分たちに都合のいいように解釈して憚らない、身勝手な手合いが増えてしまいました。
このような身勝手な手合いがなぜ増えたかについては、現行憲法が過度に「個人の自由と尊重」を謳っていて、教育もそれに従ったものになっているからではないかと管理人は思っていますが、勿論他の要因もあるのでしょう。ちなみに、件の名言を吐いた大物歌手は既に物故されていますが、ご本人は存命中ずっと、その言葉を吐いたことを後悔し続けていたそうです。

 

昔「王様のレストラン」というドラマに、こんなシーンがありました。

スタッフに怒鳴り散らし、そのスタッフをお前呼ばわりしたクレ一ム客に対し、「私どもは貴方にお前呼ばわりされる覚えはありません。私どもは貴方の家来ではありません。どうぞお引き取りください」と、冷静かつ毅然とそのクレーム客を追い出す。「客だから何をやっても許されるわけではない」ということです。似たような場面は、石ノ森章太郎の漫画「HOTEL」にもあったように思います。

以下は管理人の考えですが、本来サービスを提供する側も「客を選ぶ自由」があるはずなのです。だから、そもそもの問題として「客だから何をやっても許される」は成り立ち得ない。ところが鉄道事業者の場合は、公共性の高さからそのような自由が事実上認められていません。しかし、だからといって「客だから何をやっても許される」わけではない以上、「このラインを超えたら客ではない」というラインを示し、そのラインを踏み越えたクレーマーに対しては、毅然たる対応をすべきだと思います。

 

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追記

以前、スカイマークは「過度のクレームには対応しません」みたいなことを公言して、メディアに袋叩きにされていたことがありますが、あのスカイマークの対応は、今思うと正しかったのですね。

何でメディアが袋叩きにしたんだろ。大体見当はつくけど。