今回は、野田線用の新車として今年から投入された、60000系を取り上げます。

野田線は、もともとの東武鉄道の路線とは出自が異なり、総武鉄道という別の路線でした。それが東武に合併されて野田線となるのですが、当初は旧総武鉄道からの引き継ぎ車両、その後は32系・54系といった旧型車、車体更新車の3000系列や5000系列が活躍してきました。
カルダン駆動の所謂「高性能車」は、昭和50年代の一時期に8000系が配属されたことがあったのみで、同系の本格的な配属は平成元(1989)年までずれ込みました。その後、平成4(1992)年には3000系列が撤退しましたが、高性能化、つまり吊り掛け車の全面撤退は、実に平成16(2004)年でした。これは大手私鉄の特殊路線を除く鉄道路線の中でも遅い部類に入ります。
平成16年以降、野田線の列車は全て8000系で運転され、野田線は同系の「楽園」とも評されてきましたが、同系も当時でも製造初年から40年以上を経過していて、流石に老朽化が無視できなくなってきました。
そこで、東武は野田線の変電所を改修して回生ブレーキに対応、今年に入って10030・10050系の転属車を受け入れ、平成16年から9年間続いた、オール8000系の体制が崩れました。このことでも十分な驚きでしたが、昨年末、野田線用の新車が入る!というニュースを聞いたときは、管理人は失礼ながら、我が耳を疑ってしまいました。

この車両、60000系は、野田線が東武になってから初めて、同線に直に投入された車両です。以前、東急池上線に1000系が直に新造投入された際、前身の池上電気鉄道以来実に63年ぶりの新車投入だと沸き立ったのですが、こちらは前身の総武鉄道時代から70年ぶりともいわれる新車投入でした。東急池上線も出自は東急の他の路線と異なりますから、同じように出自の異なる野田線が、車両の面で他路線の後塵を拝するのは、仕方のないことだったのでしょうか。
60000系は平成24(2012)年度(実際の入線は今年に入ってからでしたが)に2編成が導入され、今年度は6編成が導入予定となっています。その後も順次追加投入され、8000系を置き換えるとのことです。

60000系は50000系列と同じ、「日立A-Train」といわれる日立製作所の規格に基づいて製造された車両で、メカニックは共通ですが、内外装のデザインは全く異なっています。前面は大胆にブラックアウトさせ、助士席側に非常用貫通扉を設け、さらに側面には50000系列のオレンジではなく、野田線オリジナルのブルーとライトグリーンのカラーリングを施し、50000系列とは全く異なった印象を見た者に与えます。現在、東武ではスカイツリー建設を機にCI(コーポレート・アイデンティティ)を導入していますが、そのイメージカラーがブルー。60000系は、そのブルーをまとって登場したわけです。
ブルーとライトグリーンは、10030系でも帯に巻いていますが、10030系は60000系よりもブルーが淡く、60000系よりも某大手コンビニエンスストアの看板の色調にそっくりなためか、野田線の10030系は「ファミマ電車」と言われています。ただ、60000系をファミマ電車と呼ぶ人はあまりいないような気がしますが、これは60000系のブルーが濃いため、コンビニの看板の青よりも濃いからだと思います。
60000系の内装で特徴的で、0000系列と全く異なるのは、車内照明にLEDを本格採用したことです。LEDは照明として使用すると蛍光灯よりも大幅に消費電力が抑制できることから、近年ではメトロ1000系など鉄道車両での採用例も増えていますが、60000系もその例に倣ったわけです。
ただ、60000系の照明、どういうわけかピンクがかった色になっていて、夜間などは車内がピンク色に見えることもありました。管理人は、他の鉄道系ブログで60000系の夜間運用時の写真を見たことがありますが、やはり車内はピンクがかった色に見えました。あの色、見る限りは繁華街のいかがわしい店を想像させるのですが、当然というべきか、利用者の評判は「キモい」とか「怖い」といった最悪なものでした。現在は、投入済みの2編成とも、照明が取り替えられ、ピンク色の光は放たなくなっています。

その他では、東武の車両では初めて無線LANを搭載したのが目を引きます。これは、スマートホンやタブレットなどの通信機器を利用する乗客が多いため、それに応えるためのものでしょう。あとは定番となった車内案内表示はLCDディスプレイ方式となっており、沢山の情報量を瞬時に表示させることができるようになっています。

60000系が導入された経緯について、野田線での乗客増、8000系の老朽化などが指摘されていますが、それらの指摘はいずれも正しいのだろうと思います。ただ、これは60000系を取り上げた鉄道趣味誌に指摘があったのですが、沿線住民が自家用車やバイク(所謂原チャリ)などに流れる可能性があり、それを引き留め、路線の魅力を高めるために新車の投入が必要だったということです。確かに野田線は、東上線に次ぐ東武のドル箱路線ということですが、これまでは他路線の「お古」を運用してきましたから、少ない設備投資で大きな売上を上げている部門ということがいえました。しかし8000系の老朽化や、自家用車などの対応、そして何より少子高齢化や人口の都心回帰傾向に伴う沿線人口の減少をも見据えた場合、やはり新車の投入がベスト、という経営判断に達したのでしょう。
60000系は、今年開催された南栗橋車両管理所の公開イベント「東武ファンフェスタ2013」において、愛好家を対象とした特別団体列車に充当され、かつ撮影会場では100系や200系といった特急車両と並びました。このような取り扱いは、まさに看板車両のそれ。ということは、60000系にかける東武の期待は、それだけ大きいものがあるのでしょう。

現在、野田線は60000系の追加投入と10000系列の転入などにより、8000系を順次置き換える途上です。どこまで増えるのかは分かりませんが、沿線利用者に愛される車両になって欲しいものです…って管理人自身はこの車両に乗ったことはなく、見たのも先日のファンフェスタが初めてですから、偉そうなことは言えませんが(滝汗)。

これで東武の現有通勤車を全部見てまいりました。
次回はいよいよ最終回ですが、最終回では東武の通勤車は今後どうなるのか、管理人なりの「未来予想図」を描いて見たいと思います。

-その18(№2643.)に続く-